Appleは3月12日、「Mac Studio」の新モデルを発売しました。搭載されるSoC(システム・オン・チップ)として、「M4 Max」や「M3 Ultra」が選べ、価格は32万8800円から。堅実なアップデートを遂げつつも、SoCのナンバリングがズレていたり、ユーザー視点でパッとわかりづらい部分も多々あります。そのあたりを、改めて概要を整理していきます。
■そもそも「Mac Studio」とは
そもそも「Mac Studio」は2022年に追加された、Macのラインアップのなかでは比較的新しいシリーズです。デスクトップ型のMacシリーズにおいて、最上位の「Mac Pro」と、廉価モデルの「Mac mini」の中間に位置付けられるモデルでした。
▲「Mac Studio」
これまでの変遷を振り返ると、第1世代の2022年発売モデルはSoCに「M1 Max」または「M1 Ultra」を搭載しており、続く第2世代の2023年発売モデルでは「M2 Max」または「M2 Ultra」を搭載していました。
そして今回、2025年発売の第3世代モデルでは「M4 Max」または「M3 Ultra」が選べます(なお、Appleは世代の表現を使っていませんが、本稿ではわかりやすさを優先して、世代として併記しています)。
第1世代のMac Studio(2022年発売)
→「M1 Max」または「M1 Ultra」
第2世代のMac Studio(2023年発売)
→「M2 Max」または「M2 Ultra」
第3世代のMac Studio(2025年発売)
→「M4 Max」または「M3 Ultra」
要するに、Ultraを搭載する上位構成では、SoCのナンバリングがM1→M2→M3と順当に進んできたのに対して、今回のMac Studioでは、Maxを搭載する下位構成だと「M3 Max」をすっ飛ばして「M4 Max」が採用されています。その理由は、設計・製造の都合の話へと繋がっていくと思われます。
現行のMac Proが「M2 Ultra」を搭載していることを考えると、実はすでにMac Studioの上位構成がそれを追い抜いていることもわかります。
■チップセットのトランジスタ数で俯瞰してみる
ここで気になるのが、「ユーザー視点だと、今回の上位・下位をどう捉えておけば良いのか」ということ。例えば、シンプルに各SoCが内蔵するトランジスタ数をチェックしてみると…
「M1 Max」=570億個
「M1 Ultra」=1140億個(M1 Maxの2倍)
「M2 Max」=670億個
「M2 Ultra」=1340億個(M2 Maxの2倍)
「M3 Max」=920億個
「M3 Ultra」=1840億個(M3 Maxの2倍)
「M4 Max」=未公表
「そこで未公表なのかいっ!」とM4 Maxにツッコミを入れたくなります。
そもそも「Ultra」シリーズは、同じナンバリングのMaxのチップを「Ultra Fusion」と呼ばれる高密度インターコネクトで2つ繋げた構造をしていますので、トランジスタの数が2倍になるのは当然。そのうえで、知りたいのは「M4 Max」と「M3 Ultra」にどのくらいの差があるか、ということなのです。
▲こちらは「M1」チップ時代のラインナップが図示された画像。「M1 Max」が2枚繋がったのが「M1 Ultra」だ。ゆえに、MAX→Ultraでトランジスタ数の差はシンプルに約2倍になっていた
▲今回の「Mac Studio」は、下位構成が「M4 MAX」、上位構成が「M3 Ultra」を搭載する。ナンバリングがズレているゆえに、その差は従来よりもいっそう想像しづらい
少々悔しいので、ベースモデルからMaxモデルへの倍率を調べてみると
・M1=160億個 → 約3.56倍 → M1 Max=570億個
・M2=200億個 → 約3.35倍 → M2 Max=670億個
・M3=250億個 → 約3.68倍 → M3 Max=920億個
となっています。
幸いなことに「M4」のトランジスタ数は280億個とわかっています。そこで上記の傾向を踏まえてベースモデルの約3.35〜3.68倍の範囲に収まると仮定するならば、「M4 Max」のトランジスタ数の規模は938億〜1030個程度になってくるはず(もちろん、この通りに数を伸ばしていないがゆえに、公開されていない可能性もありますが…)。
もし、このように好意的な視点で、M4 Maxが規模を拡大したという前提に立つと、トランジスタ数で比較するとSoCの規模は、以下のように見えてきます。
・第1世代のMac Studio(2022年発売):「M1 Max」=570億個、「M1 Ultra」=1140億個(M1 Maxの2倍)
・第2世代のMac Studio(2023年発売):「M2 Max」=670億個、「M2 Ultra」=1340億個(M2 Maxの2倍)
・第3世代のMac Studio(2025年発売):「M4 Max」=1000億個前後?、「M3 Ultra」=1840億個(M4 Maxの1.84倍くらい?)
つまり、好意的に推定したM4 Maxと、M3 Ultraのトランジスタ数の差も、2倍までは届かずも、1.8倍程度はあることになります。もちろん、トランジスタ数だけで性能を比較してしまうことは乱暴すぎますが、ざっくりと規模感を可視化してみることで、「ナンバリングが古いM3世代だけど、Ultraの方が上位モデル」という事実を理性的にも受け入れやすくなるはずです。
■その他の機能・仕様についてチェック
最後に、前世代からの仕様の変更点をチェックしておきます。
具体的には、
(1)CPUやGPUの最大コア数が増えた
(2)メモリやストレージが増えた
(3)メディアエンジンが新たに「AV1デコード」にサポート
(4)「Thuderbolt 5」をサポート
このあたりを押さえておくとよいでしょう。
【第2世代のMac Studio】 → 【第3世代のMac Studio】
・CPUコア数: 最大24コア → 最大32コア
・GPUコア数: 最大76コア → 最大80コア
・メモリ: 最大192GB → 最大512GB
・メモリ帯域幅: 800GB/s → 819GB/s
・ストレージ: 最大8TB → 最大16TB
・Thunderboltの世代: 4 → 5
▲なお、Thunderboltの搭載ポート数が、下位構成(4つ)と上位構成(6つ)で異なるのは従来通りだ
その他の詳細については、ぜひ製品サイト等でチェックしてみてください。
* * *
最後に、Mac Studioの価格は最小構成で32万8800円から。下位構成のM4 Max搭載モデルは、想定用途として画像編集や動画編集、プログラミング、楽曲制作、AI処理などが考えられ、仕事でクリエイティブな作業を想定する方なら、ちょっと背伸びすれば届く範囲かなといった印象です。
▲Mac Studioの購入を検討するようなユーザー層のITリテラシーならば、きっと本稿の内容くらいにざっと目を通しておけば、あとは細かい仕様や特徴の差を自力でリサーチしつつ、検討できることだろう
一方、上位構成のM3 Ultra搭載モデルは66万8800円から。言わずもがなプロフェッショナルでないと手は出しづらいですね。想定用途としては、プレスリリースにも大規模言語モデルを駆使する操作や、3Dのレンダリング、DNAの配列を読み取るシーケンサー、高解像度の動画編集などが列挙されています。ビジネスや研究で必要に迫られて検討するような機材と思っておけばいいでしょう。
<文/井上 晃>
井上 晃|スマートフォンやタブレットを軸に、最新ガジェットやITサービスについて取材。Webメディアや雑誌に、速報、レビュー、コラムなどを寄稿する。X
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- Original:https://www.goodspress.jp/news/665054/
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