【趣味カメラの世界 #33】
ここ数年、カメラの主流といえばやはりミラーレス。中でもフルサイズモデルは、画質と性能のバランスに優れ、本格的に写真に取り組みたい人からプロまで幅広く支持されています。
その中でも王道機のひとつとして人気を集めてきたのが、Canon(キヤノン)の「EOS R6」シリーズ。今回は、その最新モデルとなる「EOS R6 Mark III」(42万9000円)を、フォトグラファーの田中さんに試してもらいました。
監修・執筆:田中利幸(たなかとしゆき)|ファッション誌などでブツ撮りやポートレートを中心に活動するフォトグラファー。カメラ・ガジェット好きで自身で運営するブログ「Tanaka Blog」において、カメラやガジェットに関するちょっとマニアックなことを書いている。
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前モデルの「EOS R6 Mark II」は、登場した当初から完成度の高いカメラでした。AF性能や操作性はもちろん、データサイズもちょうどよく、撮影後の扱いやすさも含めてバランスがいい。実際に使っている人の多くが、「これで十分」と感じていたのではないでしょうか。
私はEOS R6 Mark IIを長く使ってきましたが、日常の撮影から仕事まで、特に困ることもなく、非常に頼りになるカメラという印象でした。
そんなカメラの後継機と聞くと、「いったいどこを進化させるんだろう?」と思う人も多いはず。「EOS R6 Mark III」も、スペック表だけを見ると一見わかりにくい進化に見えるかもしれません。
ただ、実際に触ってみると印象は少し変わります。派手な変化こそないものの、撮影していると「あ、ここがよくなっている」と感じるポイントが確かにあります。本機は、ベーシック機としての完成度をもう一段整えてきたような一台だと感じました。
■分かりやすい進化点。“3250万画素”という「ちょうどいい高画素化」
本機でまず注目したいのが、有効画素数の増加です。前モデルの約2420万画素でも実用上は十分と感じていましたが、本機では約3250万画素へとステップアップ。この“ほどよい高画素化”は、想像以上に効いています。
▲ Canon EOS R6 Mark III+RF45mm F1.2 STM、シャッタースピード1/800秒、F4、ISO100
まず感じたのは、細かい部分の解像感がしっかり上がっていること。ディテールまできちんと写るので、画にリアリティが出て、空気感のようなものもより感じやすくなりました。
それから、トリミング耐性が上がったのも地味にありがたいポイントです。被写体との距離を詰めきれなかったときや、あとから構図を少し調整したいときでも余裕がある。撮影の自由度は確実に広がっていると思います。
もうひとつ良いと感じたのが、「R5シリーズ」との相性です。私は「R5」のサブとして「EOS R6 Mark II」を使っていましたが、やはり画素数の違いは少し気になる場面もありました。今回3250万画素になったことで解像感の差がかなり小さくなり、複数ボディで使うときの違和感も減っています。
高画素機ほどデータは重くないけど、解像感にはしっかり余裕がある。3250万画素というバランスは、まさに“万能機”として使うにはちょうど良いラインだと思いました。
■AF性能は“速さ”より“安定感”が進化した
AF(オートフォーカス)性能も、体感として確実に進化しているポイントのひとつです。数値上のスペック以上に、「外さない」「迷わない」という安心感が増した印象でした。
▲ Canon EOS R6 Mark III+RF45mm F1.2 STM、シャッタースピード1/800秒、F1.6、ISO160
「サーボAF」では、被写体が後ろを向いた状態でもしっかり人物を認識し、そのまま追従を続けてくれます。さらに、被写体にくるくると回ってもらっても、AFはしっかりモデルを追い続けてくれました。
白い背景に白い服という、AFが迷いそうなシーンでも大外しはほとんどなし。多少ピントが甘いカットはあるものの、撮影後に見返してガッカリするような写真はかなり減っています。
前モデルの時点でもAFに大きな不満はありませんでしたが、「EOS R6 Mark III」はより安定感が増した印象です。
結果として、撮影中にピント合わせを意識する場面が減り、被写体や構図に集中できる時間が増えます。こうした変化は派手ではありませんが、撮影体験をしっかり底上げしてくれる進化だと感じました。
■さらに磨きがかかった操作性とカスタマイズ性
操作系に関しても、R6シリーズの美点がしっかりと継承されています。

ボタンカスタマイズの自由度は相変わらず高く、自分の撮影スタイルに合わせて細かく設定できます。本機種では、個人的にあまり使う機会がなく、持て余し気味だった「RATEボタン」にも機能を割り当てられるようになり、操作の幅がさらに広がりました。

前モデルの時点でも操作系はかなり完成度が高いと感じていましたが、本機では動画撮影ボタンが大型化されるなど、細かな使い勝手がさらによくなっています。
グリップのほどよい深さや、シャッターボタンの角度も絶妙で、撮影していて違和感が少ない。手に取ってすぐ馴染む感覚は、やはりキヤノン機らしいところだと思います。
■インターフェイスの進化に見るプロユース志向
インターフェイス周りにも、いくつか進化を感じる部分がありました。

まずHDMI端子はType-Aに変更されています。外部モニターなどと接続する場合、やはりこのサイズの方が安心感がありますね。動画撮影は今回のレビューでは試していませんが、仕様を見る限り、動画性能もかなり力を入れている印象を受けました。

メモリーカードスロットは、CFexpressとSDのデュアル構成になっています。高速なCFexpressカードが使えることで、連写時の書き込みが詰まりにくくなるのはありがたいところです。
ただ、バックアップ目的で同時記録する場合は、カードの速度差が影響する場面もありそうです。さらにCFexpressとSDの両方を用意する必要があるので、コスト面が気になる人もいるかもしれません。このあたりは、使い方によって評価が分かれる部分だと思います。
■「EOS R6 Mark III」と好相性。「RF24-105mm F4」はセットで使いたい

キットレンズとして本機とセットで販売されている「RF24-105mm F4 L IS USM」(18万4800円)。キヤノンの高級レンズにあたるLレンズの中では、比較的手に取りやすい価格帯の1本です。
EFマウント時代から続く定番ズームのRFマウントで、便利な標準ズームとして知られているレンズ。私もEFマウントを使っていましたが、正直なところ描写面では「便利なだけ」という印象もありました。
ただRFマウントになって、その印象は良い意味で変わっています。開放からしっかり写る、頼れるズームレンズという感触です。
▲ Canon EOS R6 Mark III+RF24-105mm F4 L IS USM:105mm、シャッタースピード1/3200秒、F5.6、ISO250
▲Canon EOS R6 Mark III+RF24-105mm F4 L IS USM:24mm、シャッタースピード1/3200秒、F4、ISO100
焦点距離のどのポジションでも、開放から十分にシャープな描写。広角端の24mmでも周辺まで画質が安定していて、かなり幅広い撮影に対応できる万能ズームという印象です。Lレンズらしい抜けの良いキリッとした描写は、撮っていて気持ちがいいですね。
▲ Canon EOS R6 Mark III+RF24-105mm F4 L IS USM:105mm、シャッタースピード1/250秒、F4、ISO3200
最短撮影距離は45cmと特別短いわけではありませんが、105mmまで使えるので被写体にはしっかり寄れます。開放F4でも、距離を詰めれば一眼らしい大きなボケが得られるのもこのレンズの魅力です。
▲ Canon EOS R6 Mark III+RF24-105mm F4 L IS USM:105mm、シャッタースピード1/2000秒、F4.5、ISO160
▲ Canon EOS R6 Mark III+RF24-105mm F4 L IS USM:76mm、シャッタースピード1/3200秒、F5.6、ISO2000
散歩スナップでは、こうしたズームの便利さをあらためて感じました。歩いて近づけない場所をズームで引き寄せられるのはもちろん、24mmから105mmまでの画角をレンズ交換なしで瞬時に選べるのはやはり大きな強み。
ズームを単に「便利なレンズ」として使うだけでなく、焦点距離による描写の違いを意識して使っていくと、撮影の楽しさもグッと広がるでしょう。
■正統進化を重ねた、信頼できる“万能機”

改めて「EOS R6 Mark III」を総合的に見ると、キヤノンのフルサイズ機のラインナップの中では、メイン機としてはもちろん、「R5」のような高画素機のサブとしても扱いやすいポジションのカメラだと感じました。
価格は上がったものの、昨今の状況を考えると実売40万円を切る価格は十分現実的。どのような被写体にも対応できる万能なフルサイズ機として見れば、納得感のある価格帯だと思います。
派手さはありませんが、撮影者を裏切らない信頼感がある一台。「EOS R6 Mark III」は、まさに“進化したベーシック”と呼べるカメラではないでしょうか。
>> 趣味カメラの世界
<取材・文・写真/田中利幸 モデル/えま>
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