カーボンが導く強さのネクストステージ【G-SHOCKの最新到達点】

【特集】G-SHOCKの最新到達点

樹脂、メタルに続く第3の素材、カーボン。従来も部分的に用いていたが、2019年春からはその特性をフル活用したモデルが続々と登場している。多彩なメリットを持つこの素材が、G-SHOCKを新たなステージへと導く。

■2種類のカーボンG-SHOCK

<1>カーボンベゼル採用モデル

▼カーボン積層ベゼルで実現した洗練のタフネス

カシオ
「G-SHOCK MTG-B1000XBD-1AJF」(14万8500円)

カーボン積層ベゼルとメタルケースを組み合わせて、衝撃力、遠心重力、振動に耐えうるタフネス構造と、軽さ、機能美あふれるデザインを実現。スマホ連携や世界6局の電波受信、ソーラー充電など機能面も充実。ケースサイズW51.7×H55.8mm、20気圧防水。

▲リューズガード部分には落下時の衝撃を吸収する樹脂素材を使用。パーツによって素材を使い分けている

▲G-SHOCKのロゴをあえて黒で塗装することで、カーボンの折り目模様が目立つようにしている

●素材の持ち味を活かした強く美しい外観

▲カーボンシートとグラスファイバーシートを積み重ね、プレス成型と切削加工を施したベゼルは、側面の積層模様が特徴。素材の特性を新感覚のデザインとして巧みに落とし込んだ

▲インダイヤルやワッシャーなどには、メタリックレッドの蒸着処理を施し、艶やかさをプラス。ブランドカラーをアクセントとして取り入れて、洗練された雰囲気に仕上げている

▲バンドやメタルケースには耐食性や耐摩耗性を高めるイオンプレーティング処理が施されている。重厚感と精悍なイメージが高まり、最上位モデルにふさわしい風格が漂う

<Other Choice>

▼クールな雰囲気を纏うブルータイプ

カシオ
「G-SHOCK MTG-B1000XB-1A」(13万2000円)

「MTG-B1000XBD-1AJF」と同様のケースに、ソフトウレタンバンドを組み合わせたブルーカラーモデル。ケース側面には黒と白の積層面が浮かび上がる。ケースサイズH55.8×W51.7mm、20気圧防水。

 

<2>カーボンモノコックケース採用モデル

▼カーボンならではの新耐衝撃構造で軽さと強さを両立

カシオ
「G-SHOCK GST-B200X-1A2JF」(9万1300円)

カーボンコアガード構造を採用し、耐衝撃性能を確保しながら、83gという小型軽量設計を実現。Bluetoothによるスマホ連携やソーラー充電など機能性も優れ、実用性の高い時計に仕上がっている。ケースサイズW49.4×H53.3mm、20気圧防水。

▲反転液晶によるデジタル表示を搭載。カレンダーやワールドタイムなど、多彩な機能に使い分けられる

▲装着性に優れた肉厚のウレタンバンドを採用。表面の格子状パターンで、ベゼルとの一体感を高めている

●カーボンケースで多機能モジュールをガード

▲カーボンモノコックケースは、カーボンファイバー強化樹脂製のケースで内部のモジュールを保護。ケースと裏蓋の継ぎ目がない一体構造で、強度と機密性を確保している

▲ベゼルは、複数のカーボンシートを積層して切削形成したもの。カーボン特有の織り目模様がくっきりと浮かび上がり、強さと美しさを兼ね備えたデザインに仕上げている

 

<Other Choice>

▼ゴールドで華やかさをプラス

カシオ
「G-SHOCK GST-B200X-1A9JF」(9万1300円)

「GST-B1000XBD-1AJF」と同様の機能を備えたケースを、リューズや針などにゴールドカラーを配して華やかな印象にまとめた。ケースサイズW49.4×H53.3mm、20気圧防水。

▼独特な高級感が漂うメタルベゼル

カシオ
「G-SHOCK GST-B200G-2AJF」(5万6100円)

メタルベゼルを採用し、インデックスなどにローズゴールドをアクセントカラーとして配して高級感をプラス。スマホリンク機能を搭載。ケースサイズW49.2×H53.3mm、20気圧防水。

■第3の素材・カーボンの登場

G-SHOCKの初代モデル「DW-5000C」は、ウレタン樹脂を使い、モジュールをケース内で浮かせる中空構造を採用。その圧倒的な耐衝撃構造で世界を驚かせた。1996年にはフルメタルケースで耐衝撃構造を実現した「MR-G」が登場。そして2019年、第3の素材カーボンを用いた新たな耐衝撃構造が誕生した。

裏蓋一体型のカーボンモノコックケースを採用する “カーボンコアガード構造”は、素材の特性を最大限に生かして、シリーズ最高レベルの構造強化と軽量化を両立。ファーストモデル「GWR-B1000」は、タフな航空ミッションに耐えうるパイロットウオッチであり、その理想に叶う完成度をこの新構造で実現した。

この高性能モデルを皮切りに、春以降、続々とカーボン採用モデルが登場。さらに昨秋にお目見えしたのが、カーボン積層ベゼルで軽量化と上質な外観を両立した「MTG-B1000XBD」だ。

カーボンシートとグラスファイバーシートによる積層模様が側面に浮かび上がるデザインは、斬新でありながら洗練された印象も与える。機能やデザイン面でもハイエンドに位置するMT-Gシリーズにふさわしい、新たな機能美を理想の素材カーボンを用いることで手に入れたのだ。

▼理想のタフネスを実現するカーボンの特性

●「硬さ」比弾性率が鉄の7倍
●「強さ」引張強度が鉄の10倍
●「軽さ」比重が鉄の1/4
●「熱変化に強い」急激な温度変化に対応
●「時間に強い」経年変化に耐える
●「変形に強い」寸法安定性が高い

■素材の革新で“36年目からの第一歩”を踏み出す

熱心なG-SHOCKファンであれば、2019年春モデルの登場前にもカーボンを部分的に採用したモデルがあったことを覚えているだろう。しかし、明確に “第3の素材” と謳ったのは、2019年4月に登場したカーボンコアガード構造採用の「GWR-B1000」シリーズから。そして、その後ラインナップを一気に拡大させた背景には「技術面での成熟がある」と、開発に携わったチーフエンジニアの牛山さんは経緯を説明する。

「G-SHOCKの特長である耐衝撃性能と防水性能を高めていく上で、カーボンが非常に有効な素材であることは以前から認識していました。これまで樹脂とメタルがケースの基本素材でしたが、軽さと強さという両者のいいとこ取りをしたのが、カーボンだと言えます」

▲カシオ計算機 羽村技術センター 開発本部 時計企画統括商品企画部 第一企画室チーフエンジニア牛山和人さん

タフネスウォッチにとって理想的な素材であることがわかった上で、加工技術を検討。ケースや耐衝撃構造というG-SHOCKの核で全面的に採用するために着々と準備を重ねた。

「過去のモデルでもベルトにカーボンファイバーのシートを挟み込んだり、樹脂ケースにカーボンを練り込んでいたりと、部分的に採用してきています。ただ、2019年登場したカーボンコアガード構造やカーボン積層ベゼルは、非常に高度な設計や加工技術が必要です。過去に部分的に採用してきたカーボンの技術を時間をかけて発展させ、高い完成度で応用できたのが、2019年春のタイミングだったのです」

▲最新作「MTG-B1000XBD」(右端)の構造やデザインには、歴代のMT-Gシリーズの技術が応用されている。常にブラッシュアップを重ねて、細部まで完成度を高めている

■複雑な工程を経て完成するカーボン積層ベゼル

実際に「MTG-B1000」シリーズで採用したカーボン積層ベゼルは、非常に複雑な製造工程を要する。まずカーボンファイバーとグラスファイバーのシートを交互に重ねてプレス成型し、緩やかな曲面を出してから、加熱して焼き固める。さらにビス穴、リューズガードなどを順に削り出していき、細部の塗装やコーティングを重ねて、ようやく完成に至る。

▲織り込んだカーボンファイバー(右)と、グラスファイバー(左)、織ってないカーボンファイバー(下)を重ねて、カーボン積層ベゼルを製造。独特な積層面を生み出している

「デザインの特徴である積層面をそれぞれ均一にするのが難しく、技術の確立には1年半ほどかかりました。カーボンは硬さがあるのできれいに削り出すのも難しい。カシオとしてはG-SHOCKにも精密機器としての正確さを求めるため、妥協せずに技術を高めてきたのです」

こうした苦労の結果、耐衝撃性能と軽さ、そして素材を生かした機能美あふれるデザインが完成。最上位ラインのMT-Gにふさわしい仕上がりとなった。

▲カーボン積層ベゼルは、複雑な工程を経て完成する。一部のパーツのみにここまでの工程を要するのは異例のこと。技術への自信とデザインへのこだわりが凝縮している

「G-SHOCKはいろいろな素材に挑戦するのも、ひとつのブランドアイデンティティです。2018年の35周年を経て、新たな第一歩をカーボンの採用で示せたのではと思っています。今後はさらにラインナップを拡充していきたいですね」

>> 【特集】G-SHOCKの最新到達点

本記事の内容はGoodsPress12月号94-95、97ページに掲載されています

 

(取材・文/高橋 智 写真/江藤義典 スタイリング/小孫一希)


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