500万ユーザー間近の学習管理SNS「スタディプラス」が7億円調達、大学からの広告収益が拡大

学習管理SNS「Studyplus」など教育領域で複数の事業を展開するスタディプラスは1月20日、RFIアドバイザーズが運営するファンドをはじめとする複数の投資家より総額約7億円を調達したことを明らかにした。

今回は同社にとって2018年5月に発表した資金調達に続く、シリーズCラウンドという位置付け。旺文社ベンチャーズや増進会ホールディングス(Z会)、新興出版社啓林館など教育系の事業会社も数社加わっていて、一部の投資家とは事業面でも連携しながらさらなる成長を目指していく計画だ。

主な投資家は以下の通り。VCや事業会社のほか、個人投資家も含まれるという。

  • RFIアドバイザーズ
  • 博報堂​DY​ベンチャーズ
  • 西武しんきんキャピタル
  • みずほキャピタル
  • 旺文社ベンチャーズ
  • 横浜キャピタル
  • 池田泉州キャピタル
  • ユナイテッド
  • 増進会ホールディングス
  • NSGホールディングス
  • 新興出版社啓林館

主力のStudyplusは大学からの広告収益が拡大

スタディプラスは2010年設立のEdTechスタートアップ。2012年3月スタートのStudyplusに加えて、SaaS型の教育事業者向け学習管理プラットフォーム「Studyplus for School」や電子参考書のサブスクアプリ「ポルト」を運営している。

中でも主力事業のStudyplusはビジネスサイドも含めて大きく成長しているようだ。現在の会員数は495万人を突破。特に大学進学希望の高校3年生の3人に1人が利用しているなど、受験を考えている高校生のシェアが高いのが特徴だ。

機能面でも日々の勉強時間を記録できる機能を軸として目標管理や先輩の体験記、参考書レビュー、コミュニティなど大学受験を控えるユーザーをサポートする仕組みがいくつも取り入れられている。

ユーザーには無料でこれらのサービスを提供し、広告で収益をあげるモデル。スタディプラス代表取締役の廣瀬高志氏や取締役CFOの中島花絵氏によると、高校生が日常的に使っているアプリという特性もあって「大学からの広告売り上げがかなり拡大している」という。

「少子化により定員割れしている大学も出てきている中で、受験生に効果的にアプローチしたいと考えた際に選んでもらえる機会が増えてきた。従来は交通広告や紙の新聞、高校で配られる進学情報誌などが一般的だったが、(大学としては)効果測定がきちんとできて、なおかつ受験生にダイレクトにプロモーションをしたいというニーズが強くなっている」(廣瀬氏)

「『大学広告のデジタルシフト』が1つのキーワード。一方で高校生側もたくさんの情報が溢れる社会の中で、自分にとって適切な情報を取得できているかというと必ずしもそうではない。本格的な受験勉強を始めて、偏差値がわかってから行きたい大学を決める高校生も多いのが現状だが、本来は順番が逆のはず。Studyplusは受験勉強よりも前の段階から使っているサービスなので、その特性も活かすことで進路選びにおける矛盾や課題も解決できると考えている」(中島氏)

2018年のシリーズBで調達した資金も活用しながら直販の営業部隊を構築することで、大学との直接取引が増加。それによって「(大学側が)本当に抱えている課題がわかり、本当に求められている商品設計もできるようになってきたのが大きな変化」(中島氏)だという。

教育事業者向けSaaSや参考書サブスクもさらに強化へ

教育事業者向けSaaSのStudyplus for Schoolも主に中学生、高校生を対象とする全国の学習塾・予備校約500校以上に導入が進むなど拡大中だ。

同サービスはStudyplusと連携して先生が生徒の学習進捗を管理できるほか、アドバイスや励ましなどオンライン上で手軽にコミュニケーションできるのが特徴。塾業界が徐々に集団指導型から「自立学習型」へとシフトし、ICTなどを使いながら先生がコーチングをするスタイルが浸透していく中で、現場で求められるサービスを目指しているという。

全ての生徒が放っておいても勉強するわけではないので、個々の進捗を把握しながらサポートできる学習管理サービスのニーズは高い。「Studyplusをかなりの生徒が使ってくれていることがSaaSにおいても優位性になり、現時点ではほぼ独占的に事業を展開できている」(廣瀬氏)状況だ。

また昨年9月から新規事業として始めたポルトも対応教材が43冊に増加(リリース時は30冊)。今夏には100冊まで拡大することを視野に入れている。まだ立ち上がったばかりのサービスではあるものの「1日3時間ポルトを使って勉強している」というユーザーが出てくるなど、少しずつ成果も見えてきた。

廣瀬氏によると、ユーザーに「ポルトで気になった参考書を紙で買いたいか」をアンケートで聞いたところ約3分の2が買いたいと答えたそう。参考書を何冊もカバンに入れて持ち運ぶのは大変なので、場所に応じてポルトと紙を使い分けるユーザーもすでに一定数存在するようだ。

今回の資金調達はこれらの事業を投資家とも協業しながらさらに成長させるためのもの。昨年2月にStudyplus for Schoolを軸とした業務提携を締結済みのZ会や、ポルトに参画している旺文社や啓林館とは共同での取り組みを加速させていく計画だという。

「2010年に創業してから今年で10周年になるが、ここにきて国もかなりEdTechに力を入れ始めていて、今後PCやタブレットの配布など学校の中でのICT活用も急速に進む。古参なEdTech企業としてはようやく長年地味にコツコツやってきたことが花ひらくタイミング。これまで通り3つの事業を通じて教育領域の根本的な課題を解決しつつ、プラットフォームビジネスをより強固なものにしていきたい」(廣瀬氏)


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