「スタートアップ上場支援は取締役会の多様性が条件」とゴールドマンサックスが表明

米国の大手銀行は、世界で最も強力な組織の1つだ。だが、すべての現役企業と同様に社会的意義を保つにはまだまだ努力の余地がある。例えばMorgan Stanley(モルガンスタンレー)は、もっと多くの直接上場が見たいと言う投資家を支援する機会が増えた。大きな影響力を持つ投資家もいるから、彼らに勝てないなら(そして競争で先頭を走りたいなら)協力したほうがいい。

さて、Goldman Sachs(ゴールドマンサックス)は自社に関して現代を象徴する発表を行った。CEOのDavid Solomon(デービッド・ソロモン)氏は1月23日、CNBCに対して今年からゴールドマンサックスは企業の取締役会に少なくとも1名、多様性(ダイバーシティ)をもたらす人物がいなければ、その企業の上場を支援しないと述べた。

「米国と欧州で7月1日から、少なくとも1人の多様性をもたらす取締役候補がいない限り、企業の上場を支援しない。特に女性を念頭に置いている」と、ソロモン氏はCNBCの番組「Squawk Box」で具体的に述べた。

当然のことながら、この発表をマーケティングにすぎないと見なす向きもあるだろう。取締役会に女性が1人もいない企業の公開は当然受け入れられないし、今やさらに「多様性」に富んでいることが望まれるというのが大方の見方になっている。例えばWeWork(ウィーワーク)は昨年、取締役会全員が男性のまま公開しようとしたが、その後すぐに上場前に「混合」の取締役会にすべきと認識した。ただご存知のとおり、同社がS-1を修正してハーバード大学の教授であるFrances Frei(フランシス・フレイ)氏を最初の取締役会女性メンバーに指名するまでに、上場の見込みはすでに崩れ始めた。

上場前に最初の女性取締役を加えることは、最近ではお決まりになっている。もっと興味深い点は、その発表の時期が上場申請ぎりぎりになって行われるかということだ。

2008年創業のAirbnb(エアビーアンドビー)は、2018年に最初の女性取締役を迎えた。IPOが2020年と仮定すると2年前だ。10年というのは取締役会にダイバーシティを欠いた期間としては長いが、異例ではない。Slack(スラック)の最初の女性取締役であるSarah Friar(サラ・フライヤー)氏は、2017年3月に入社した。昨年の直接上場のおよそ2年前ということになる(2年前の時点で創業8年だった)。同様に、現在創業8年のフィットネス会社Peloton(ペロトン)は、2018年春に初の女性取締役としてPamela Thomas-Graham(パメラ・トーマスグラハム)氏を迎えた。同社は昨年の9月に公開した。

その3社について注意する必要があるのは、従業員レベルで起こっていることだ。Slackは何年もの間、事業の中核に多様性を掲げてきた。Airbnbも、より多様な従業員を雇用するという点で成果を上げている。Pelotonは、最近の「性差別主義者」「ディストピア」広告で物議を醸したが、多様性に富む経営陣を擁している。

ソロモン氏を批判しているわけではない。多様性に関しては、わずかなことの積み重ねが大事だ。だが、もしゴールドマンサックスが銀行のヒエラルキーで本当にその地位を維持したいなら、IPO準備の一環で取締役会に女性や有色人種を加えるよりもはるかに大胆な施策は、従業員に多様性が見られる企業の上場のみを支援することになると思われる。

ここでもっと本質的なことに目を向けてみたい。公開会社の取締役が集まって四半期の数字を確認するのは通常年4回だけだ。確かに重要だし必要なことだ。ただ、戦略的目標が確実に達成され、企業に有益な紹介を行うことを保証するという本来の役割を超えて、業界の取り巻きは取締役に重きを置きすぎている(与えられた仕事からすればあり得ない金額がしばしば支払われる)。

1つのアイデアとして、将来の利益の1%をNAACP(全米有色人種地位向上協会)へ還元する企業のみゴールドマンサックスはその上場を支援すると宣言してはどうか。それだけでゴールドマンサックスは、真に進歩的であることを望んでいる創業者や投資家が見ている中でポールポジションを取ることができる。しばらくの間ゴールドマンサックスは多くのビジネスチャンスを逃すかもしれないが、時間が経てば報われるギャンブルになると推測する。

すでに顕在化しているが現実世界に十分な影響を与えていないプロセスを制度化することは、制度化しないよりは多少なりとも良い。ソロモン氏によれば、驚くべきことだが、米国と欧州で最近上場した約60社の取締役会の全員が白人男性だった。

TechCrunchは1月23日、大手銀行がIPO前の企業に関して独自の公約を行うかどうか確認するため、モルガンスタンレー、Bank of America(バンク・オブ・アメリカ)、JPMorgan(JPモルガン)に問い合わせた。いずれも多様性にコミットしていると公言しているが、問い合わせに対するコメントは避けた。

ソロモン氏は以前CNBCに対しこう述べた。「小さな一歩だと思うが、この一歩の方向性を言い換えればこういうことだ。『我々はこれが正しいと思うし、正しいアドバイスだと思っている。また我々は、クライアントが取締役会に女性を迎えるにあたり助けを求めてきたら、我々のネットワークのおかげで、支援できる立場にある』。これは我々がこう自問する1つの例だ。『どうすれば正しいと思うことを実行して、マーケットの進歩に貢献できるのか』」

画像クレジット:Denis Balibouse / Reuters

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi


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