クルマはカッコよさ重視の人に!メルセデス「CLA」は美しいルックスの個性派クーペ

2018年に日本への上陸を果たしたメルセデス・ベンツのコンパクトハッチバック、4代目「Aクラス」。その派生モデルである2代目「CLAクーペ」と「CLAシューティングブレーク」も、2019年末に日本でのデリバリーが始まりました。

昨今のメルセデス・ベンツにはモデル名に規則性があり、CLAといえば“Aクラスをベースとする4ドアクーペ”を指します。この命名規則が世代によって変わること、さらに、21世紀以降のフルライン戦略でモデルバリエーションが急速に増えたこともあり、古くからのメルセデスファンからすると「CLAってどんなクルマだっけ?」となることもあるかもしれません。

しかし、先代モデルのセールスが好調だったCLAは、象徴的なルーフラインなど、個性的なエクステリアを見れば「あぁ、あのモデルの新型か」とお分かりいただけるはず。今回はそのラインナップの中でも、前衛的な4ドアクーペボディに、4気筒ガソリンターボエンジンを搭載した「CLA 250 4マチック」を紹介します。

■自分にベストな1台を選べるメルセデスのフルライン戦略

「なかなかカッコいいじゃん!」。新しいCLAと初対面しての率直な第一印象は、まさにそのひと言でした。

正直に告白すれば、筆者はメルセデス・ベンツのラインナップに対し、「Cクラス」、「Eクラス」、「Sクラス」というサルーンと、リアルオフローダーの「Gクラス」があればそれで良し、という、前時代的な思考を捨てきれないひとりでした。一方、メルセデスは21世紀を迎える頃から本格的なフルライン戦略を進めており、先に挙げたモデルを中核としつつも、コンパクトカーやSUVを次々とリリース。現在では、コンパクトカーから大型サルーン、さらに、実用指向からデザイン重視のモデルまで、幅広いラインナップを擁しています。

メルセデスの入門用ともいうべきコンパクトカーだけを見ても、ベースとなる5ドアハッチバックのAクラスのほか、4ドアサルーンの「Aクラスセダン」、先頃、本国でフルモデルチェンジを果たしたSUVの「GLA」、ユーティリティ重視の「Bクラス」に加え、本国では3列シートを備えた新しいSUV「GLB」もデビューしています。

メルセデスがこうした戦略をとる背景には、ドイツのライバルたちによる同様の戦略を、ただ眺めているわけにはいかないという理由もありますが、国を問わずメルセデスユーザーのライフスタイルも多様化していますから、用途や趣味に合った1台をどうぞ選んでください、という発想もあるのでしょう。

実際、旧人類の筆者も、いざメルセデスの最新ラインナップを目の当たりにすると、自分の生活と重ね合わせて「アレよりコレかな」といった具合に、多彩なモデルから選べるのは便利だなと感じますから、メルセデスのこうした戦略は、少なくとも現時点では正解であるのは間違いなさそうです。

■Aクラスからの“伸び代”はトランク部とデザインに

さて、今回の本題であるCLAは、メルセデスいわく“Sensual Purity(官能的純粋)”というデザインの基本思想に基づいて誕生したモデルであり、流麗かつ力強さを表現したエクステリアが特徴とのこと。確かに、サメの尖った鼻先を思わせる凛々しいフロントマスクや、なだらかなルーフラインと美しい弧を描くサイドウインドウなど、個性的でアバンギャルドなエクステリアが目を惹きます。

CLA250 4マチックのボディサイズは、全長4695mm、全幅1830mm、全高1430mm、ホイールベース2730mmという数値。5ドアのAクラスに比べると、275mm長く、30mm幅広く、10mm高いというディメンションを採ります。一方、ホイールベースは共通ですから、寸法の差異は、リアに備わるトランク部とデザインのために費やされていることが分かります。Aクラスをベースとしつつも、都市部での取り回しに困らない範囲で、伸びやかで優雅さも感じさせるデザインを実現したデザイナーの手腕は、さすがといったところ。このサイズなら機械式の立体駐車場もほぼクリアできますし、取り回しに影響する最小回転半径も5.1mと、同クラスではトップクラスの小ささに収められています。

今回の試乗車であるCLA250 4マチックに搭載される“M260型”エンジンは、排気量1991ccの直列4気筒DOHCターボで、最高出力は224馬力、最大トルクは35.7kgf-mを発生します。車重は1580kgということで、1400kg以下に収まる5ドアハッチバックに比べると重く感じますが、4マチックというネーミング通り、駆動方式には4WDが採用されているため、メカニズム構成を考えれば、妥当な重さといったところでしょう。

ちなみにメルセデスの4WDは、モデルごとに複数のメカを使い分けていますが、CLA250 4マチックでは、フロント100対リア0をベースに、雪上など滑りやすい路面では50対50まで駆動力の配分が変化する、可変トルク配分型を採用しています。なおトランスミッションは、デュアルクラッチ式の7速ATが設定されています。

なお新型CLAには、今回の試乗車であるCLA250 4マチック(534万円)のほかに、2リッターの直列4気筒ディーゼルターボを積む「CLA200d」(472万円)、ワゴンボディの「CLA250 4マチック シューティングブレーク」(544万円)、「CLA200dシューティングブレーク」(482万円)、さらには、ハウスチューナーであるAMG仕様の「CLA45 S 4マチック+」(856万円)、「同シューティングブレーク」(866万円)もラインナップされています。

■個性的で美しいデザインもと欲張るなら唯一無二の存在

テストドライブへと繰り出すべく、ドライバースシートに収まります。運転席回りのデザインは、10.25インチの大画面液晶パネルを用いた“ワイドスクリーンコクピット”や、タービンをデザインモチーフにしたエアアウトレットなど、基本的にAクラスと共通のイメージでまとめられています。上陸直後のAクラスの乗った時は、とても前衛的に感じた眺めですが、CLAのエクステリアとは親和性も高く、そのマッチングの良さに思わずニヤリとしてしまいます。

今回の試乗車には、オプションの“AMGレザーエクスクルーシブパッケージ”(20万8000円)が装着されていて、シートもヘッドレスト一体のハイバックタイプになっていました。こちらもクルマのキャラクターにマッチした形状ですし、ガッチリとしたシートの作りも、なかなか好印象です。

一方、身長180cm強の筆者が前席のポジションを決め、後席へと移ると、ひざ周りにはこぶし1個分以上のスペースが残るものの、ヘッドスペースはギリギリといったところ。後席座面からルーフまでは、5ドアハッチバックのAクラスが960mm、Aクラスセダンが945mmであるのに対し、CLAは910mmしかありません。

とはいえ、身長180cm以上のオトナが運転席と助手席に座り、リアシートにも180cmのオトナが乗るというケースは稀ですし、夫婦ふたりや子どもがまだ小さいご家庭であれば、このサイズでも問題はなさそうです。むしろ、メルセデスにはスペースで勝る5ドアハッチバックやセダンといった選択肢が用意されている現在、CLAの美しいルーフラインはこのクルマ最大の個性であり、セールスポイントだと思います。

装備面では、「ハイ!メルセデス」でお馴染みとなった対話型インフォテイメントシステム“MBUX(メルセデス・ベンツ ユーザーエクスペリエンス)”を標準装備。そのほかオプションとして、“ナビゲーションパッケージ”(18万7000円)や、Sクラス同等のADAS(先進運転支援システム)である“レーダーセーフティパッケージ”(25万円)などが設定されています。

中でも後者は、歩行者と衝突する危険がある時などに回避操作をアシストする“緊急回避補助システム”や、高速道路でウインカー操作による車線変更を行える“アクティブレーンチェンジアシスト”など、ライバルを凌駕する性能を実現。価格は少々張りますが、最新メルセデスの魅力を余すところなく味わいたいなら、ぜひ選んでおきたい装備のひとつといえるでしょう。

気になる走りは、見た目に違わず、程良いスポーティさを感じられるもの。35.7kgf-mという最大トルクを1800回転から発生する直4ターボエンジンは、発進加速はもちろんのこと、高速道路でも十分に痛快かつ滑らか。組み合わされるデュアルクラッチ式7速ATのシームレスなシフトチェンジも小気味よく、ワインディングでも想像以上に活発な走りを楽しめます。

また、サルーンらしい落ち着きとスポーティさを両立した乗り心地も好印象。5ドアハッチバックより増えた車重が好影響を与えているのか、荒れた路面でもジワリとしなやかに、衝撃を受け止める印象です。この辺りのサジ加減も、CLAの美点といえるでしょう。

Aクラスを起点とするコンパクト・メルセデスのラインナップも、今や6シリーズ/22モデルへと拡大しました。趣味と実用が複雑に絡み合うクルマ選びは、大は小を兼ねませんし、その逆もまた然りです。やはり、多彩な選択肢から自分のスタイルにピタリと合致する1台を選べる方が、高い満足感を得られるのはいうまでもありません。

後席もたまに使うし、ボディサイズはあまり大きくない方がいい、という人であれば、5ドアハッチバックのAクラスや、Aクラスセダンも十分、期待に応えてくれますが、それに加えて、より個性的で美しいデザインも、と欲張るなら、CLAは唯一無二の存在となりそうです。

<SPECIFICATIONS>
☆CLA250 4マチック(AMGライン装着車)
ボディサイズ:L4695×W1830×H1430mm
車重:1580kg
駆動方式:4WD
エンジン:1991cc 直列4気筒 DOHC ターボ
トランスミッション:7速AT(デュアルクラッチ式)
最高出力:224馬力/1800~4000回転
最大トルク:35.7kgf-m/1800~4000回転
価格:560万円

(文&写真/村田尚之)


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