「さあ、ついにお楽しみのウッドデッキの床板張りですよ」
日曜大工で作るウッドデッキ。その最大の楽しみが床板であるデッキ材の施工だろう。
ウッドデッキの顔ともいえるデッキ表面。使用する材木でその雰囲気がだいぶ変わる。完成した姿を想像しながら、使用する材を吟味しよう。
「幅が広い材を使うと重厚感があってカッコいいな」
「でも編集長、幅広の材は高いですよ。あんまり予算はないんですよね」
「ううむ、やはりここは定番の2x4材か」
「細い材がたくさん並ぶと、少し安っぽく見えるのが難点ですね。でも定番だけあって安いですし、腐食してもその場所だけの張替えが簡単ですよ」
ということで、編集長の家のウッドデッキは2x4材に決定。2x4材のメリットは価格だけではない。非常に使いやすくDIY用途での流通量が多いので、数を揃える必要があるウッドデッキでも、購入が非常に楽なのだ。
「よし材料も揃ったし、ネジで足回りに固定していけばいいんだよな?」
「そうですよ。でもその前にデッキ表面に表と裏どちらを使うか決めてください」
「表と裏ってなんだよ。材木に表裏があるのか?」
「あるんですねー、これが」
「!?」
■2×4材にも表と裏がある?
▲木裏側へ膨らむように反る。
板状の材木には、木表と木裏がある。といってもそう難しい話ではない。樹木だったとき、表面に近い側が木表、樹芯に近い側が木裏だ。
「表面側が表で、反対が裏。そのままだな」
「ここで問題なのは、この裏表で板が反る方向が決まってるってことなんですよ」
材木は乾燥するにしたがい、反りがでて変形する。板状の材の場合、木裏側に膨らむように反る。木表側は凹状になるため、木表を上にしてデッキを張ると、そこに雨水が溜まってしまうのだ。
「じゃあ自動的に木裏を上にして張るしかないじゃん」
「ところがそう簡単でもないんですよ。通常の床板をはじめ、ウッドデッキ以外の木製品では、木表を表面にするのが通常なんです」
▲木表か、木裏か、同一面を揃えて張っていく。意識して貼らないと、面を間違えることがあるので注意が必要だ
木表側を表面に使うメリットは、木目の美しさとツヤ、柔らかい手触り、そして一番重要なのがささくれの出にくさだ。反対に木裏側は手触りがざらつくうえ、木目に沿ってトゲ状のささくれが非常に出やすい。このため、素足で歩くことの多い屋内のフローリングだと、木表を上にして張るのが常識だ。
「木裏側は剥がれるようにめくれ、大きなささくれができるんです」
「それが足の裏に刺さったら、痛そうだな」
「痛いどころじゃないですよ。まあ何にでも、メリットとデメリットがあるってことですね」
「それで、うちはどうするのが良いんだ?」
「ここのウッドデッキは土足のまま上がって良しとしますか?」
「うーむ悩むところだけど、せっかくの綺麗なウッドデッキだし土足禁止にするかな」
「それならやはり、ささくれは気になりますね。水たまりが少し心配ですが、木表を上にしましょう」
デッキ材を張るには、前回施工した大引へ1箇所2本のコーススレッドで留めつけるのが一般的。木表を上にして張るときは、この2本のネジをなるべく材の両端に寄せて打つようにしよう。そうすれば材が反る力を少しでも緩和することができる。
■治具を使い、均等間隔でネジを締めていく
▲見えにくいが、
「DIYウッドデッキで見栄えが悪いのは、この横並びのネジの頭がきれいに揃ってないとこなんですよ」
「おー、確かにそれはカッコ悪いな」
「そこでこんな治具を用意しました」
取り出したのは、デッキ材に使うものと同じ2x4材の切れ端。その断面に二本の筋をつけておく。デッキ材の上に置いたこれをガイドとして目印にすれば、いつも同じ間隔で横一線にネジを打つことができるのだ。
▲治具を当てながら、ドライバドリルで穴を開けていく。一気に穴だけを開けていくと2×4材がずれてしまうので、面倒だが、穴開け→ネジ締めを繰り返していく
「よーし、バンバン締めていくぞ」
「ダメですよ編集長。ここはウッドデッキの顔です。きれいにネジを締めるなら下穴を開けないと」
コーススレッドは非常に強力なネジだが、その太い軸と大きな溝のために、ネジ穴周辺に割れや毛羽立ちを起こしやすい。ここは手間を惜しまず、下穴を開けてからネジを打つのが正しい。
「そんな時、メインのインパクトドライバとは別に、サブの小型ドライバドリルがあると便利ですよ」
▲1台あれば重宝する、穴開けとビス締め作業が可能なドライバドリル。トルククラッチがついているため、ビスの締めすぎを防ぐ。インパクトドライバは、打撃を与えながより強力な力を発揮するため、長いコーススレッドのネジ締めにはこちらが有用
▲HiKOKI「10.8Vコードレスドライバドリル」(3万7300円)/全長が120mmと短く、軽量コンパクトで取り回しやすい1台。20段クラッチ、手締め機構、LEDライト付きで操作性も高い。最大締付トルク:低速:約38N・m / 高速:約15N・m、サイズ:全長120×高さ219×全幅74mm、重量:1.0kg。急速充電器、予備電池、ケース、電池カバーが付属する
・・「お、&GPっぽい話の展開だな(笑)」
1台のインパクトドライバで、先端のプラスネジ用ビットとドリルビットを交換しながらのネジ打ち作業も不可能ではないが、その都度作業が中断するのでやはり面倒。DIYの現場に、電動ドライバ系の工具が二台あると非常に便利なのだ。
「よし記念すべきデッキ材の1本目が終了!」
■板と板との間にはスチレンボードを挟んで均等に
▲今回はスチレンボードを使用したが、ベニア板などでも構わない。好みの厚さの板を数枚用意しよう
「じゃあ2本目との間に、これ挟んでください」
「なんだ、これは?」
屋外で雨などの影響を受けやすいウッドデッキでは、通常の床と違い、水はけと通気を考えデッキ材とデッキ材の間に隙間を作るのだ。
そこで、今回俺が用意した治具の第二弾は、厚さ5mmのスチレンボード。これをガイドにすることで、材と材の間の隙間を一定に保ちながら施工することができる。
「この隙間は、あまり大きすぎるとつまずいたり物を落としたりするので、5ミリ前後がよいですね」
「隙間を大きくすると、使う材木の量も減らせそうだな」
「それはせこい話ですね。」
2x4材の横幅は8.9cmなので、幅3.6mのウッドデッキを作る場合、使用する2x4材は37〜39本。隙間が2mm変わるとおよそ材木1本分変わるので、よく検討してみよう。
▲隙間と2×4材の数を計算しても、最後の方でデッキがうまく入らない場合がある。その際は隙間を調整し、端を揃える
「あとDIYウッドデッキの場合、最後の方で足回りとデッキ表面の幅が合わないことがあるんです。そこで後半はこの隙間を微妙に変えて、端を揃えたりもするんですよ」
「それじゃあガイド、いらないじゃん」
「まあ、最後は自己満足の世界ですからね。全体的になんとなく揃ってた方がいいじゃないですか」
自慢の2つの治具、そして二刀流の電動ドライバで床板張りはスイスイ進む。
「いやあ、なんだかんだありましたが、ウッドデッキもついに完成ですね」
▲端材を使って踏み台まで自作した編集長。
「そう?」
「そう? って、どう見ても完成でしょ。いやー終わるとなると寂しいですね」
「これさ、せっかくのウッドデッキ、雨ざらしだよね」
「それは仕方ないですよ」
「阪口くんの家のウッドデッキには屋根がついてるんでしょ」
「ついてますけど」
「うちのも屋根つけたいなー」
「今からですか!!」
「ダメー?」
いやいやダメも何も、最初から屋根をつけることを想定して作っていない。大きなすのこを地面に置いたような形のウッドデッキと、人間の頭上に大きく広がる屋根では、施工の難易度は大きく違うのだ。
「屋根は、台風の影響なんかもありますし、責任重大ですよ」
「そうなの?」
「それに母屋との関係もあります。ご自宅の外壁にネジ穴開けたりしたくないでしょ」
「いや、かまわんよ」
「かまわんって・・・」
「ねー、屋根欲しいなー。屋根あるとウッドデッキも喜ぶと思うよー。それとも屋根、作れないの?」
「作れますよ!失礼な。私は自分の家を自分で建てたんですよ!」
「じゃ、うちのも作れるね。よし決定。次回は屋根の施工ってことで」
「…」
急遽決まったウッドデッキの屋根作り。果たして成功するのか!? 次回、刮目してお待ちください!!
>> 連載
(写真・文/阪口克)
旅と自然の中の暮らしをテーマに国内外を取材するフリーカメラマン。秩父郡長瀞町の自宅は6年かけて家族でセルフビルド。家を経験ゼロからDIYで建てる。家族でセルフビルドした日々を描いた『家をセルフでビルドしたい』が文藝春秋から発売中。ほか近著に『笑って!小屋作り』(山と渓谷社)、『世界中からいただきます』(偕成社)など。
- Original:https://www.goodspress.jp/howto/276237/
- Source:&GP
- Author:&GP
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