マーケットプレイスの作り方(2)サプライかデマンド、どちらにまず集中するべきか?

編集部注:本稿は米国スタートアップやテクノロジー、ビジネスに関する話題を解説するPodcast「Off Topic」が投稿したnote記事の転載だ。当シリーズ第一弾「Airbnb、Uberから学ぶマーケットプレイスの作り方(1)マーケットプレイスを制限する」はこちらから是非。

こんにちは、宮武(@tmiyatake1)です。普段は、LAにあるスタートアップでCOOをしています。今回も前回に引き続き、Lenny Rachitskyさんから許可を頂き、翻訳した「マーケットプレイスの作り方」シリーズをお送りします。前回を読まれていない方はこちらから読めます。

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本シリーズは、大きく3つのフェーズに分けての構成になります。

1) フェーズ1:ニワトリとタマゴ問題について
マーケットプレイスを拘束・制限すること
 ・サプライ側かデマンド側、どちらにまず集中するべきか?(←今回)
・初期サプライの伸ばし方
・エンドユーザーの伸ばし方
2) フェーズ2:マーケットプレイスのスケールの仕方
・サプライ側とデマンド側のどちらが伸び悩んでいるかをどう判断するべき?
・スケール時のグロース戦略
・クオリティー担保戦略
・学び・やり直すと何を変える?
3) フェーズ3:マーケットプレイスの進化させる方法
・「Managed」(管理された)マーケットプレイスへの進化する方法とは?
・新規事業の追加方法 ・新規事業の追加方法

前回記事では、マーケットプレイスの「制限」を決めることについて話をした。今回は、サプライ側(供給)を伸ばすか、デマンド側(需要)を伸ばすかリソース分担の判断の時期がやってくる。ニワトリとタマゴ問題だ。

目次

成功した企業はほぼサプライ側にフォーカスしている

僕がインタビューした17社中の14社(約80%)がサプライ側にフォーカスしていたことが分かった。サプライ側にフォーカスした会社は、サプライを集めることによってデマンドが増える仕組み、もしくはデマンド側は口コミで増えるパターンが多い。

この表は、左がサプライ側にフォーカスした企業、右がデマンド側にフォーカスした企業だ。デマンド側にフォーカスした3社は、サプライ側を積極的に集める必要がなかったのが明らかだったため、すぐにデマンド側にリソースを費やすことにした。そして、ある1社は、自社プロダクトがマーケットプレイスではないと気付いた会社もあった。

サプライにフォーカスした会社8つの事例

事例1:Thumtack(サービスマーケットプレイス)
「サービスを開始したとき、eBayやCraigslist、Amazonなど大手マーケットプレイスを見ていた。そこで2つの共通点を見つけたんだ。1つは「サプライをすべて囲い込んでいること」、2つ目は「ダサいプロダクトとブランド」だということをね。サプライ側がすべてだと気付いて、ひたすらフォーカスした。ブランドやプロダクト作りは流動性が高くなるまで延期。他のスタートアップは違う方向性で動いてたが、それは間違えだった。初期にスケールされたサプライを作るのが何よりも大事。」— Sander Daniels氏 (co-founder of Thumbtack)

事例2:Eventbrite(イベント作成・管理サービス)
「初期はサプライを増やすことだけに集中した。サプライを増やすとデマンドが勝手に増えることがわかったんだ。イベント作成者がサイトへのトラフィックを作ってくれた。サプライ側が一番獲得するのが難しいと知って、まずそこにフォーカスした。」— Tamara Mendelsohn氏 (VP and GM at Eventbrite)

事例3:Lyft(配車アプリ)
「Lyftでは、圧倒的にサプライ側のグロースがデマンドのグロースを導いた。」— Benjamin Lauzier氏 (ex-growth at Lyft, Director of Product at Thumbtack)

事例4:DoorDash(フードデリバリーサービス)
「私たちと類似しているマーケットプレイスのグロース戦略を見たときに、みんな同じプレイブックだった。レストランの獲得とデリバリー人材を獲得するとエンドユーザーを獲得できる。一番のグロース基盤はサプライ側だった。サプライがデマンドを増やす。」— Micah Moreau氏 (VP Growth at DoorDash)

事例5:Etsy(ハンドメイドのマーケットプレイス)
「初期は売手側にフォーカスした。マーケットプレイスは売り手側のリスティングが無ければ買手側が集まらないからね。売手側が買手になるケースも多かった。」— Nickey Skarstad氏 (ex-Director of Product at Etsy, VP of Product at The Wing)、Dan McKinley氏(ex-Etsy, Principal Engineer at MailChimp)

事例6:Caviar(高級品市場向けのフードデリバリーサービス)
「レストランにしか集中しなかった。飲食だとレストラン(サプライ側)がデマンドを引き寄せた。そのブランドで食べたいユーザーを連れてきてくれるからね。」— Gokul Rajaram氏 (Caviar Lead)

事例7:Instacart(食料品の即日配達サービス)
「いつもデマンド側の前にサプライ側のオンボーディングをしていた。」— Max Mullen氏 (co-founder Instacart)

事例8:GrubHub(フードデリバリーサービス)
「スケールするにはまずサプライ側から行った。」— (ex-growth at GrubHub, CPO at Eventbrite)

残りの3社は、サプライが勝手に成長する事業だった

これはサプライ側が超簡単に提供できる、超フレキシブルに出せるのがキーとなる。もしくはZillowのケースだと公開データを使うこと。

事例1:Rover(ドッグシッターのマーケットプレイス)
「我々はデマンド(飼い主)が足りてなかった。サプライ(シッター)は、犬好きで、家にいながら$50もらえるのであればRoverを使うのは当たり前。デマンド側のユーザーの行動変化が必要だった。Airbnbと似ていて、他人に犬の面倒を見てもらう信頼性を作るのが難しかったよ。」— David Rosenthal氏 (ex-Rover, GP at Wave Capital)

事例2:TaskRabbit(お手伝い系マーケットプレイス)
「TaskRabbitはサプライが足りなくなることはなかった。何千人とウェイトリストに載っているサービス提供者がいたが、デマンド側のハードルが高かった。後々、サプライ側に登録手数料を取ってサプライ側のボリュームを減らしてクオリティを高くしたんだ。」— Brian Rothenberg氏 (ex-growth at Eventbrite and TaskRabbit, Partner at defy)

事例3:Zillow(不動産売買マーケットプレイス)
「私たちは少し特殊でサプライとは言えないサプライ(公開データ)を取得して始めた。それを使ってデマンドを作り、それを元に本当のサプライ(リスティング)を獲得しに行った。本当のサプライは最初のデマンドを作らなければ獲得できなかったと思う。」— Nate Moch氏 (VP at Zillow)

マーケットプレイスじゃないと気付いた「Patreon」

Patreon(クリエイター支援サービス)
「Patreonがマーケットプレイスだと勘違いしている人は多い。実は、チーム内でも最初そう思っていた。運良く途中でビジョンとKPI、PMFと合わせられ、自社のサービスがマーケットプレイスじゃないと気付いたことが一番の救いだった。例えば、クリエイターの検索機能をロードマップから消したよ。”Etsyの卒業問題”と同じく、クリエイターが大きくなるとEtsyが合わなくなることに気付く。だから僕たちは、ワードプレスみたいなサービスを作ることに専念し、YouTubeが真似できない物を作れた。」— Tal Raviv氏 (Growth at Patreon)

次回は、初期のサプライ側の成長事例と12個のよくある成長戦略について話をしたいと思います。

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Written by Lenny Rachitsky (@lennysan) | Translated by Tetsuro (@tmiyatake1) | Edited by Miki (@mikirepo)

 


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