世の中を変えた調理家電たち、大ヒットのなぜとそのわけ?

世界中のメーカーから毎年、無数の調理家電が発売される。そんな中にはまれに、生活を大きく変革し、家電市場を変えてしまったり、新しいカテゴリーを生み出してしまうほどの影響力を持つ、革新的な調理家電が登場することがある。今回はそんなすごい調理家電を紹介しよう。

No.1 バルミューダ ザ・トースター
高級トースターブームと市場を生み出した一台

1万円以下が当たり前のトースター市場において、2万円を超える高級トースターを提案。ただ、トーストを焼くだけではなく、スチームを利用することで、より美味しく焼き上げることを実現した。それに続く他社製品を含めて、2万円を超える高級トースター市場を生み出した。

メーカー名:バルミューダ
発売日:2015年6月26日
国内外累計販売台数:94万台(2019年12月31日時点)
実勢価格:2万5150円

土砂降りの中で開催されたバーベキュー。焚き火で焼いたトーストか想像以上に美味しかった。それがトースター開発のきっかけだとか。事前に5ccの水を入れて加熱することでパンの表面をしっかりとコーティング。内部の水分を逃がすことなく、表面はこんがり、内部はしっとりと焼き上げる。クロワッサンなども焼きたてのようにリベイクできる。

トーストの美味しさはもちろんのこと、デニッシュ系のパンが美味しくなるのも魅力。また、オーブン機能を利用して、ローストビーフなどのおかず調理にも対応。

 

No.2 ウォーターオーブン「ヘルシオ」シリーズ
過熱水蒸気によるヘルシー調理がスタンダードに

100℃以上に温めた過熱水蒸気で食材を焼き上げる。ウォーターオーブンとして登場。食材に含まれている余分な油や塩分を落とす、減塩、脱油調理ができ、ヘルシー志向に対応した。「ヘルシオ」の登場以降家庭用オーブンレンジは上位モデルを中心にスチーム(過熱水蒸気)機能の搭載がスタンダードとなった。

『ウォーターオーブン 「ヘルシオ AX-WX600」』

メーカー名:シャープ
発売日:2004年9月1日
累計販売台数:200万台達成(2016年度時点)
実勢価格:12万7750円(AX-WX600)

過熱水蒸気による調理方法にこだわったウォーターオーブンの最新モデル。過熱蒸気の特性を生かしたヘルシー調理の他、食材の温度や量などに関わらずプレートに乗せるだけで自動調理ができる「まかせて調理」機能などを搭載する。また、Wi-Fi機能を搭載し、クラウド上のAIと連携して音声対話ができるCOCORO KITCHENを搭載。好みや季節に合わせたおすすめメニューを提案してくれる。

2004年に発売された初代ヘルシオ。シャープは1962年の業務用電子レンジ量産や1966年の世界初ターンテーブル方式家庭用電子レンジ発売などで、調理家電市場を先導し続けている。

 

No.3 「ヘルシオ ホットクック」シリーズ
ヘルシーで、簡単で、便利だから普及が広がる

開発コンセプトは、忙しい主婦が美味しい和食を簡単に作れる「美味しい、簡単、健康調理器」。以前から無水調理ができる電気鍋は注目を集めていたが、火加減が難しいなどの課題があった。そこでホットクックでは自動センシングによる緻密な火加減とまぜ技ユニットを組み合わせにとって無水でコトコト煮込む機能を実現。その便利さと美味しさで電気鍋市場を活性化した。

『ヘルシオホットクック KN-HW24E』

メーカー名:シャープ
発売日:2015年
累計販売台数:27万台(2019年度末達成見込み)
実勢価格:7万1280円(KN-HW24E)

水なしでの無水調理ができる電気自動鍋。写真の2.4Lサイズに加えて、コンパクトな1.6L、1.0Lサイズもラインナップする。高い密閉性を確保しており、野菜から出た水分だけで調理ができる無水調理に対応。無水カレーなどが楽しめる。また、食材が傷みにくい温度帯でキープするタイマー調理機能も搭載。Wi-Fi搭載モデルはレシピのダウンロードにも対応する。

ホットクックの初代モデル。ヘルシオ炊飯器に搭載されていた「まぜ技ユニット」と「まぜ技クッキング」を応用し、精密な火加減でコトコト煮込む+まぜる+無水という調理を実現した。Wi-Fi機能などは搭載しないが、基本機能は共通だ。

 

No.4 BRUNO コンパクトホットプレート
おしゃれなメニュー提案でホットプレートを普段使いに

ステンレスに黒いプレートという従来のホットプレートと一線を画した温かみのあるデザインを採用した小型のホットプレート。焼肉やたこ焼き、といった定番メニューのイメージを払拭し、パエリアやアクアパッツァ、アヒージョなど、イタリア、スペインの料理を提案。ホットプレートの使用シーンを、よりおしゃれで楽しいホームパーティシーンに切り替えることに成功した。

メーカー名:イデアインターナショナル
発売日:2014年3月
累計販売台数:173万台(2019年12月31日時点)
実勢価格:9680円

鋳物ホーロー鍋のような暖かいデザインを採用した小型サイズのホットプレート。250℃までの過熱に対応。平面プレートに加えてたこ焼きプレートが付属し、多彩なメニューが調理できる。さらに様々なオプションプレートを用意しており、非常にバラエティ豊かなレシピが楽しめる。さらにデザインのよいパッケージを採用し、ギフトニーズでも非常に高い人気を誇っているのも特徴だ。

BRUNOの何よりのすごさはレシピ提案などのソフト面が充実していたこと。BRUNOアンバサダーとともに様々なレシピを提案している。

 

No.5 ブレッドオーブン
確信が続くトースター市場の新しい提案

日本の食卓で「ごはん」に加え「パン」食の機会が増えているという社会的背景がある中、よりおいしくパンを食べることを目指したトースターを開発。炊飯器の密封技術を生かして、一枚焼きという独自構造を持つトースターを開発した。3万円という非常に高価な価格ながら、突き抜けたおいしさを実現することで、2019年のナンバーワンヒットのひとつとなった。

メーカー名:三菱電機
発売日:2019年4月
ヒットの状況:発売前から話題となり、予約販売開始後すぐに初回ロット分が完売。以降生産ラインを強化し好評発売中。
実勢価格:3万円

上下にフラットヒーターを配置したプレート加熱方式の1枚焼きトースター。密封断熱構造によりパンに含まれる水分と香りを庫内に閉じ込め、再びパンに戻すことで、耳までふんわりとした食感のトーストが焼ける。トーストモードの他、冷凍トーストモード、トッピングトーストモード、フレンチトーストモードを搭載。パンの厚さや好みの焼き色などきめ細かく設定できる。

たっぷりの卵液を吸ったフレンチトーストの美味しさもブレッドドオーブンの魅力。スフレケーキのようなふわふわの美味しさだ。

 

No.6 「おどり炊き」炊飯器シリーズ
可変圧力によりご飯のさらなる美味しさを追求

電気炊飯器の歴史は、かまど炊きのようにご飯をよりおいしく食べられるようにする技術開発の歴史でもある。1955年に電気炊飯器ができた後、革新的な進化となったのが1988年にパナソニックが開発したIH加熱方式と1992年に三洋電機が開発した圧力炊飯方式だ。それらの技術を組み合わせて生まれたのが、2002年の「可変圧力おどり炊き」(三洋電機)。炊飯中に圧力を切り替えることでお米をおどらせてより美味しく炊くことを実現した。現在では大手国内メーカーの炊飯器のほとんどがこの圧力炊飯方式を採用しており、圧力炊飯方式がスタンダードとなった。

Wおどり炊きの最新モデル『スチーム&可変圧力IHジャー炊飯器「Wおどり炊き」SR-VSX109』

メーカー名:パナソニック(三洋電機)
発売日:2002年8月(おどり炊き)
累計販売台数:200万台超(パナソニックのWおどり炊きシリーズおよび可変圧力おどり炊きシリーズ合計)
実勢価格:11万円(SR-VSX109)

圧力炊飯によるおどり炊き機能に、IHヒーターの高速切り替えによる交互対流を加えた「Wおどり炊き」炊飯器の最上位モデル。220℃スチーム機能も搭載し、ごはんの旨みを引き出し閉じ込める。圧力やスチームの有無を組み合わせて13通りの食感でご飯を炊き分けることが可能。また、日本全国50銘柄を美味しく炊き分ける銘柄炊き分けコンシェルジュ機能を搭載し、様々な銘柄の米の味を食べ比べられる。お米の鮮度を見極めて、乾燥してしまったお米も美味しく炊ける鮮度センシング機能も搭載する。

三洋電機から2002年に発売された「おどり炊き」の炊飯器。圧力を可変することで、突沸を起こしてお米を踊らせる仕組み。

 

No.7 VERMICULAR RICEPOT
徹底した美味しさの追求

バーミキュラは料理好きに人気の鋳物ホーロー鍋のブランド。ライスポットは失敗なく美味しく料理を作り、ご飯を炊くために鍋、ヒーターともに0から独自開発した製品だ。保温機能がない炊飯器として、美味しさに徹底してこだわったことで圧倒的な炊きたてのおいしさを実現した。また、高い密閉性を活かした無水調理や1度単位で温度設定できる低温調理なども高い評価を受けており、近年の電気鍋人気や、低温調理ブームのきっかけの一つにもなっている。

メーカー名:バーミキュラ
発売日:2016年12月1日
累計販売台数:14万台(2019年12月末時点・シリーズ累計)
実勢価格:8万7780円

自社製造の鋳物ホーロー鍋とポットヒーターを組み合わせた炊飯鍋のセット。最大5合のご飯が炊けるモデルと、3合炊きモデルをラインナップ。保温したご飯は美味しくないという考えから炊飯モードの保温機能は搭載せず、炊きたてのおいしさを追求。炊くご飯の量に合わせて加熱することで最適な火力でみずみずしく引き締まったご飯が炊ける。また、無水カレーやローストビーフなど、おかずレシピも充実。お店のようなクォリティの料理が楽しめる。

熱伝導性の高さや蓄熱性の高さにより、お米にしっかり熱を加えることが出来、しゃっきり炊けるのが魅力。

革新の家電製品が新しい市場を切り開いていく

記憶に残る家電製品がある。それは生活を大きく変える家電だ。調理家電の歴史はキッチン、おうちの台所仕事が楽になっていった記録であり、おうちごはんがより美味しく、健康的で手軽になってきた歴史でもある。そこには大きく変革をもたらした革新的な調理家電がいくつか存在している。

例えば、バルミューダの『バルミューダ ザ・トースター』だ。この製品が登場する以前は、トースターというと数千円程度の製品がほとんどで、高級トースターなんて一部の輸入品以外存在しなかった。誰もがトースターはそういうものだという固定概念を持ち、そこに疑いはなかった。だが、その常識を打ち破り、高級トースターという市場の扉を開いたのがバルミューダだった。スチームテクノロジーと緻密な温度制御というこれまでにはないアプローチによってパンの本当のおいしさを引き出すことに成功した。しかし、市場の相場に対して、2万円以上という価格は当然消費者に驚きをもって迎えられた。だが、その結果は大ヒット。ただ、ほんの少しの水を入れるだけで、コンビニで売っているような安い食パンが驚くほど美味しくなる。日常のコンビニ食パンがおいしくなるわけがないという固定概念を打ち破った。また、製品のデザインや提案する世界観、そして代表である寺尾玄氏のパンに対するストーリー、そのすべてに説得力があった。そして、試してみたい、食べてみたいという消費者の思いと、本当に美味しいという結果がヒットの道筋を作っていった。『バルミューダ ザ・トースター』が大ヒットした後、アラジンやパナソニック、シロカなど、多くの家電メーカーが高級トースターを発売。「高級トースター」市場を作り出したのだ。

さらに、イデアインターナショナルの『BRUNOコンパクトホットプレート』も同じこと。誰もがホットプレートというと、お好み焼きやたこ焼き、そして焼肉のための、ちょっとダサい家電なのが当たり前と考えていたときに、アクアパッツァやパエリア、アヒージョなどの新しいメニューを提案することで、ホットプレートをおしゃれなものへと変えた。イデアではこれらの新しいレシピを料理研究家などのアンバサダーとともにSNSで積極的に拡散。同時期に広がった”インスタ映え”人気に後押しされて、女性中心に支持を集めていった。そこで提案していたのは機能や美味しさよりも、ちょっとステキなあこがれのライフスタイルだった。『BRUNOコンパクトホットプレート』の大ヒットのあと、女子会向けのおしゃれなホットプレートはこの後、多くのメーカーから商品化されている。

このように革新的な調理家電は、それまでの常識を大きく覆すこうところから始まっている。ヒーターによるオーブン加熱ではなく過熱水蒸気だけで調理することでヘルシー調理を実現した『ヘルシオ』、保温ができない鍋でご飯を炊くことにより、炊きたてのおいしさを追求した『バーミキュラライスポット』。今回紹介した製品はすべて、過去の常識に縛られず、健康やおいしさ、新しい楽しさなどを徹底して追求して作られているのだ。そして妥協がないからこそ、ヒットにつながっている。

これらの家電製品に共通するのは単にデザインが良かったり、高機能だったりするだけでなく、利用者の生活が確実に変わる意味を持っているということだ。家電製品は、価格やデザイン、ブランドだけで選ぶのではなく、こういった生活を変える傑出した家電製品を体験してみてほしい。きっと生活が楽しく、豊かなものに変わるはずだ。


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