AngelListがVCファンドのパフォーマンスを比較する新しい指標とツールを開発

ベンチャーキャピタル業界は非常に不透明であり、ベンチャーファンドの比較は非常に困難なことで有名だ。Cambridge Associates(ケンブリッジ・アソシエイツ)などのグループが計算した従来のベンチマークは、ベンチャーファンドを「ヴィンテージイヤー」ごとにバケツに入れ、IRR(時間で調整した収益率)やDPI(リミテッドパートナーへの分配額をファンドへの投入資金で割った金額)などの指標に基づいて資金を四分位にランク付けする。どのファンドも第1四分位(上位25%)に入りたい。ファンドのCFOの多くは、「あと数ポイント」を絞り出して指標を改善し、自身のファンドが上位25%のラインより上に行くような技を持っている。

データの粒度が細かくなると、パフォーマンスの比較はさらに難しくなる。 ファンドがシードステージのスタートアップに投資し、シリーズAでフォローアップ投資を行い、シリーズBとCラウンドで持ち分に応じた投資を行ったとする。そしてスタートアップが売却でイグジットするとき、買い手が対価を18カ月にわたり3つのトランシェに分けて現金で払うとする。IRRはどう計算するのか。他のファンドやそのポートフォリオ投資とどう比較すればよいのか。

AngelList(エンジェルリスト)は、同社の最新プロジェクトがこうした課題を解決し、その過程でVCアセットクラスのパフォーマンスの透明性が高まることを期待している。同社のデータサイエンスチームは、自社のファンドやシンジケート、また外部の情報源からのデータに基づき、ファンドマネージャーがパフォーマンスを他のファンドと比較できる「VC Fund Performance Calculator」を開発した。四分位数にとどまらず、各ファンドのパフォーマンスのパーセンタイル(百分位数)スコアを提供する。

このツールが基礎としているのは、AngelListが「有効期間」と呼ぶ、再定義されたVCファンドの投資ウィンドウの概念だ。前述した、VCファンドが1つのスタートアップに複数回投資したり、投資を複数年に分散したりする場合に生じる問題への回答だ。こうした投資に対してどうベンチマークを取ればいいのか。数年にわたる投資のすべてを1つの「ヴィンテージイヤー」に、また投資のイグジットをすべて1つの「イグジット日」に集約することは方法としてはやや荒っぽい。そこでこのツールは、投下資本とリターンに時間で重み付けして、投資のスピードに関係なく、ファンド間の直接比較を可能にした。

写真:AngelList

AngelListのデータサイエンスの責任者であり、このプロジェクトのリーダーであるAbe Othman(アベ・オスマン)氏は、「『有効期間』を使えばVCのベンチマークに関する多くのあいまいさや恣意性を排除できる」と説明した。

同氏は、VCファンドがポートフォリオ企業の将来のラウンドに投資する方法として、コミットした投資金額のかなりの部分を後にとっておく手法を例に挙げた。これにはIRRを押し上げる副次的効果がある。資金がファンドのライフサイクルの後半に拠出されるからだ。「私の仕事の興味深い点の1つは、多くの同業者の知恵を数学的に裏付けるデータを持っていることだ。ここでの研究で得られた成果の1つだと思う」とオスマン氏は語った。

実際のパーセンタイルデータを構築するには、パフォーマンスに関する大規模なデータセットが必要だったが、AngelListはもちろん、Cambridge Associatesのようなグループを除いては、詳細な情報を持っている組織はほとんどない。オスマン氏は「このツールを開発するために400を超えるファンドのデータを使った」と述べた。ファンドのパフォーマンスのパーセンタイルスコアという面では非常に正確なのかもしれない。

オスマン氏が発見したパーセンタイルに関する興味深い点の1つは、40パーセンタイルといった非常に低く見えるスコアでも、実際には依然として優れたIRRのこともあるということだ。

写真:AngelList

AngelListは、自社のファンドオブファンズの事業でこのデータを利用し、パフォーマンスの良いマネージャーに資金を振り向けている。「有名なベンチャーファンドや当社のベンチャーファンドの業績に関するデータを公開することが目的ではない」とオスマン氏は語った。「当社のプラットフォームで活動する新進のマネージャーに自身が最高の業績を上げていることを認識してもらい、データも提供してもらう。そして願わくば、将来的に彼らがより多くの資金を調達するのを手助けすることがより重要だ」

AngelListの外部に対してオスマン氏のチームが期待することは、新しいツールと指標がベンチャー業界の透明性を高め、最終的に資産クラスのリターンが適切に理解されることだ。

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi


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