歯科医や保険会社が歯のレントゲン写真を理解するのをAIを使ってサポートするOverjetは米国時間6月2日、シードラウンドで785万ドル(約8億5000万円)を調達したと発表した。
MITで電気工学とコンピューターサイエンスの博士号を取得した同社CEOのWardah Inam(ワルダー・イナム)氏によると、本ラウンドをリードしたCrosslink Capital(クロスリンク・キャピタル)と、MIT発のスタートアップのみに投資するE14 Fundから資金を調達した。
Overjetが2つの異なるMITグループの支援を受けてきたことを考えると、E14とのつながりは驚くことではない。ボストンエリアの教育機関とのつながりを維持しながら、OverjetはHarvard Innovation Lab(ハーバード・イノベーション・ラボ)によって育てられた。活動場所に関しては、Overjetは同ラボを「卒業」するとイナム氏はTechCrunchに語った。
リード投資家としてCrosslinkを選んだのは偶然ではない。「デンタル業界でよく使用されているソフトウェアを手掛けるスタートアップのWeaveにCrosslinkが出資していたことから、OverjetはCrosslinkに関心を持った」とイナム氏は述べた。なお、Weaveは2019年にユニコーンに近いバリュエーションで7000万ドル(約76億円)のシリーズDを完了した。
お金の話しはこれくらいにして、Overjetが何をしているのかに移ろう。
AIを活用
歯科医の診察を受ける時、往々にして歯のレントゲン写真を撮る。そして歯科医が写真を見てアドバイスをする。「いい状態を保っている。数カ月以内にクリーニングに来て」と言うかもしれないし、「治療が必要だ」と言うかもしれない。後者の場合、Overjetの出番だ。
イナム氏は「Overjetのメーンとなるテクノロジーはどんな治療が必要かを決めるのをサポートする」と語る。同氏はTechCrunchとのインタビューの中で、腫瘍検知の例を筆者に示しながら「ほとんどの医療画像AIサービスは何か良くないものを発見するのにフォーカスしている」と述べ、「Overjetは例えば虫歯があるという問題を指摘するだけでなく、虫歯の広がりをも示すことで『1歩先』を行くことができる」と語った。「臨床データを広範に分析」して「どんな治療が必要かを決める」ことができ、「歯科医と保険会社を引きつけるだろう」とイナム氏は電話ごしに説明した。
歯科医にとっては、診断を確認するのに、あるいは検知が難しい問題を見逃さないようにするのにAIテクノロジーに頼ることができる。また、保険会社が大量のデンタル画像を迅速に処理するのにOverjetが役立つかもしれない。現在、主要保険会社に送られるすべてのクラウンが人の手によってレビューされていて「それはなかなりコストがかかる」とイナム氏は指摘した。
もし保険請求が正当なもので詐欺でなければ、AIはより正確にそして迅速に判断できるかもしれない。
もちろん、患者にもメリットがある。デンタルクリニックでの体験を思い返してほしい。歯の治療や処置に関して、あなたはどれくらいコントロールできるだろうか。正直なところ、さほどコントロールできない。このため、歯科医が収入を増やそうと必要でない治療をするチャンスが生まれる。もしOverjetがシステム詐欺を根絶できれば、患者にとって良い治療につながる。
成長について
スタートアップとの話では、そのテックがどれくらい良いものなのかをとらえるのは難しい。Overjetの場合、ほぼ不可能だ。しかしもし同社のテックが考えているように機能すれば、狙っているマーケットで急成長することができるだろう。当面は、事業成長というレンズを通して同社のテクノロジーの質を調べる必要がある。
「Overjetはレントゲン写真が複数枚あっても、分析した請求ごとに保険会社に課金する。歯科医はSaaSモデルに基づいて支払う」とイナム氏は話した。
同氏によると、Overjetは現在20人ほどのスタッフ抱え、今年さらに増やす。今年同社がどれくらいの新規顧客を獲得できるのか、そしてどれくらい早く売上高を増やせるのか、筆者はかなり関心を持っている。次回Overjetに話を聞く時に明らかになるだろう。
画像クレジット: Michael Browning / Unsplash under a license. (Image has been modified)
[原文へ]
(翻訳:Mizoguchi)
- Original:https://jp.techcrunch.com/2020/06/04/2020-06-02-overjet-raises-7-85m-for-its-dental-focused-ai-tech/
- Source:TechCrunch Japan
- Author:Alex Wilhelm
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