香港在住の山根博士が伝える一足先の未来リビングでも5Gが使える生活ってどんな感じ?

3月末から日本でも始まった5Gサービスにまだピンと来ていない人も多いだろう。外出自粛期間が長かったことに加え使える場所がほとんどないからだ。ところが4月に5Gを開始した香港では繁華街でも自宅でもサービスが使える、快適な高速環境を提供しているのだ。
香港でも5Gサービスが始まった。

外出先でも動画を楽しく視聴
YouTubeもZoomも快適アクセス

5Gサービスの一番の特徴は“ギガビット”の超高速通信だ。スマホで使われている4Gでは実質200M(メガ)bpsから400Mbps、ギガにすると0.2G(ギガ)bpsから0.4Gbps程度しか速度が出ない。bpsとはビット・パー・セカンドの略。すなわち1秒間に流れるデータの速度を表す。5Gでは4Gをはるかに超える1Gbpsの速度を出すことができるのだ。実際に筆者が日本のドコモで試したところ、1Gbpsの壁を楽々と超えることができた。とはいえ、現在日本で5Gが使えるエリアは数十か所。日本では街中を歩きながら5Gの高速通信をスマホで使うことはできないのだ。

日本のドコモショップで試した5G。使える場所がわずかしかないのが難点だ。

筆者が居住する香港には4つの通信キャリアがあり、3社が4月1日から、残りの1社が5月26日から5Gサービスを開始した。筆者は4月末に日本から香港に戻り、14日間の外出禁止・自宅待機期間を過ごしたのちに、真っ先に行ったのが5Gの契約だ。スマホで動画を見ることの多い筆者にとって、5Gを使えば移動中でも快適に動画を視聴できる。

5月10日に契約したキャリアは香港内でも5Gエリアが一番広い中国移動香港。月々の料金は299香港ドル(約4200円)で100GB使える。5G時代はもはや無料利用データの単位が100GBなのだ。しかも6月末まではボーナスで200GBも無料で利用できる。筆者の香港の自宅は諸事情により光回線が無いが、これだけ使えれば動画をいくら見ても容量は減らないだろう。

5月10日に契約を行った中国移動香港。

それでは5Gの実力はどれくらいだろうか? 香港の繁華街の1つ、チムサーチョイにあるバックパッカー御用達の安宿が集まるチョンキンマンションの前にてスピードテストを行ってみたところ、下り速度は600Mbps台、上り速度は100Mbps台だった。4Gに切り替えると下りは早くても80Mbps、上りは20Mbps程度だったから5Gの速度は下りで8倍、上りで5倍程度速いということになる。

試しにYouTubeを視聴してみると、まるでスマホの中に動画が保存されているかのように高画質で表示され、時間を先送りしても即座に再生される。5Gの速度はクラウドに保存されている動画をあたかもスマホ本体、すなわちローカルにあるように扱うことができるわけだ。

チョンキンマンション前で下り600Mbps、上り100Mbps以上を計測。

なお、5Gのスマホはファーウェイの「P40」を購入した。ファーウェイの最新スマホはアメリカの経済制裁により、グーグルサービスが搭載されていない。しかしファーウェイが提供するアプリストアにようやくLINEが登場、他のSNSサービスはブラウザを使うことでなんとかカバーできる。そもそも筆者は常時複数台のスマホを持っているので、普段はP40のテザリングをONにして、他のスマホからP40経由で5Gにアクセスするようにしている。

5Gスマホはファーウェイ「P40」を購入。

室内でも高速ネット接続
スマホの使い方が変化

筆者はこれまでに韓国、アメリカ、イギリス、スペインそして日本で5Gを試したことがある。世界で1番最初にスマホ向け5Gサービスを開始した韓国では、首都ソウルでもサービスエリアはほぼ屋外であり、室内や地下鉄内で5Gを利用することはできなかった。現在各国で展開されている5Gは4Gより高い周波数の電波を使うため、障害物に弱く屋外に設置したアンテナからの電波が室内に入りにくいのだ。

高層ビルが立ち並ぶ香港だけに、ソウルと同じように室内で5Gが使えることはできないものとあきらめていた。ところがファーウェイP40を自宅に持ち帰り、ふとアンテナレベルのところを見ると「5G」の表示がされている。筆者の部屋は窓に面しているのだが、外からの5Gの電波をつかんでいるのだ。速度は下りで300Mpbs、上りは20Mbpsと屋外より劣るものの、4Gではその1/10程度だったため自宅のネット環境が劇的に改善された。

室内でも快適なネットアクセスができる。

5月中は日本が外出自粛中だったこともあり、筆者は香港から数多くのオンライン会議や飲み会に参加したり、自らライブ配信も多数行った。4Gスマホしか家に無かったころはYouTubeのライブ配信中に電波感度が悪くなり、かなり画質の悪い映像しか放送することができなかった。ところがノートPCと5GスマホP40をテザリングでつないで5G回線を使って配信を行うと、きれいな映像を途切れることなく送信することができたのだ。動画ストリーミングが快適にできるとなると、Zoom、Skype、StreamYardなど片っ端から配信系アプリを使うようになった。5GによりスマホやPCの使い方が大きく変わったのだ。

P40の5G回線を使って他のスマホからZoomすることも増えた。

そうなると家族や友人とスマホを使って通話するときも、音声よりビデオを使うことが増えた。自宅にいるためスマホのスピーカーから相手の声が大きく聞こえても周りに迷惑になることは無い。ビデオなら最近買ったものを見せ合うことも簡単だ。気が付けば1時間近くビデオ通話することも日常になった。

さらにこちらの映像に背景を付けようと、クロマキー合成を使った配信もするようになった。青や緑の背景を背に自分を写し、その背景の色を抜いて写真を合成するのだ。クロマキー合成は一昔前なら大掛かりなスイッチャーを使う必要があったが、今ではOBSなどの配信ソフトを使えばPCの画面内で簡単に合成もできる。

クロマキー合成もOBSソフトと青や緑の背景あがあれば簡単にできる。

Zoomは標準でこの機能を持っているが、他のアプリでも背景を買ってくればOBSで画像合成ができるのだ。たまたま立ち寄ったIKEAに売っていた緑色のひざ掛け毛布「ODDHILD」を使ってみたところ、簡易的にクロマキー合成を行うこともできた。このODDHILDはわずか799円で日本でも売られている。クロマキー合成の入門用にお勧めだ。

799円のODDHILDはクロマキー合成の簡易背景になる。

日本ではUQのWiMaxサービスなど4G回線を使った家庭向けのデータ通信サービスがあり、それを使っている人もいるだろう。現状の速度に不満を感じることはあまりないかもしれない。しかし1度5Gの速度に慣れてしまうと、もう4Gには戻れないと感じてしまう。筆者は香港で2つのキャリアと契約しており、メインで使っているSmarToneのスマホが4Gでデータ定額契約のためPCからの通信にも活用しているが、中国移動香港の5Gに接続してしまうと4Gでは動画を見たりファイルをアップロードしようと思えなくなるほどなのだ。中国移動は200GB、300GBのプランも用意しているため、早くもそちらに乗り換えようと考えてしまったほどである。

5G契約を「おかわり」
メイン回線も5Gに変更

5月10日から香港で使い始めた5Gサービスの虜にあっという間になってしまった筆者。データ利用量を増やした上のプランに変更するか悩んでいたところ、メイン回線キャリアのSmarToneが5月26日に5Gをようやく開始してくれた。喜んで当日契約したかったものの、「中国移動香港の5Gのデータ量を引き上げ、SmarToneは4Gながらも使い放題なので残しておこうか」とも悩んだ。5月中の自宅でのデータ利用量を概算すると約200GB。香港の5Gサービスはまだ使い放題が無いため、4Gの使い放題を残しておいたほうが安心だ。

最後に5Gサービスを開始したSmarTone。

しかしSmarToneのサービス内容を見ると、5Gに乗り換えない理由がないほど充実していた。先行3社に約2か月遅れてサービスインすることもあって、料金はうまく考えられているのだ。まず基本料金は398香港ドル(約5600円)と中国移動香港より高いが、無料で利用できる100GBが余ったときは、翌月どころか2年契約の最終月まで繰り越しができるのだ。つまり今月50GBしかつかわなければ、翌月は150GBが使える。その翌月も50GBしか使わなかったときは、翌々月に100GBが繰り越されて200GBが使えるのだ。ただし繰り越しできるのは最大500GBまでである。

ならば中国移動とSmarTone、2社の5G契約を併用することにして、中国移動の100GBを使い切ったらSmarToneの100GBを使う、ということにすればうまくいく。2社で合計200GBは自分の1か月の利用量相当だ。

さて、スマホはサムスンの「Galaxy S20 Ultra」を購入。契約割引で2100香港ドル、約3万円も割引を受けることができた。とはいえ、実は毎月のように中国で5Gスマホが発売されていることもあり、シャオミの「Mi 10 青春版 5G」というモデルを購入している。そこでGalaxy S20 Ultraはしばしテスト用に使うこととして、1か月後には譲渡する条件で購入したのだった。

1億800万画素カメラを搭載する「Galaxy S20 Ultra」。

こうして筆者の香港の通信環境は5Gを2回線という贅沢なものになった。毎月の半分以上を海外出張に費やしてきた筆者だが、新型コロナウィルスの影響によりしばらくは香港を出ることもできそうにない。香港に長く滞在せざるを得ない状況になったタイミングに合わせ、5Gサービスが始まったのは不幸中の幸いと言えるのかもしれない。今後5Gスマホを使うことでどのように生活が変わっていくのか、実際に体験できることが楽しみだ。


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