イギリスが世界に誇る名車、ミニが世に送り出されたのは1959年。今から60年以上前のことです。大人4人が乗れる小型車の開発を目指したブリティッシュ・モーター・コーポレーション(BMC)は、同社の技術者であるアレック・イシゴニスの元でミニを誕生させました。
[関連記事]世界が愛した“ちっちゃいクルマ”「クラシックMINI」の変遷を振り返る
日本でのミニ人気は長く続きますが、1970年代以降は世界的に見ると販売台数が低迷。ミニの製造を行っていたローバーは1994年にBMW傘下に入ります。そして2001年にBMWのブランドとして現代につながる新しいミニが登場。日本では2002年3月2日(ミニの日)に販売がスタートしました。
2001年当時、クラシックミニを愛するファンからは「こんな大きなクルマはミニじゃない」「乗り味がBMWそのもの」などいろいろなことを言われました。しかしBMWミニは着実にファンを増やし続け、今や日本でもっとも売れている輸入モデルとなっています。BMWミニに乗る人の中には、クラシックミニを知らない人もいるかもしれないですね。
そんな新生ミニもデビューから20年近い歴史の中で、いろいろなバリエーションが登場しています。
■クラシックミニをリスペクトした初代BMWミニ
2001年の東京モーターショーで日本仕様が発表され、2002年から販売がスタートした初代ミニ。グレードはベーシックなミニワン、上級グレードのミニクーパー、そしてスポーツ性を高めたミニクーパーSが設定されました。搭載エンジンは1.6Lで、クーパーSはスーパーチャージャーを搭載。トランスミッションはワンとクーパーがCVTと5MT、クーパーSは6MTになります。
また、初代ミニは全幅が1690mmで日本の5ナンバーに収まるサイズに。そのため、扱いやすいサイズ感のクルマが欲しいという人からも支持されました。ミニの登場前後でフォルクスワーゲン ニュービートルやフィアット500など、過去の人気車のデザインを踏襲したモデルが登場しました。その中でもミニの注目度は抜きん出ていました。
2004年9月にはミニコンバーチブルが登場。一時クラシックミニにも設定されたミニカブリオレの面影を残した本モデルの幌は、わずか15秒で開閉できる電動タイプに。オープン時は幌がリアシート背後に収まりトノカバーを必要としない画期的なデザインになっていました。
もちろん、乗車人数はミニと同様に4人乗り。また、幌を開けた状態でも荷室は最小限しか犠牲にならない設計に。ミニ同様、コンバーチブルもワン、クーパー、クーパーSの3グレードが設定されました。
■2代目でラインナップを拡充
2代目ミニは2006年に発表され、日本では2007年2月から発売されました。全長は初代より少し長くなったものの、全幅は初代とほぼ変わらず、日本の5ナンバーサイズに収まっています。
デザインもぱっと見で初代とどこが変わったかわからないほど、クラシックミニのイメージを踏襲しました。でも上下に分割されたフロントグリルやフロントライトに内蔵されたウインカーなど、細部に違いが見て取れます。クーパーSには最高出力128kW(175ps)を発生する新開発の1.6Lエンジンが採用。また、ハッチバックのフルモデルチェンジ時点でコンバーチブルは初代が継続販売されていて、日本では2009年4月にフルモデルチェンジされました。
2代目では、現在でも人気が高い新たなミニがラインナップに加わっています。それがミニクラブマンとミニクロスオーバーです。
ミニクラブマンはベースのミニから全長が240mm、ホイールベースが80mm延長されたエステートモデルで、後部座席と荷室が広げられています。初代クラブマンは運転席ドア(右側ドア)の後ろに観音開きのドアがついていて、後部座席へのアクセスが高められています。また、リアのドアは左右に開く観音開きになっています。
ミニクロスオーバーは、ミニ初のクロスオーバーSUVであると同時に、初めての4ドアモデルとなります。全幅はミニより105mm広い1790mm、全高はミニより120mm高い1550mm。クロスオーバー車としては小型ですが、ミニとして見るとかなり大きい! しかし4ドアの利便性やSUVブームの流れの中で、ヒットモデルとなっています。
ミニというブランドがすごいのは、ボディサイズや形状が違ういろいろなモデルがラインナップに加わっても、それぞれがきちんと“ミニらしさ”を持ち合わせていること。BMWはクラシックミニをリスペクトし、そのデザインを細かく方程式に落とし込んでいると言います。そのためどんな形になっても、ちゃんと“ミニ”に見えるのです。
■3代目でついに5ドアハッチバックが登場
2014年4月から日本での発売がスタートした3代目となる現行型ミニ。全幅が1725mmに拡大されて3ナンバーとなりましたが、ミニらしさは健在! そして現行型ミニで驚かされたのは、2014年10月に5ドアモデルが追加されたことです。愛らしいミニに利便性が加わったことで多くの人が選びやすくなり、これが現在の“日本で最も選ばれている輸入車”という地位につながります。
搭載エンジンはクーパーが1.5L直3ターボ、クーパーSには2L直4ターボ。7月に追加されたワンには1.2L直3ターボが搭載されました。トランスミッションは6MTと6ATになります。2016年4月には1.5L直3ディーゼルターボ、2L直4ディーゼルターボを追加。2018年5月には6ATが7速DCTに変更されました。
ミニクラブマンは2015年11月に新世代へとフルモデルチェンジ。片側観音開きだったリアドアが両側ヒンジ式に変わったことで利便性が大幅にアップ。ミニクロスオーバーは2017年2月にフルモデルチェンジが行われました。クロスオーバーにはコンパクトSUV初となるプラグインハイブリッドも用意されています。
■過激な走りを楽しみたいならジョン・クーパー・ワークス!
クラシックミニのスポーツモデルであるクーパーの生みの親で、モンテカルロラリーで活躍したジョン・クーパーの名を冠したジョン・クーパー・ワークス(JCW)。
最初は2005年にクーパSとクーパーSコンバーチブルのMT車用にJCWチューニング・キットが登場し、2008年にミニのサブブランドという位置づけで最高出力155kW、最大トルク260N・mを発生する1.6L直4ターボエンジンを搭載。発売時は6MTのみの設定になるなど、硬派なモデルでした。
現在はミニハッチバックの3ドア、コンバーチブル、クラブマン、クロスオーバーにJCWが設定されています。
■人とは違うミニに乗りたいならレアな派生モデルを
第2世代のミニには、わずか数年しか製造されなかったレアなバリエーションが存在していたのを覚えているでしょうか。
新車時のセールスが伸び悩んだモデルですが、多くのミニが街を走る中で絶版となったモデルは逆に目立つこと間違いなしです!
▼ミニ クーペ
ミニシリーズ初の3ボックススタイルで、初の2シーターモデルとなったミニクーペ。全高をハッチバックより50mmも低くし、リアには80km/h以上になると自動で上昇するアクティブ・リア・スポイラーを装着。
グレードはクーパー、クーパーS、ジョンクーパー ワークスが用意され、2011年9月から2015年11月まで発売されていました。中古車は30台程度流通しています。
▼ミニ ロードスター
ミニクーペのオープンバージョンとなるロードスター。ソフトトップは軽量化のために手動式ですが、2シーターで運転席のすぐ後ろに格納されるため、簡単に開閉できます。クーペ同様にアクティブ・リア・スポイラーが装着されています。
グレードもクーペ同様にクーパー、クーパーS、ジョンクーパー ワークスを用意。発売期間は2012年1月から2015年11月。中古車流通量は10台以下という希少モデルです。
▼ミニ ペースマン
ペースマンはミニクロスオーバーをベースにクーペのような美しいデザインが与えられたコンパクトSUVです。クロスオーバーが5ドアなのに対してペースマンは3ドア、ルーフラインは後ろに向かってなだらかに傾斜する独特のデザインに。
室内はラウンジコンセプトと呼ばれる大人4人がゆったりくつろげる空間に。後部座席はベンチシートではなくキャプテンシートとなっています。発売期間は2013年3月から2016年8月で、中古車は30台程度流通しています。
高橋 満|求人誌、中古車雑誌の編集部を経て、1999年からフリーの編集者/ライターとして活動。自動車、音楽、アウトドアなどジャンルを問わず執筆。人物インタビューも得意としている。コンテンツ制作会社「ブリッジマン」の代表として、さまざまな企業のPRも担当。
- Original:https://www.goodspress.jp/features/302371/
- Source:&GP
- Author:&GP
Amazonベストセラー
Now loading...