テック業界におけるダイバーシティの未来(5)ーートンネルの出口に見える光

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トンネルの出口に見える光

大手テック企業が抱える問題はあまりにも根が深いが、スタートアップにはまだ望みがある。社員数がある一定数に達すると、根本的な変化を起こすことは難しい。しかし、創業初日から始めれば、首尾よく遂行できる可能性は十分にある。

パオ氏、クライン氏、Baker(ベイカー)氏、Tracy Chou(トレイシー・チョウ)氏が中心となって設立したプロジェクト・インクルードは、一度に数社と連携して、インクルーシブで包括的、かつ説明責任を果たせる方法でダイバーシティを推進する支援を提供している。

「より進歩的で成功を収める人が十分な数に達すれば、テック業界の本質が変わる可能性がある」とパオ氏は言う。

非営利団体であるプロジェクト・インクルードは、テック業界でダイバーシティとインクルージョンを実現しようとする人たちにとって頼りになる存在だ。このプロジェクトは小~中規模のスタートアップを対象としている。社員数にして25~1000人の規模だ。

「プロジェクト・インクルードを通して、本当に変わろうとしているスタートアップを何社か見てきたが、この新しい世代のスタートアップには、会社をインクルーシブにすることに全力を注いでいるCEOが何人もいると思う。彼らは、将来のことを真剣に考えていて、世界が変わりつつあり、従業員も本当に多種多様であることに気づいている。白人男性社員だけに目を向けていると、残りの4分の3の社員を失うこともわかっており、それが持続可能ではないこと、そのような状況を許せば自分が極めて不利な立場に置かれることを理解していると思う」とパオ氏は語る。

「Asana(アサナ)のDustin Moskovitz(ダスティン・モスコビツ)CEOやTwilio(トゥイリオ)のJeff Lawson(ジェフ・ローソン)CEOなど、ダイバーシティとインクルージョンを会社にとって必須の課題として扱おうとしている人たちを見ると安心する」とパオ氏は言う。

「彼らがこの問題に全力で時間とエネルギーを注いでいるのを見ると心強い。偏見のないインクルーシブな文化を持つ企業は業績も良好であることが数字にも表れている。変化は確かに起きている。ゼロから始める人たちは変わることができる」」とパオ氏は語る。

米国では今、白人多数の時代が終わりつつある。

ケイパー・クライン氏によると、「人口動態の変化は止まらない」という。

アメリカ国勢調査によると、米国では、2044年までには白人が全人口の半分を下回り、マイノリティーの合計が過半数を占める国になると思われる。

こうして人口動態がシフトしてクリティカルマスに達すれば、労働力の多様化は避けて通れない。

「クリティカルマスは社会科学では昔からある概念だが、最近その真実さを身にしみて感じるようになってきた。我々は皆、クリティカルマスを感じたことがある。自分と同じ意見を持つ人が部屋の中に誰もいない場合、自分ひとりだけで意見を言うことには不安を感じる。しかし、自分と同じ考えの人が(それが誰であれ)十分にいれば随分と楽に声を上げることができる、ということは誰もが理解できると思う」ケイパー・クライン氏は語る。

クリティカルマスは、人によって解釈が異なるが、おおむね10~30%の範囲だと思われる。これをテック業界に当てはめると、ダイバーシティとインクルージョンが自律的に実践されるようになるには、業界の30%が多様化している必要があるということになる。

「クリティカルマスに達すると、それが部門内のチームであれ、特に会社内あるいはエコシステム内のチームであれ、文化のシフトが急速に進む。そこに達成するまでの長い道のりを、一歩ずつ前に進んでいると信じたい。ときに希望に満ち、ときに失望させられることもあるが、クリティカルマスに至るまで確実に前進し続けたいと思う」とケイパー・クライン氏は語る。

目の前の課題

クリティカルマスへと歩みを進める一方で、緊急に取り組むべき課題もある。具体的には次のとおりだ。

  • 多様性を反映させたレプリゼンテーションとインクルージョンに関する明確な目標を設定し、それを実現するための包括的なアプローチを実施する
  • 有色人種および女性の創業者への出資を増やす
  • 従業員はテック企業による差別に対し、組織的な方法で非難の声を上げ続ける
  • 会社を超えて経営陣が協力し合う

極めて明解な課題だが、取り組むには意思、組織的な取り組み、実務的な努力が必要だ。

「簡単に実現できることはすべてやり切ってしまい、ここからはすべてが困難な作業になるのではないかと思う。なぜかというと、特定のプログラムを支援するとか、実習プログラムを用意するとか、パイプラインの対象とする人のタイプを増やすとかいう問題ではないからだ。これは、他人が提示する価値が自分の意向と一致しない場合もあることを理解できるよう従業員を変革するという、難しい仕事だからだ。ハードルを下げるとか、文化を保持したいとか、従業員が思い込みで発する言葉にじっくり耳を傾けて検討する必要がある。彼らは便秘でもしているかのように古いものにしがみついている。私には理解できない」とマイリー氏は語った。

(完)

日本版編集部注:本稿は米国版TechCrunchが2019年6月に公開した記事を翻訳・再構成したものです。

[原文へ]

(翻訳:Dragonfly)


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