たとえTikTokが最大のマーケットであるインドを失っても、米国で抗い難い困難に直面しても、ByteDance(バイトダンス)はグローバルなテクノロジー会社にとなるという野心を失ってはいない。しかし中国の一部の人々は、北京拠点のByteDanceが米国の要求に応じ過ぎだと非難している。
ByteDanceは降りかかってくるさまざまな困難にも関わらず、8月2日遅くに投稿した声明で「グローバル化した企業になるというビジョンをこれまで通り追求する」と述べた。
米国の議員や世論を動かそうと何カ月も取り組み、TikTokは不本意ながら2つの譲歩に至った。「CFIUS(対米外国投資委員会)によるTikTokの米国事業の強制売却、または米国でのTikTokアプリを禁止する大統領令の可能性に直面した」とByteDanceの創業者でCEOのZhang Yiming(張一鳴、チャン・イーミン)氏は8月3日、従業員に宛てたレターの中で説明した。
TikTokの件は目まぐるしく動いている。この記事の執筆時点で、Microsoft(マイクロソフト)がTikTok買収で米国当局と協議していることを認めている。先にDonald Trump(ドナルド・トランプ)大統領は、米国企業による中国所有のアプリの買収は支持しないと話していた。
中国側では、ByteDanceが「米国でTikTokアプリの提供を続けるための障害を取り除くのをサポートしてくれるテック企業と予備的協議を始めた」と張氏はスタッフに語っていた。このコメントは、TikTokの米国ゼネラルマネジャーであるVanessa Pappas(ヴァネッサ・パパス)氏の、TikTokは「どこかに行くつもりはない」という言葉をフォローするものだ。
張氏はレターの中で不満を堂々と述べた。「CFIUSの結論には同意しない。なぜなら当社は常にユーザーの安全、プラットフォームの中立性、透明性を守ってきたからだ。しかし、現在のマクロ環境の中での彼らの決定は理解する」。
怒れるネット市民
しかしByteDanceの対応は明らかに中国の一部の人の賛成を得ることができなかった。中国の人気ミニブログプラットフォームであるWeibo(新浪微博)では、数百人もの匿名ユーザーが張氏のレターについて投稿し、同氏を「売国奴」「米国擁護者」「臆病者」などとなじった。
「意見が一方通行の中国と違って、議論が許される米国を称賛するのに張一鳴は慣れている。そして今、彼は平手をくらった。彼はなぜ米国と議論しないのか」。この厳しい批判には3600以上の「いいね」がついた。
2010年初めからの張氏のWeibo投稿に言及するコメンテーターも現れた。それらの投稿はリベラルに偏っていて、こうした投稿によって同氏は「パブリックインテレクチュアル(公的な知識人)」ランキング入りした、と一部の人には映っている。インターネット愛国者はそうした人々を無知で西洋価値の崇拝者とみなし、「パブリックインテレクチュアル」は近年、軽蔑的な言葉として考えられている。
「中国人ソーシャルメディアユーザーの一般的な見方は、今回の件は米国・中国貿易戦争の一環としてのしっぺ返し策であるというものだ。またTikTokが成功し、Facebook(フェイスブック)やTwitter(ツイッター)といった米国プラットフォームにとって脅威となっているために、こうした事態になったと考えている」とAppInChinaのCEOであるRich Bishop(リッチ・ビショップ)氏は話した。同社は海外のアプリやゲームの中国でのリリースをサポートしている。
張氏のWeiboアカウントは現在一時凍結されている。これはおそらく、怒った愛国者たちが張氏の投稿に流れ込むのを防ぐためだろう。
オンライン上での感情がどれくらい中国社会を代表するものなのか、あるいはそうした動向が政府が雇ったコメンテーターによる操作なのかを見極めるのは難しい。インターネット上の怒りに比べると、中国政府は比較的、状況を甘受している。外務省の報道官は定例会見でTikTokに対する米国の主張を「いちゃもん」をつけていると否定した(CGTN記事)にすぎない(米政府はまだTikTokが国家保障の脅威であるという主張を支える確たる証拠を示していない)。
結局、中国で大々的に事業を展開している米国インターネット大企業が少ないため、中国政府はそれほど報復措置を取れない。
業界からは同情
中国のスタートアップや投資家はByteDanceに対して同情的だ。もしマイクロソフトによる買収案が進めば、TikTokにとっては最悪の結果とはならないかもしれないと考えている。
「彼らは動きが取れない」とSOSVが支援するクロスボーダーのアクセラレーターでChinacceleratorのゼネラルパートナーであるWilliam Bao Bean(ウィリアム・バオ・ビーン)氏は話した。「規則が急変する状況にある。消費者はおそらくTikTokを利用し続けたいはずで、マイクロソフトによる買収は使用継続を可能にする1つの方法だ。しかしByteDanceが真に望むものだとは思わない」。
AppInChinaのビショップ氏は、マイクロソフトの中国政府に対する対立的でない態度を指摘した。「どちらのサイドにとってもいい結果だと思う。もちろんマイクロソフトはTikTok買収でかなり恩恵を受ける。ByteDanceはそれなりの対価を受け取る。同社と中国政府はマイクロソフトに対して割に友好的だ」。
テック業界は、TikTokが珍しい存在であることをよく知っている。対抗措置は中国企業の米国進出、おそらく他の欧米マーケットへの進出にも萎縮効果をもたらすが、そもそも中国から欧米諸国に進出するインターネット企業はそう多くはない。
「中国のために構築されたソリューションのほとんどは、西洋諸国で人々が抱える問題を解決しない」とバオ・ビーン氏は述べた。
WeChatの親会社Tencent(テンセント)が示しているように、積極的な買収と数多くのヒット作で中国のゲームはおそらく西洋諸国で最も受け入れられているものだ。小規模のデベロッパーは、中国の企業であることを「表に出さない」戦略に頼っている。
米国に上場しているとある中国インターネット企業のCEOは「我々はメディアのインタビューを受けないようにしている」と匿名を条件に語った。
「問題は萎縮効果ではなく米国、カナダ、オーストラリア、インドなどで機会を失うことだ。ヨーロッパで成功するチャンスもまた小さくなり、リスクは増大している」と匿名希望のCEOは述べた。
「これから世界に出ようとする中国企業が目を向けられるのは東南アジア、アフリカ、南米だけになる」。
画像クレジット:DuKai photographer / Getty Images
- Original:https://jp.techcrunch.com/2020/08/04/2020-08-03-chinese-netizens-criticize-bytedance-ceo/
- Source:TechCrunch Japan
- Author:Rita Liao
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