スイッチひとつで形を変えて硬化する「ロボット・ファブリック」をイェール大が開発

ソフトロボティクスと呼ばれるロボット研究の分野がある。強度的、構造的な面で適度な柔らかさを備えたロボットを作ろうという、まだ始まったばかりの分野だ。

米国イェール大学は、柔らかい布をスイッチひとつで1000倍の堅さにすることに成功。形状記憶合金と組み合わせて「ロボット・ファブリック」を開発し、ソフトロボティクスの分野に革新的な一歩をもたらした。

わずかな熱で液化する特殊金属を織り込む

フィールズ・メタル(Field’s metal)という特殊な金属がある。近年開発された合金で、62℃という低温で液化するのが特徴だ。

イェール大学の研究者は、このフィールズ・メタルの分子を含んだエポキシ樹脂で、繊維を作ることに成功した。出来上がった繊維で織った布は、62℃以上に温めるとラテックス(合成ゴム)程度の柔らかさになり、62度以下の常温に戻すと硬質アクリルほどの堅さになる。両者の堅さは1000倍ほども違うそうだ。布には電熱線が通してあり、それのオン/オフで温度を変化させる。

形状記憶合金との組み合わせ

研究者は、この布を実用的なものにするために、さらに形状記憶合金と組み合わせた。温度によって形を変える形状記憶合金のワイヤーを「骨」として布に縫い込んだのだ。

こうすると、例えば常温で布がくしゃくしゃに丸められていても、温度を上げれば柔らかくなり、同時に形状記憶合金の「骨」が決められた形に復元する。それから常温に戻せば、布全体が形を保ったまま硬質アクリルの堅さになるわけだ。

形状記憶合金と組み合わせたこの布を、イェール大学は「ロボット・ファブリック(robotic fabric)」と名付けている。

今のところ、自動的に展開する避難用のテントや、医療用の絞圧器(止血に用いる)などへの応用が考えられている。具体的な形にはなっていないが、人の身体機能を何らかの形で補う衣服を作れる可能性もあるようだ。

Yale SCHOOL OF ENGINEERING & APPLIED SCIENCE


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