非常用持ち出し袋に入れる保存食を食べ比べたら思いのほか美味しかった

<&GP編集部員が買ってみた!使ってみた!>

ここ数年、地震だけでなく台風や豪雨で甚大な被害が出ているため、しっかりと備えを考えておかなきゃと思っていたところに、住んでいるエリアで異臭騒ぎ。何が原因かは分かりませんが、万が一に備え、非常用のアイテムを見直すことにしました。

非常用のアイテムといっても自宅に備蓄するものは比較的揃っているので、今回は中途半端に作っていた非常用持ち出しリュックの中身を点検。確認すると、まったく用意していないものがありました。

それが食料。熱源は入れてあるのに、保存食がまるで抜けていたのです。

そこで今回、長期保存が可能な保存食を購入。試食の意味合いも込めて食べ比べ、その上で、改めて非常用持ち出し用リュックを作りました。

■選びの基準は非常時に持ち出すこと

今回、ECサイトで購入したのは尾西食品の「アルファ米12種全部セット」(3385円)、同「長期保存対応 携帯おにぎり 鮭・五目おこわ・わかめ 3個×3種アソート」(1720円)、サタケ「マジックライス9種とマジックパスタ3個の4日分 12種セット」(3300円)の3種類。

選んだ基準は、主食であること、軽いこと、水で作れること、バリエーションが豊富なことの4点です。

非常時を考えるとオカズよりも、食事として成立する主食。長期化すると栄養バランスのことも考えなければいけませんが、まずは3日をしのぐという点に注力しました。

次に重さ。リュックに入れて持ち運ぶことを考えると、少しでも軽い方が背負った時の負担も減るし、食料品で同じ重さになるなら多めに持てるというメリットがあります。

3つめが水で作れること。リュックには熱源を入れていますが、できればいざという時のために使用は控えたいもの。なので、水を入れれば出来上がるものを選びました。

最後がバリエーションが豊富なこと。味がひとつだけだとすぐに飽きてしまいます。毎食飽きずに食べられるよう、いろいろなバリエーションがあるものをセレクト。

ついでにいうと、非常用の缶詰やパン、ようかんは以前試食したことがあるので、保存食で食べたことのないジャンルというのもあります。

■5年の常温保存が可能な保存食

アルファ米といえば、草分けである尾西食品。日本国内では初の宇宙食として、2007年にアルファ米の4種類「白飯」「赤飯」「山菜おこわ」「おにぎり鮭」が認証されたほど。そもそもアルファ米とは、一度炊いたご飯をアルファ(糊)化させたあと、乾燥させたご飯。これに熱湯や水を入れることで復元し、食べられるようになるものです。

▲尾西食品「アルファ米12種全部セット」

今回購入したのは定番の「アルファ米12種全部セット」。本来は、白飯、五目ごはん、わかめごはん、田舎ごはん、松茸ごはん、赤飯、山菜おこわ、白がゆ、梅がゆ、ドライカレー、チキンライス、えびピラフの12種類が入っているようですが、えびピラフの代わりに松茸ごはんが2個入っていました。重量はトータルで1.3 kg。

▲尾西食品「長期保存対応 携帯おにぎり 鮭・五目おこわ・わかめ 3個×3種アソート」

尾西食品からは、もうひとつ「おにぎりシリーズ」を購入。鮭、五目おこわ、ワカメの3種類×3アソートで、重量は387g。手を汚さず食べられるので、衛生的です。

▲サタケ「マジックライス9種とマジックパスタ3個の4日分 12種セット」

そして1社だけでは味比べができないのでサタケ「マジックライス 保存食シリーズ」も用意。サタケマジックライス9種(白米、五目ご飯、わかめご飯、根菜ご飯、梅じゃこご飯、青菜ご飯、パエリア風ご飯、ドライカレー)と、パスタ3種(ペペロンチーノ、カルボナーラ、きのこのパスタ)の4日分12種セットで、重量は1.4 kg。尾西食品のそれに比べ、洋風が多く、パスタがラインナップされているのも特徴です。

いずれも5年の常温保存が可能で、27品目(一部商品は28品目)のアレルギー物質(特定原材料等)を使用していません。

■水でもお湯でもOK! 時間はかかるが作り方は簡単

まずは基本の尾西食品「白米」を、水で作ってみました。

封を切り、中からスプーンと乾燥剤を取り出し、水160mlを入れます。内側に水を入れる線が描かれているので、計量カップがなくても大丈夫! 水を入れたら、よくかき混ぜて待ちます。よくかき混ぜてとありますが、どういう状態になればいいのか分からないので、とりあえず30回かき混ぜてみました。

熱湯なら15分で作れますが、最初なのでお湯ではなく、水で実践。非常時には熱源が確保できるか分からないので、待ち時間が60分もかかるとはいえ、水で作れるのはありがたいですね。しかもスプーンがついているのは嬉しい配慮。手元にカトラリーがなくても食べられるので安心です。

▲写真は自前のスプーン。付属のカトラリーはプラスチック製

実食タイム! 箸ですくうとポロポロするくらいパサパサで芯が残ってるけど、ちゃんとご飯。多少はにおいがするものの気になるほどではないし、水で作るのはどうなの? と思ったけど、よく考えたらおにぎりも冷えたご飯だから違和感はありません。さすがに「美味しい!」とまではいきませんが、想像以上で普通に食べられました。

ただ、白米だけで食べるとなるとさすがに寂しく、ご飯のお供やカレー、味噌汁などがあれば箸が進みます。

続いて、サタケマジックライスの「白米」。作り方は尾西食品のものとほぼ一緒ですが、注水量を変えれば、ごはんとしても、おかゆとしても作れるのが特徴です。

こちらはお湯でご飯を作ってみました。赤色の注水線までお湯を注いでかき混ぜたのですが、浸水スピードが早いのか、かき混ぜた後にはお湯が注水線よりも下になります。足した方がいいのか? とも思いましたが、注水の線なので、追加せずにそのまま15分。こちらもよく混ぜますと書かれていますが、「よく」の定義(回数なのか、状態なのか)がよく分からないので、同様に30回混ぜました。

レトルトの白米のようにもっちり感はなく、パサついていますが普通に食べられます。おかゆにしたらもっと粘度が高まり、パサパサ感が減るのかもしれません。

ただ白米は単体では食べにくく、もう一品が必要となるなので、非常用持ち出し袋に入れるのはやめました。

■味つきご飯はパサつき感を軽減してくれる

次に味つきの、尾西食品「松茸ごはん」とサタケ「ドライカレー」を試食。

松茸ごはんは、具に松茸と人参、ごぼう、油揚げが入ってしっかりと食感が残り、美味しく食べられます。しっとりとしているわけではありませんが、味がついているからか、ご飯自体のパサつき感が白米よりも軽減されてるように感じました。保存食として5年持って、この軽さと手軽さでこの味なら申し分ないと思います。

一方のドライカレーは、調味粉末が別についており、スパイスを入れてから湯を入れます。湯量が少なかったのか若干しょっぱかったものの、スパイスの香りを感じられました。具には玉ねぎ、いんげん、コーン、人参、パセリが、スパイスはターメリック、ガーリック、クミン、コリアンダーが入っています。

味が濃く、できあがり容量が260g(茶碗軽く2杯分)なので、1人で食べると飽きるかもしれません。

■作り方が独特のおにぎりと味に変化がつくパスタ

そして最後に、作り方がほかと若干異なる尾西食品の「鮭おにぎり」と、アルファ米ではないサタケの「カルボナーラ」を試してみました。

▲表にあるシールをめくると注水線が見える

鮭おにぎりは、握らなくてもおにぎりの形になるのが特徴。手が汚れていても、食べられるメリットがあります。作り方は、お湯か水を注水線(約67ml)まで入れ、袋のチャックを閉めたら、20回程度振り混ぜます。お湯なら15分、水なら60分待ち、食べる前に袋の切り口を2カ所切れば完成です。

▲ほかと比べて作業工程は多い。内部は、おにぎりが三角形になるような袋形状になっている

三角形状を作るために袋が真ん中あたりで狭くなっているので、乾燥剤が取り出しにくいのと、作業工程が多いのが難点。

ちょっと大きめで、ちゃんと形になっている鮭おにぎり。握っているわけではないのでボロボロするのは仕方ないですが、しっかりと味がついていて、十分美味しくいただけます。

カルボナーラは、熱湯または水を注水線まで入れ、ブロックソースが溶けるまでよく混ぜます。チャックを閉め、熱湯の場合は3分、水の場合は20分待てば完成です。せっかく食べるなら温かい方がいいので熱湯で実食しましたが、さすがにできるのが早い。

カルボナーラというよりはもっと汁っ気のある、カルボナーラ風味のクリームソース。濃いめですが普通にある味で、問題なく食べられます。中身はパスタではなくマカロニで、ソースがよく絡み、良くいえば噛みごたえのある食感です。

今回、6種類を試食しましたが、いずれも想像以上で、変な言い方ですが“普通に”食べられる美味しさ。ただ持ち出すことを考えた場合、疲れると塩分が欲しくなるというので濃い味付けの洋風か、喉が乾かなそうな薄味の和食にするか悩みました。

結果、非常用持ち出し袋に入れるのは、食べ慣れている和食のタイプを入れることに決定!

■非常用持ち出しリュックを作った

非常用持ち出し袋に入れることにしたのは、家族3人で以下の12食。尾西食品「田舎ごはん」「田舎おこわ」「五目ごはん」「わかめごはん」「松茸ごはん」「携帯おにぎり 五目おこわ」「携帯おにぎり 鮭ごはん」「携帯おにぎり わかめ」。サタケ マジックライス「五目ご飯」「わかめご飯」「青菜ご飯」「梅じゃこご飯」。

実際にこの数を入れられるか、非常用持ち出しリュックを改めて作ってみました。

■情報が多すぎて何を入れるか迷う

以前は情報が少なく何を入れたらいいのかが分かりませんでしたが、今は逆に情報が多すぎて迷います。住んでいる県が発表している非常用持ち出し品のリストはだいたい以下のようなもの。

1.リュックサック 2.非常食 3.ベットボトル入り飲料水 4.懐中電灯 5.ろうそく 6.ライター 7.携帯ラジオ 8.万能はさみ 9.軍手 10.ロープ 11.毛抜き 12.消毒液 13.脱脂綿 14.ガーゼ 15.絆創膏 16.包帯 17.三角巾(バンダナ、手ぬぐい) 18.マスク 19.常備薬・持病薬 20.レジャーシート 21.サバイバルブランケット 22.簡易トイレ 23.タオル(2枚) 24.ポリ袋(大小5枚) 25.トイレットペーパー 26.ウェットティッシュ 27.現金(10円玉×25枚) 28.ガムテープ(布製) 29.油性マジック(太字) 30.筆記用具(メモ帳、油性ボールペン)

これをベースに揃えてみました。ただ一次持出品と二次持出品はきっちり分けられないので混ざっています。

【上段左から】ソーラーランタン、クッカー、浄水器、トイレットペーパー、防災テープ、カイロ、水のいらないシャンプー、下にネックウォーマー、ウォーターバッグ。【2段目左から】から、エスビット(固形燃料+台)、ライター、カトラリー、油性ペン、ウエットティッシュ、サバイバルブランケット。【3段目左から】マルチツール、ロープ、手袋。【4段目左から】クッション、上に(15年持つ単3形乾電池、15年持つ単4形乾電池、AC電源付きポータブル電源、変換ケーブル、ヘッドライト、コンセント)、ラジオ、軍手、救急キット、吸水タオル、非常用圧縮セット。【5段目左から】携帯トイレ、歯磨きテッシュ、布マスク、除菌ジェル

保存食と用意したアイテムを全部入れるとこうなります。パンパンですが、背負って苦になる重さではありません。

ただし、詰めてわかった課題もあります。

1つめが水。よく1日1人3リットルともいわれますが、自宅ならまだしも、その半分の量だとしても、500ml×3本×3人×3日で13.5リットル。これを持ち運ぶのは現実的ではない気がします(歩く前提で)。あるに越したことはないですが、どれだけ持っていくかは悩みどころです。

水を減らす想定で浄水器とウォーターバッグを入れました。水を入手できるかはともかく、課題の2つめが、この浄水器。使ったことがないので、いざという時に使えるように練習が必要です。

3つめが、作る余裕があるか分からないので、水も要らない食べものはやはり用意しておいた方がいいと思いました。4つめが、今回入れていないレインウエアやアウター、タオルなどはどうするか。5つめが、家族全員が同じ中身にモノを持つのか、それともマザーバッグとほかのバッグとで入れるものを変えた方がいいのか。6つめが、サイズと数。大きいものしか手に入らなかったり、数をどれだけ揃えたらいいのか分からなかったりしたので、内容物を変更する必要があります。

※  ※  ※

異臭騒ぎをきっかけに防災グッズを見直しましたが、まだまだブラッシュアップの必要性があります。また、入れておくだけでなく、使いこなせるようにする、中身を見直す、どこに置くかも大事だということも再認識。

保存食の美味しさだけでなく意外な気づきが色々あった今回。飲料と寒さ対策も考えながら、今後はより軽く、自分の家族に適した仕様にしていきたいと思います。

>>尾西食品

>>サタケ「マジックライス 保存食シリーズ」

<写真・文/澤村尚徳(&GP)>

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