今、必要なのは、情報との“ソーシャル・ディスタンス”
「新型コロナウイルスの蔓延を機に、ソーシャルディスタンスという言葉が使われるようになりましたが、今はソーシャル“ネット”ディスタンスがあってもいい時代だと考えています。たとえばSNS上にあふれるバッシングのコメントもそうですし、かつてイーライ・パリサーが生み出した“フィルターバブル”という言葉どおり、今私たちが見ている情報の大半はパーソナライズされていて、もはや自分が見たい情報しか見えなくなっている。世界の分断は進み、フェイクニュースも多い。こうした状況を見ると、ネットの情報を大量接種する前に一旦距離を置いたほうがいいのではと思います」
このように語るのは、IoTプロダクトやサービス、ソフトウェア、データ解析技術を開発するヴェルトの代表取締役CEO野々上 仁氏。同社初のプロダクトとなった腕時計スタイルのデバイス『VELDT SERENDIPITY(ヴェルト セレンディピティ)』が誕生したのは2014年のこと。それから6年が経ったが、当時、野々上氏が想像していたよりも、情報のバイアス化は加速しているという。
「本来、ネットは新しい情報にアクセスするための自由なツールであったはずなのですが、そうではない部分の進化が速かった。目に入る情報には消費や“いいね”が促され、気がつけば快適にコントロールされている感じです。それも否定しませんが、ヴェルトでは違った答えがあって良いと思っています。弊社ではビッグデータを用いたレコメンデーション的な使い方ではなく、個人のデータをあくまでも自分自身のために使えるようなデータサイエンスに舵を切っています。そして弊社のスマートウォッチは、ネットとうまく付き合いながらも自分自身の時間やリアルな世界を大切にするコンセプトを形にしたものです」
あふれる情報に対する危機意識から誕生したヴェルト
2012年、野々上氏はネクスト・スマートフォン時代における豊かなネット社会を提案するためにヴェルトを設立した。同社がビジョンに掲げたのは「ライフ・テック・リバランス」。それはネットのマイナス面をリバランスし、テクノロジーをリアルな生活と世界のために機能させること。あふれ返る情報やフィルタリングされた情報から少し離れて、大切なものにフォーカスすること。自分・社会・地球環境にとって最適な選択をしながら、思いがけない発見に満ちた時間を過ごすことだ。
「現在もそのコンセプトは変わっていません。最初に発表した『VELDT SERENDIPITY』は、ダイアルに小さなディスプレイを付けてテロップのようにメッセージを表示させていたのですが、2017年に発表した『VELDT LUXTURE』ではこのディスプレイをなくしました。情報の浸透圧を下げる──つまり、直接的な情報の伝え方をやめ、大事な情報は光で確認できるようにして、さらに光と腕時計の質感を融合させるようにしたのです」
そして、リアルな世界に目を向けるために組み合わせるのが、独自のアプリケーション機能だ。
「テクノロジーをリアルな世界で役立てることが弊社のテーマです。ですので、まずは日々着けてもらえるような質感やデザインの時計を展開していることが、ヴェルトと普通のスマートウォッチとの大きな違いです。またテーマに沿った独自機能を揃えていることも違いでしょう。例えば、地球温暖化に対して私たちにできることは何か? その答えのひとつが、地球温暖化や環境の情報を見える化して身近にお届けすることでした。ヴェルトは自社スマートウォッチ製品に地球温暖化の影響、自然環境を身近に感じられる機能を搭載しています。例えば10年前と今日の地球の平均気温やCO2濃度を比較する機能、指定場所の大気汚染を知る機能など。温暖化について日々感じることで一人一人の消費や行動の選択が少しだけ地球環境にプラスに動けば、いずれ大きな力になる可能性があります」
所有する満足感を高める『VELDT LUXTURE Model IG』
その最新モデルとなるのが、2020年に登場した『VELDT LUXTURE Model IG』だ。デザイン・インスピレーションの源泉となったのは、現在、温暖化による融解が危惧されている氷山。環境問題に対するメッセージを込めながらも、クールかつエレガントな雰囲気に仕上げた、VELDTらしいコネクテッド・ウォッチだ。
VELDT
VELDT LUXTURE Model IG
9万6800円
情報の浸透圧を下げるべくデザインされたこのモデルには、ディスプレイが存在しない。ダイアルの外周から漏れる色とりどりの光によって、ユーザーに必要な情報を報せる仕組みだ。『VELDT LUXTURE』のアプリには、Eメールや電話、Facebook、Instagram、LINEなどの通知(Notification)をはじめ、天気予報や月齢、波の高さ、さらには二酸化炭素レベルや空気質指数などの機能をプリセット。
また、ヴェルトとシチズン時計との共同開発によるプラットフォーム「Riiiver (リィイバー)」を利用することで、他のメンバーが公開した機能をダウンロードして使えるようになる。こうした機能を、2時位置または4時位置のプッシュボタンで簡単に使用でき、ユーザーだけにしか分からない光の動きで必要な情報を取得できるのは実にスマートと言えるだろう。
一方でヴェルトは、最初のプロダクトを発表して以来、絶えず「腕時計としての価値の向上」を追求し、それは『VELDT LUXTURE Model IG』でもしっかりと継承している。ケースの12時位置と6時位置には「VELDT BEAK(ヴェルト ビーク)」と呼ばれるくちばし状のデザインを採用。この意匠はステンレススチール製ブレスレットの中駒にも用いられているが、これがVELDTのアイコンとなり、他のスマートウォッチはもちろん、腕時計としてもオリジナリティーを放っている。
38mmのケース径は腕にちょうどよく収まり、スモールサイズが注目される現在においては、とりわけ着用しやすいサイズと言えるだろう。その一方でインデックスは大きくレイアウトされ、時分針も着色されているので時刻の判読性は十分。ベゼルには100までの目盛りが記されているが、これはスマートフォンからの情報をパーセンテージで表示する機能。上品にまとめるだけではなく、時計としても、コネクテッド・ウォッチとしても実用的なデザインに仕上げているのが『VELDT LUXTURE』の真骨頂だ。
Riiiver×VELDT LUXTUREで広げるニューノーマル時代のライフスタイル
『VELDT LUXTURE』は実用性、デザインともに多くのスマートウォッチとは一線を画す仕上がりだが、その利便性をより高めてくれるのが、前述した「Riiiver」の存在だ。
「2015年にシチズン時計の方とお会いしたとき、『いい“時”を作れるような仕組みを生み出したい』という話になったんです。画面のなかに閉じ込めるのではなく、また、自分たちが押し付けて価値を作るのでもない。ユーザーが好きなものをセレクトし、それがスマートウォッチの機能になればいいというものです」
「Riiiver」はデバイスを起点にして、人、モノ、ことを有機的に結びつけるサービス。メンバーはきっかけとなる「トリガー」、連動させたい「サービス」、動作を起こす「アクション」という3つのPiece(ピース)を組み合わせて自由に機能(iiidea/アィイデア)を作成し、公開することができる──こう説明すると、つかみどころのない壮大な内容に感じてしまうが、野々上氏は「“その人にとっての大事なこと”が見つけられるプラットフォーム」だという。
「たとえば私はプロ野球好きなので、
あふれかえる情報をシャットアウトするのではなく、適切な距離に修正し、なおかつ自分にとって大事な情報を取得することで経験の“きっかけ”にもなり得る──『VELDT LUXTURE』は、僕らと情報とを“心地よい関係”に結びつけてくれる、オンリーワンのプロダクトだ。
- Original:https://www.digimonostation.jp/0000131671/
- Source:デジモノステーション
- Author:竹石祐三
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