Appleが、Apple Watchで血圧測定を可能にする新たな特許を、米国特許商標庁(USPTO)に申請したことが明らかになりました。今回の特許をもとにした実製品が登場した場合、腕を圧迫するカフ(空気袋)を用いることなく、Apple Watchを装着しているだけで睡眠中も含め、連続的に血圧を計測することが可能になると期待されます。Appleは既に、Apple Watchのバンドにカフを内蔵して血圧測定を行う特許も申請済みです。
Apple Watchでの血圧測定を実現する2つの特許
USPTOが2020年11月26日付けで公開したAppleの特許申請は、Apple Watchを使用した血圧測定に関するものです。
連続的な血圧測定で、無自覚の高血圧症状も発見できる?
申請された特許は、「生体電気信号を用いた脈波の到達時間(PTT:Pulse Transmit Time)による血圧測定」というもので、上腕をカフ(空気袋)で圧迫して拡張期と収縮期の血圧を測定する既存の方法(オシロメトリック法)とは異なるものです。
この測定方法では、カフによる腕の圧迫を行わないので、ユーザーが睡眠中でも影響を与えることなく連続的な血液測定が可能になると記載されています。
特許に記載された方法は、手首に装着した電圧測定センサーを用いて左心室の血液駆出を検出、そこから脈波がApple Watchを装着した手首に到達するまでの時間を測定し、PTTによる血圧値の算出に結びつけようとするものです。
本特許に記された、Apple Watchによる連続的な血圧測定が可能になった場合、病院の診察では見つけにくい隠れ高血圧である、早朝高血圧の発見にも繋がることが期待されます。
血圧計を販売するオムロンは、早朝高血圧は心筋梗塞や脳梗塞の発症との関連性が高いとするデータを掲載しています。
PTTによる血圧測定を取り入れたデバイスの特許は取得済み
Appleが2016年9月に申請済みの特許、「手首に装着するデバイスを用いた、血圧モニタリング」には、PTTをもとに算出した血圧測定をウェアラブルデバイスに応用する原理と方法が記載されています。特許内の下記図表には、手首の断面図を用いて、動脈と骨の位置、動脈でPTTを測定するためのセンサー配置が記載されていまます。
医療機器レベルの精度が実現できるか、ウェルネス機能として提供か?
これらの特許をもとにした実製品が登場した場合、Apple Watchを装着しているユーザーでは就寝中でもほぼ連続的に血圧測定が可能になりますので、健康状態のモニタリングに大きく寄与すると期待されます。
しかし、PTTをもとにした血圧測定(血圧算出)結果と、既存のカフを用いた血圧測定結果との間には相関関係が認められるが、より正確な値を得るためには臨床の場でより多くのテストデータを用いて測定誤差を減らす必要があるとの、ピッツバーグ大学と北京大学による共同研究結果をもとにした医学的報告もあります。
ただし、最近になり国内の複数の研究者から、カフレス血圧計測法やPTTによる血圧推定法の有用性が報告され始めていますので、将来が期待できる技術と考えられます。
もし、これらの特許をもとにしたApple Watchでの血圧測定が実現した場合、心電図アプリのようにアメリカ食品医薬品局(FDA:Food and Drug Administration)の認可を取得し、医療用アプリとして提供するのか、血中酸素ウェルネスのように医学的診断に用いず、提供目的はウェルネスのためとし、あくまでも患者自身の健康意識向上のために提供されるのか、現時点では不明です。
また当然ですが、特許を取得したからといって必ずしも製品化されるわけではありません。
一般的なカフを内蔵したApple Watchベルトの特許も取得済み
Appleは、Apple Watchのバンドに小型カフを内蔵して、手首の動脈を圧迫、解除することで拡張期と収縮期の血圧を測定しようとする特許も取得済みであることが報告されています。
オムロンは既に、25ミリ幅の狭いカフを内蔵したウェアラブル血圧計、HeartGuideを販売中です。
HeartGuideで計測した血圧は、専用アプリ、HeartAdvisorを通じて測定結果をiPhoneに保存することが可能です。
SamsungがGalaxy Watch3やGalaxy Watch Active2で提供している血圧測定機能も、一般的なカフを用いた方法です。
ワイヤレス・カフを用いた血圧測定であれば、Withings BPM Connectを用いることで、血圧測定結果をiPhoneに取り込むことが可能でした。
Apple Watchの継続的な、ヘルスケア機能の拡充に期待
アナリストのミンチー・クオ氏は、Apple Watch Series 7は新しい筐体デザインを採用し、ヘルスケア関連機能が拡充されると予想しています。
長年噂される血糖値測定機能の搭載だけではなく、今回特許申請された血圧測定など、Apple Watchに更に多くのヘルスケア機能が搭載されることが期待されます。
Source:USPTO (1), (2) via AppleInsider, Patently Apple, National Center for Biotechnology Information, Samsung(1), (2), Wccftech, 脇浩平氏「カフレス血圧計測法を用いたウェアラブル血圧計測デバイス」, 福島県立医科大学 循環器内科, オムロン(1), (2), (3)
(FT729)
- Original:https://iphone-mania.jp/news-331576/
- Source:iPhone Mania
- Author:iPhone Mania
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