ほとんどの人が、Wish(ウイッシュ)のことを、中国からの安価な小物を販売するサイトとして知っているが、サンフランシスコに拠点を置く創業10年のこの会社が、間近に迫ったIPOを見込んで、一般大衆のためのAmazon(アマゾン)としての自画像を描き始めた。
私たちがここ数カ月の間に情報源から読んだり聞いたりしたことから判断すると、Wishは、1兆ドル(100兆円)規模の巨人アマゾンに対抗する、愛国的な代替選択肢として自分自身をアピールしたいと考えている。米国で推定60%を超える、3カ月分の支出をまかなうのに十分な流動資金を持たない家庭のための、より良い選択肢として自分自身を位置付けたいのだ。そのようなコストを気にする顧客は、Amazonプライムに加入することができず、(少なくともWishの言葉によれば)もしかなり安く買えるなら1週間でも、ときには3週間待つことも厭わない。
公開市場の投資家たちが、そのプレゼンを受け入れるかどうかはすぐにわかるだろう。Wishは米国伊J感12月8日朝、来週にも行われると予想されているIPOで、1株当たり22ドル(約2289円)から24ドル(約2497円)の間で4600万株を販売する計画を発表した。評価額は、個人投資家たちによって最後に割り当てられた112億ドル(約1兆1700億円)の評価額から上がって、最大140億ドル(約1兆4600億円)に達するだろう。
Wishには、公開に向かう物語の中で、楽観的に感じることができるたくさんの理由がある。1つには、明らかに多くの人たちがWishのビジネスに気づき続けている最中だということだ。Sensor Tower(センサー・タワー)によれば、2020年11月のショッピングアプリのダウンロード回数は、アマゾンのダウンロードが600万回、Walmart(ウォルマート)のダウンロードが200万回だったことに比べて、Wishは900万回ダウンロードされている。2019年には、すべての種類のアプリ含む総合順位で、Wishは16番目にダウンロードされたアプリだった。
潜在的な顧客がWishに出会ったら、さらに多くのものを発見するだろう。同社の目論見書によれば、100カ国以上にまたがる月間1億人以上のアクティブユーザーが、50万の加盟店からショッピングをしており、プラットフォーム上では約1億5000万点の商品が販売されているという。
そうした商品の多くは、タトゥーキットからペットの爪切りといったWishが長年に渡って扱ってきた不要不急の小物だが、ペーパータオルや消毒剤のような必需品の割合も増えており、顧客を安定したリピーターにするためにひと役買っている。
初期の頃はほとんど重さのない安価なものばかりに力を入れていた同社にとって、これはちょっとした進化だ。そもそもWishは常に、製品やプラットフォームにマーケティングコストをかけられない中国を中心とした無名ブランドの業者と協力してきた。そうすることで業者たちを、既存の市場の中での共食いを回避しつつ、新しい顧客に無償でリーチできるようにできるからだ。
しかし、各取引に15%の手数料をかけているWishは、ePacketと呼ばれるUSPS(米郵便公社)と中国の間の提携にも大きく依存してきた。これにより、商品が異常に大きくて重くない限り、1ドル(約104円)から2ドル(約208円)で海外の商品を米国に送ることができていた。しかし、それは2020年7月1日(Stamps.com記事)に変更され、新しいUSPSの価格体系の中では、Wishのような企業が商品を出荷するためにはもっと支払うか、またはより高価な商業ネットワークに移動する必要が生じたのだ。
当然のことながら、Wishには複数の予備プランがあった。そのうちの1つは、中国内で顧客の所在地に応じて複数の注文をまとめて梱包し、米国に一括して送り、受け取りが行える専門の場所に届けるやり方だ。
関連して、2019年初めにさかのぼるが、Wishは商品をストックしている米国やヨーロッパの何万もの中小企業と提携を始め、その保管スペースをWishの顧客からのアクセスのために利用し、店舗内でのピックアップが行われるごとに小さな金銭的なボーナスを支払うことを始めた(もしその注文を直接顧客の自宅に届けることができるなら、Wishは店舗のオーナーにさらに多くのボーナスを支払うことになる)。Forbes(フォーブス)によれば、これらのパートナーシップにより、Wishは「安価な流通ネットワークを実質的に一晩で」(Forbes記事)手に入れることができたのだ。
コンビニエンスストア業界を破壊することに失敗したゴリアテ(アマゾン)が、自身のコンビニエンスストアを使って挑戦を行おうとしている中で、このWishの動きは、既存コンビニに対する援護射撃となるという意味でアンチアマゾンの物語の中にうまくフィットしている。
またそれは、アマゾンと比較しても必要資産の少ないモデルだ。Wishは在庫を持たず、飛行機やトラック、倉庫を購入したり維持したりする必要もない。
こうしたことは、対峙する巨人アマゾンに比べれば、まだほんの小さなものに留まっていて利益の出ていないWishにとって、挑戦への妨げにはならない。
同社は緩やかな収益成長を示しているが、その報告書によれば、そのマーケティング費用の一部を原因とする一定の損失(SeekingAlpha記事)も続いている。2019年には、Wishは前年比10%増の19億ドル(約1977億円)の売上を報告したが、同時に1億3600万ドル(約141億5000万円)の純損失も計上した。
同社は世界中の新しい地域に進出を続けているが、いまでも中国を拠点とする業者に大きく依存しているのが現状だ。これに対応するために、過剰在庫や返品された品を処分したかったり、整備済電子機器を販売したかったりというニーズを持つ米国や欧州の大手小売業者たちとの提携が徐々に増え始めているという。「多様化したいと思っています」とCEOのSzulczewski(スルチェフスキー)氏はこの夏、フォーブスに語っている。
Wishは常に品質管理の問題に悩まされてきたが、それもまだ完全には解決していない。実際のところYouTubeには、Wishの商品が実際にはどのようなものなのか、そしてオンラインではどのように買い物客に紹介されているのか、という話題に焦点を当てたチャンネルがある(非常におもしろいものもある)。最後の動画を参照して欲しい。
主にこれは文化の問題だ。たとえば2016年に本記者が主催したイベントで、共同創業者でCEOのピーター・スルチェフスキー氏は、米国の顧客の期待値について中国の業者に学んでもらわなければならないと語っていた。
「中国での消費者の期待値が、大きく異なっているのは事実です」とスルチェフスキー氏は当時説明している。「たとえば赤いセーターを注文して青いセーターが届いても、(中国の消費者は)『仕方ない、次に期待しよう』というような感じになります。中国の消費者にしか販売していない商売をしている業者が多いので、私たちは赤のセーターの在庫がないからといって青のセーターを出荷しても良いということにはならないと教育しなければならないのです」。
Wishは、この意識ギャップを埋めるだけでなく、プラットフォーム上の詐欺行為にも徹底的に取り組んできた。そうした多くの動きの1つとして、Facebook(フェイスブック)の元コミュニティマネージャーを、コミュニティエンゲージメントのディレクターとして雇用した。伝えられるところでは、その仕事は腐ったリンゴを取り除く(Forbes記事)ためにWishのユーザーを組織化することを含むものだという。しかし、悪い経験をして、去っていったWishの買い物客は確かに多いのだ。
当面は、公開市場における多くの投資家が見守り、待つことになるだろう。これまで何年もの間、同社に21億ドル(約2184億円)の資金を提供してきたFormation 8、Third Point Ventures、GGV Capital、Raptor Group、Legend Capital、IDG Capital、DST Global、8VC、137 Ventures、Vika Venturesなどのベンチャーキャピタリストたちも同様だ。
ボストンに拠点を置く Flybridge Capital PartnersのAnna Palmer(アンナ・パーマー)氏は、Wish には出資していないものの、いわゆるコマース 3.0に非常に力を入れている人物だ。彼女はWishがアマゾンの買い物客に対するものとは「異なるユースケースと顧客ニーズに対応している」と考えている。
「たとえばDollar General(ダラー・ジェネラル)やDollar Tree(ダラー・ツリー)といったオフプライスならびにディスカウント市場の力強い小売業たちを見れば、Wishの継続的な成長を期待することができます。特にディスカウント市場は追加の流通コストのためにこれまでオンラインにするのが困難だったのですから」。
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カテゴリー:ネットサービス
タグ:Wish、IPO
画像クレジット:Wish
[原文へ]
(翻訳:sako)
- Original:https://jp.techcrunch.com/2020/12/09/2020-12-08-wish-wants-to-be-the-amazon-for-the-rest-of-us-will-retail-investors-buy-it/
- Source:TechCrunch Japan
- Author:Connie Loizos
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