産業用ドローンメーカーPerceptoが46億円超を調達、Boston DynamicsのSpotと連携

消費者向けのドローンは何年もの間、高価で精密なおもちゃでしかないというイメージから脱することができずにいる。しかし、産業、軍事、エンタープライズの分野においては、無人航空機には確かな需要がある。こうした用途でドローンを製造しているスタートアップ企業が11月24日、大規模な資金調達と、ドローン産業の今後の展望を期待させるパートナーシップを発表した。

ドローンのハードウェアとソフトウェアの両方を手掛けるメーカーであるPercepto(パーセプト)は、シリーズBの資金調達で4500万ドル(約46億5300万円)を集めた。同社のドローンは主に無人の産業用地やその他の作業エリアの監視や解析に使われる。

さらに、Boston Dynamics(ボストン・ダイナミクス)との提携も進めており、同社のイヌ型ロボットSpotと自社のSparrowドローンを一体化し、インフラストラクチャ評価の向上を目指す。Spotの敏捷性が向上すれば評価もさらに上がる可能性がある。

今回の資金調達は戦略的投資家であるKoch Disruptive Technologies(コーク・ディスラプティブ・テクノロジーズ)が主導している。エネルギー、鉱物、化学製品およびその関連分野を扱う大手企業、Koch Industries(コーク・インダストリーズ)の投資部門だ。他にも、State of Mind Ventures(ステート・オブ・マインド・ベンチャーズ)、Atento Capital(アテント・キャピタル)、Summit Peak Investments(サミットピーク・インベストメンツ)、Delek-US(デレクUS)などの新しい投資家も参加している。また、前回から引き続きU.S. Venture Partners(USベンチャーパートナーズ)、Spider Capital(スパイダーキャピタル)、Arkin Holdings(アーキン・ホールディングス)も参加している。Boston Dynamics社とソフトバンクは今回の投資には加わっていない模様。

イスラエルに本拠地を置くPercepto社は、2014年の創業以来7250万ドル(75億円)を調達している。企業価値評価は開示していないが、CEOで創業者のDor Abuhasira(ドア・アブハシーラ)氏は「素晴らしいラウンドだ」と説明している。

同氏はインタビューで「この分野のリーダーになれるほどの支援が得られた」と語っている。同社は約10か国に顧客を抱え、顧客リストにはENEL社、Florida Power and Light(フロリダ・パワー・アンド・ライト)社、Verizon(ベライゾン)社などが名を連ねている。

ドローンメーカーには、ハードウェアの製造に注力するメーカーもあれば、ドローンを正しく安全に動作させるソフトウェアに用意する必要がある解析、コンピュータビジョン、その他の重要なテクノロジーの開発に力を入れているメーカーもある。Percepto社は、すべてを自前で用意しているという点で、私が「アップル・アプローチ」と呼ぶ(アブハシーラ氏もそれを認めている)、垂直統合を採用している。

そのアプローチにはAI、コンピュータビジョン、ナビゲーション、解析の専門家や産業用ハードウェアの分野で優秀な人材を集めてチームを編成していることも含まれるが、テクノロジー業界が軍事投資と密接に関係しているため、いずれもイスラエルが強みを持つ分野である(編集部注:同氏によると、Perceptoは自社でチップを製造せず、Nvidia社から調達している)。

「アップル・アプローチはドローン開発で成功する唯一の方法です」と同氏は言う。「それは、ドローン開発のすべてがまだ複雑すぎるためです。アンドロイド・スタイルのアプローチでは、全体の流れのどこかでほころびが生じてしまいます」。

同社の製品は「ボックスに入ったドローン」として提供される。これは購入後にセットアップがほとんど必要なく動かせることを意味しているが、同時に、その仕組みも表している。ボックスから飛び立ったドローンはデータを収集し、充電のためにボックスに戻り、リアルタイムで集めたデータや、その他のデータを転送する。

ドローンそのものはオンデマンドで動作する。問題を示唆する可能性のある変化を検出するための定期的な監視の他に、エンジニアから情報のリクエストによって飛行してデータを収集することもできる。同社の製品は、Autonomous Site Inspection and Monitoring(自律型現場検査・監視)の略である「AIM」という名前で販売されている。

先週、Amazon(アマゾン)がプライムエア計画を変更するというニュースが飛び込んできたが、これは開発者がたくさんいても、消費者向けのビジネスアプリケーションは、商業的に実現するまでの道のりが多難であることを示している。Percepto社のような企業はそれとは対照的に、完全に無人の環境における飛行とデータ収集に注力している。

同社の製品は、自動化で得られる効率性(とコスト削減)に産業界がより大きな関心を寄せている状況にしっかりと適合している。それは同時に、「デジタルトランスフォーメーション」という昨今のバズフレーズにいかに企業が投資しているかを最もよく表すものとなっている。

コーク・ディスラプティブ・テクノロジーズ社長のChase Koch(チェイス・コーク)氏は声明の中で、「Percepto社のAIMは、多数の産業の数十億ドル規模の問題に対応し、製造現場の管理方法を、IoT、つまりインダストリー4.0時代の方法に変革すると考えています」と述べている。さらに「Percepto社の自律テクノロジーとデータ解析における実績は素晴らしいものであり、同社は未来の遠隔操作センターを実現するという独自の位置に立っていると考えています。Percepto社のチームと提携し、それを実現することを楽しみにしています」と続けている。

Boston Dynamics社とのパートナーシップは次の2つの理由で注目に値する。1つは、自動化された無人の環境で様々なロボティクスハードウェアが連携する方法を示している点、もう1つは、Boston Dynamics社がいかに気を引き締めているかを示している点だ。

後者について、同社は何年にもわたってロボティクスの分野に新しい風を吹き込んできた。特に、でこぼこした地形をものともせず、取っ組み合いをしても倒れない、俊敏で頑丈なイヌ型ロボット(「Spot」や「Big Dog」など)が有名である。

2013年、Googleはこの技術に注目し、秘密の研究開発計画の一部として同社を買収した。しかし、そこからビジネスは生まれなかった。また、既にこの技術がパワフルすぎるとみなされていたタイミングで、Googleに複雑な見通しをもたらしたと思われる。その後、2017年にソフトバンクが同社および他のロボティクスアセットの買収を発表した。この買収でも実際にはまだ何ら成果が挙げられていないようであるが、今月になってまたHyundai(ヒュンダイ)による買収計画が報じられている。

サードパーティとのパートナーシップが次々と進んでいることは、Boston Dynamicsの大規模なR&D投資が事業による配当でやっと回収できる可能性があることを強く示している。

確かにPerceptoのアプローチは垂直統合型であるが、長期的、また全般的には、産業用の物理的の用途に合わせた「つながる」スマートハードウェアを構築する様々な企業間で相互運用性やコラボレーションを高めるための議論が必要である。

これは、特定の産業が必要な機器や専門技術に集中して取り組めると同時に、業界最高クラスとみなされるハードウェアとソフトウェアでその取り組みを補完できることを意味する。アブハシーラ氏は、Boston Dynamicsとのパートナーシップに続き、今後多くの企業とパートナーシップを築くことを期待していると述べている。

これは興味深い最初の例になる。パートナーシップにより、SpotにPerceptoのドローンが搭載され、高解像度の画像とサーマルビジョンを撮影し、「AIMから送られたデータにより、マシンや導体の高温部、プラントでの水漏れや蒸気漏れ、性能が低下している機器などの問題を検出する」ことが期待される。また、飛行中に撮影した映像以上に詳細な映像も得られる。さらに、将来的には、連携したデバイスから得られたデータを基に、Spot(またはおそらく第三の自律型ハードウェア)で修理やその他の支援を実行できるかもしれない。

Boston Dynamicsのビジネス開発担当VP、Michael Perry(マイケル・ペリー)氏は声明で、「PerceptoのSparrowドローンとSpotの連携は、固有の遠隔検査ソリューションになります。このパートナーシップは、ロボットとのコラボレーションを利用する価値と、危険な作業や遠隔作業を伴う産業にロボティクスがもたらす作業員の安全性とコスト削減という素晴らしいメリットを示すものです」と述べている。

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カテゴリー:ドローン
タグ:資金調達

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(翻訳:Dragonfly)


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