世界中の猫と飼い主が一秒でも長く一緒にいられるように、猫の生活をテクノロジーで見守る。
そんなミッションのもとに開発されたのが、猫専用スマートペンダント「Catlog」。バイオロギング解析技術と機械学習を用いて、猫の行動を記録するデバイスだ。記録されたデータは、外出先でもスマホで確認できる。
同プロダクトを開発した株式会社RABOでは、CEO(代表取締役)ならぬ「CCO(Chief “Cat” Officer)」を設置。オフィスも猫のことを考えたデザインにして、人間は土足禁止という徹底ぶりだ。さらに、社員は猫のことを「猫様」と呼んでいる……。
猫への愛あふれる会社が作る、猫のためのプロダクト。そこにどのようなこだわりがあったのか、開発担当の大谷氏に話を聞いた。
猫の行動をすべて把握するために
ーーCatlogには「バイオロギング解析技術」が使われているとのことですが、これは一体何なのでしょうか?
大谷:動物の行動を分析するときには、24時間録画したり、付け回したり、常に観察している必要があります。でも自然界で生きている、例えばクジラとかって、ずっと付いていくことができないですよね。
バイオロギングというのは元々、そういった追跡できない海洋生物にセンサーを装着して生態行動を調査する研究手法のことなんです。
ーーCatlogではこれがどのように使われているんですか?
大谷:Catlogのペンダント部分に小さなセンサーが埋め込まれていて、そこで3軸方向の加速度を取得しています。
その後機械学習を用いて、取得したデータを実際の行動と照らし合わせてラベリングします。これにより、次に同じような波形を計測したとき、それがどのような行動だったのかを判別することができるんです。
ーー機械学習で猫の行動の「モデル」を作るのはかなり難しいんじゃないですか?
大谷:そうなんです。「猫」といってもいろんな「猫」がいますし、同じ猫でも年齢によって行動は異なります。現在は、そんな個性的な猫様たちに共通している要素を抽出し、横断的な「モデル」として行動分類を行っています。
今後はそれを、それぞれの猫様に合わせたモデルに進化させていくことがひとつの目標ですね。先日、「食事の記録」に関して、ユーザー様にフィードバックとして判定してもらう機能を追加しましたが、こういった機能開発は今後も進めていきたい思っています。
ーー判定精度を高めるために、ということですね。
大谷:はい、あとは判定する行動のラベルを増やすというのも課題です。
本当はもっと多くの行動、できるかぎりすべての行動を判別できるようにしたいのですが、現状のプロダクトでは自信のあるものだけに絞っています。
ここは日々アップデートしていかなければいけない部分でして、社内でも一番力を入れています。
「飼い主のために」よりも「猫様のために」
ーーCatlogでは、ペンダントデバイスをサポートするための「Home」というプロダクトもありますよね。なぜ「Home」の機能をペンダントに統合しなかったのでしょうか?
大谷:これは「猫様のため」を考えて、ペンダント部分をできるだけ軽くしたかったからです。
やろうと思えば、データ受信機能やGPS機能も搭載することができますが、そうするとその分ハードウェアが必要なので重くなります。なのでペンダントには「3軸方向の加速度計測」という機能だけを載せて、それ以外の機能はHomeに搭載することにしたんです。
「それくらい別にいいじゃないか」と思うかもしれませんが、平均約4kgという猫様にとっては、たった1gでもかなりの負担になります。
いまCatlogのペンダントは約9g。これって10円玉2枚分くらいの重さなんですが、4kgの猫様に対して比率で0.23%くらいなんですね。一方、68kgの成人男性に対する、一般的なスマートフォンの重量比率って0.19%くらいなんです。
そう考えると、まだまだ重いなと思っています。
ーーなるほど。「飼い主のために」よりも「猫様のために」という思いが強いというわけですね。ちなみに大谷さんも猫がお好きなんですか?
大谷:いや、ぼく自身は特に……。飼ったこともないですし。
ーーあっ、そういう方もいらっしゃるんですね! ではなぜCatlogチームに加わったんですか?
大谷:前職はメルカリでエンジニアをやっていたんですが、そのときの知り合いから紹介されたのがきっかけです。
もともと、今までになかったものをつくって世の中にインパクトを与えたいという思いがありまして、この事業ならその夢の実現を目指せるな、と。Catlogは言語が関係ないので世界でも戦えますしね。
念のためお伝えしますが、もちろん「猫」が嫌いというわけではありませんよ!(笑)
ーーでは大谷さんはCatlogの開発において、あるいはもっと広義での「開発」において、何を大事にしているのでしょうか?
大谷:うーん……ぼくはあんまりこだわりがある人間ではないんですが、強いていうなら「スピード」ですかね。
開発者って色んなタイプがいるんです。じっくり丁寧につくる人もいれば、技術的に難しいものを好む人もいます。でもぼくは何よりも、プロダクトを早く1歩でも前に進めたいという思いで開発しています。
ユーザーが増えることでそのユーザーがまた別のユーザーを連れてきて……結果的にサービスの価値を高める「ネットワーク効果」というものがあります。ぼくはその最初のユーザー獲得に最も重要なのがスピードだと思っているんです。
もちろん質をおろそかにしてはいけませんが、会社のためにも、ユーザーのためにも、そして猫様のためにも、できるだけ早くプロダクトを提供することを意識して、これからも開発を進めていきたいと思います。
- Original:https://techable.jp/archives/144767
- Source:Techable(テッカブル) -海外・国内のネットベンチャー系ニュースサイト
- Author:Techable編集部
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