UCLAの研究者たちが、警察の活動や大量投獄(現在、米国は世界的に見ても際立って多い投獄者を抱えている)に関連する膨大な資料を収集し、文脈とともにデジタルアーカイブとして保存するために、365万ドル(約3億8000万円)の助成金を獲得した。それは歴史家や人類学者の役に立つものになるだろう、だがもっと根本的な意義は、多くの人が忘れてしまうような時代を、それが徹底的に文書化するということだ。
この「Archiving the Age of Mass incarceration(大量投獄時代をアーカイブする)」プロジェクトを率いるのは、UCLAのアフリカンアメリカン研究所であるBunche Center(バンチ・センター)のディレクターであり、ロサンゼルスにおける投獄の人的コストの文書化プロジェクトであるMillion Dollar Hoods(ミリオン・ダラー・フード)の創始者でもあるKelly Lytle Hernandez(ケリー・ライトル・ヘルナンデス)氏だ。助成金はAndrew W. Mellon(アンドリュー・W・メロン)財団から提供される。
ライトル・ヘルナンデス氏は、私に対して、波乱万丈だったが変革の可能性を見せた2020年を引き合いに出しながら「私たちは、米国の歴史の転換点にいるのでしょう。おそらく新しいものを構築している最中なのです」と語った。「もし私たちが何が起きたのかの記録を本気で残していきたいとするのなら、私たちがするべきことは、大量投獄の影響を受けた人たちの記録、記憶、体験そして可能ならばそのままでは破棄されてしまう国家の記録を残しておくことなのです」。
学生たちの多くがもうすぐ卒業します。そのうちの1人はハーバードのPhD課程に進学します。他の学生もロースクールに進学して研究員を続けます。全員が何かをなしとげてくれるでしょう。私たちは単に投獄の記録を行っているのではありません。リーダーを育成しているのです。
このコレクションの核となるのは、情報一般開示とコミュニケーションに関する2019年の合意の一部として、LAPD(ロサンゼルス市警察)がライトル・ヘルナンデス氏に開示した一連の文書である (合意が行われたのはヘルナンデス氏がMacArthur奨学金を得た直後だ)。彼女によれば、それは1980年代から2000年代初頭までの「麻薬戦争」、移民の取り締まり、その他多くのトピックを詳述した177箱分の紙の記録だという。また当局との合意に基づき、さらに多くの文書が提供される予定だ。
彼女がいうには、こうした公文書を、反対側からの文書や証言に対置することで「釣り合いをとる」ことがプロジェクトの目的だという。
「不釣り合いな罪で投獄されたり逮捕されたりしている人たちがいます。 私たちはしばしば立ち退きによって記録を失うことがあります、記録を保管していた場所の家賃を払うことができず、差し押さえられてしまう場合もあります。そして逮捕されたときにそうしたものが差し押さえられてしまうことなどもあります」と彼女は説明する。「何世代にもわたる損害を元に戻す必要があるとすれば、その損害はもともとどこで起こったのでしょうか?それは誰に起こったのでしょうか?私はこのアーカイブプロジェクトをそうした解明作業の一部だと思っています」。
今後数年間、ライトル・ヘルナンデス氏は、紙文書のスキャンや索引づけといった従来型の作業に加えて地域社会を訪問し、保釈金の領収書(司法制度との接触を記録した唯一の品かもしれない)のような収監関係のペラ紙ものや、個人的な話やメディアを収集するといった取り組みを、アーカイブの構築に向けて率いていく予定だ。
警察や州の機関から記録を取得することは困難であり、時には法的または政治的な緊張をともなうプロセスだ。できるだけ多くの情報を、できるだけ多くの情報源から、できるだけ迅速に入手することが重要だと彼女はいう。これまでの人種差別解消の歴史における大きな転換点は、怠慢もしくは故意の両方の理由から、十分に文書化されていない。
「もし国家が、口述歴史家やその学生の一群を送り出して、そうした記録を収集保存していたとしたら?想像してみて下さい。もし奴隷制を経験した人々と話をできていたとしたら、私たちは奴隷制とその犠牲について何を知ることができたのか、そしてそれがこの国を作る上で何を意味していたのかということを。そして過去の記録と取り組み、そこから離れて行くため役に立つ、どのようなアーカイブが残され得たのかということを想像してほしいのです」とライトル・ヘルナンデス氏は語る。「でも、私たちが十分な仕事をしていなかったために、奴隷制度の多くの記録は忘れ去られてしまいました。ネイティブアメリカンの強制移住問題、戦時中の抑留問題、移民問題も同じことです」。
現在、LAだけではなく全国各地に大量投獄の時代に対して行えることがあるのだと、彼女は注意深く指摘した。それだけではなく、たとえば公民権運動の時には不可能だったやり方で、現代の技術を駆使することができるのだ。
彼女はMillion Dollar Hoodでの経験から、偽のデータによって裏打ちされて来た人種差別主義者や階級主義者の政策によって、歴史的に差別されたり標的にされたりしてきた地域社会の中に、状況を逆転させることに対する真剣な関心があることを知っている。
「私たちが会議を開くと、データ分析やデータサイエンスを学びたい黒色や褐色の肌の学生たちが、部屋に詰めかけて廊下にまであふれているのです」と彼女はいう。「そのドアを開放することもこのプロジェクトの一部です。最も影響を受けた人をその会議室に連れてくると、学生たちのデータの見方が変わり、異なるストーリーを見るようになってくるのです」。
アーカイブは完全に公開される予定だが、どのような文書が含まれるのか、どのように分類され、記述されるのかなどに関する正確な範囲はまだ検討中だ。その詳細がどうであれ、このアーカイブは、ライトル・ヘルナンデス氏が期待する変化が始まるにつれて、今後数十年にわたって学生、研究者、そして好奇心旺盛な一般の人々にとってかけがえのない貴重なものとなることは間違いないだろう。
カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:UCLA、犯罪
画像クレジット:Joseph C. Justice Jr.
[原文へ]
(文:Devin Coldewey、翻訳:sako)
- Original:https://jp.techcrunch.com/2021/01/30/2021-01-28-ucla-is-building-a-digital-archive-of-mass-incarceration-with-a-new-3-6m-grant/
- Source:TechCrunch Japan
- Author:Devin Coldewey,sako
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