Tesla(テスラ)によるBitcoin(ビットコイン)へ15億ドル(約1570億円)分の購入は、Elon Musk(イーロン・マスク)氏にはいいだろうが、彼を世界一の大富豪に仕立て上げた会社には、間違いなく大きなリスクだと投資家、アナリスト、米最大手クラスの銀行の資産管理担当者たちは訴えている。
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一般消費者向け電気自動車(EV)業界と、その周囲に集結する広範な気候テック運動の旗手であるTeslaが、仮想通貨に社運を賭けるとなれば、環境重視の姿勢と、たとえ他の自動車メーカーがEV市場になだれ込んで来ている中でも保たれていた顧客からの評判に傷がつく恐れがある。
現在のBitcoinが環境に残した痕跡を考えるに、今回の取り引きは、クリーンなエネルギー源と商慣行へ世界を移行させることに強い関心を表明しているTeslaの顔と矛盾する。
マスク氏の計画について語る許可を取っていないことを理由に匿名で話を聞かせてくれたあるエネルギー系投資家によれば、ロシアや中国などの地域が電力網の脱酸素化に踏み出さない限り、Bitcoinのマイニングは(エネルギーの観点からは)ダーティーなビジネスのままだという。
「2018年にロシアで行われていたことです。マイニング事業のために彼らがどれほど石炭エネルギーを使っていたかが問題なのです」と同投資家は語る。「エネルギー強度の観点から見た取り引きあたりのコストは、高くなる一方です。そこから気候問題と仮想通貨がどんな結合体になっていくのか、私には読めません」。
今回の購入で、Teslaは世界最大のBitcoin保有企業となったが、これは同社が保有する190億ドル(約1兆9900億円)の現金と、手元の現金に相当するもののうち、大きな部分を占める。
「その資産の額を考えると、私個人の意見として無責任なように思われます」と、創設当初からTeslaを支援してきた投資会社の投資家は話す。今回のTeslaの行動は、現代の投資環境における米国の資本市場の愚かしい一面を露呈している。そしてこれは、最大の受益者たちからの内に秘めた皮肉ともとれる。
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その一方で、Bitcoinの投資家たちはこの動きを歓迎している。これにより彼らが保有するBitcoinの価値は、その日のうちにおよそ18%も急騰した。
「Bitcoinを加えることで資産を多様化したというTeslaの発表は、特に驚きではなく、手元現金の8%の配分で安心できたというものでもありませんでした。2020年のTeslaの研究開発費と同額のこの投資は、同社にとって極めて大きなものであり、株主への配当を最大化するという決意の表れです」とStillmark(スティルマーク)の共同創設者Alyse Killeen(アリス・カイリーン)氏は書いている。「イーロン・マスク氏には、技術的に可能なものを、後に経営上ごく普通のものにする流れを作るという原則で、企業を運営してきた長い経歴があります。それがここにも当てはまり、Teslaは大手上場企業としては初めて、現金のリターンをBitcoinで最大化しようと考えたのだと思います」。
ウォール街の業界オブザーバーたちは、TeslaのBitcoinへの大きな賭けを批判している。
「TeslaがBTCを15億ドル分購入したことは興味深い。リスク回避をしていないようなので、将来、大量の現金を手にするか、帳簿に大穴を開けるかのどちらかだ。イーロン・マスク氏はいつだってワイルドだ」と、報道の取材に答える権限を持たないため匿名を希望したウォール街の大手銀行で資本計画を担当するある企業幹部はいう。「大手企業が非常に不安定な新興市場の通貨に現金を投資するのと変わらない」。
それでも短期的には、この取り引きは配当金をもたらした。Teslaが発表を行ったその日のうちに、Bitcoinの価格は8000ドル(約84万円)近くまで、18.73%も上昇している。
だが、今回の投資額は、同社の研究開発予算の総額に匹敵するとカイリーン氏は指摘する。大変な額だ。もう1つ疑問がある。規制当局が乗り出してマスク氏にお仕置きをしないか、ということだ。
マスク氏はこの数週間で、Bitcoinや、ドージコインなどのその他の謎めいた(つまり役に立たない)仮想通貨を支持するとツイートしていた。これは、米連邦証券取引委員会(SEC)との合意に違反するように思われる。
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この世界一の大富豪は、以前、そのツイート癖のために規制当局から罰金を科せられたことがあった。2018年、1株420ドル(約4400円)でTeslaを非上場企業にするとのツイートを詐欺だとしてSECに訴えられたのだ。
その後マスク氏はSECと和解し、Tesla取締役会の会長を辞任して、個人的に2000万ドル(約21億円)の罰金を支払った。
不安定な仮想通貨はTeslaの収益にインパクトを与えるだけではない。仮想通貨でクルマを購入しようとする消費者にも影響をおよぼす。
「Bitcoinは米国時間2月8日には15%も高騰して4万4000ドル(約460万円)という高値を更新した。このような誇大広告で価格が変動する通貨は、投資家にとっても消費者にとっても心配なものです。特に、これが交換媒体に使われるとなればなおさらです」と、GlobalData(グローバルデータ)のアナリストであり主題調査部門責任者のDanyaal Rashid(ダニアル・ラシッド)氏は書いている。
「もしイーロン・マスク氏が、そのアセットの価格をツイートや大量注文で自在に操れるとしたら、同じことが価格の引き下げにも使えることを意味します。クルマを購入するという行為は、投機的であってはなりません。不換通貨の代わりにBitcoinで買い物をしようという消費者は、思いどおりにほしいものが買えなくなる事態が多発するでしょう」。
カテゴリー:モビリティ
タグ:Tesla、Bitcoin、仮想通貨
画像クレジット:TechCrunch
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(文:Jonathan Shieber、翻訳:金井哲夫)
- Original:https://jp.techcrunch.com/2021/02/09/2021-02-08-teslas-bitcoin-investment-could-be-bad-for-the-companys-climate-reputation-and-its-bottom-line/
- Source:TechCrunch Japan
- Author:Jonathan Shieber,tetsuokanai
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