Snapchat(スナップチャット)の初期メンバーで「Our Story」機能を設計したChloë Drimal(クロエ・ドリマル)氏が、自身のソーシャルアプリ「Yoni Circle(ヨニ・サークル)」を立ち上げた。会員制のコミュニティとして誕生した同アプリは、ライブビデオの他、いつでも聴くことのできる事前録音のストーリーなどを用いたストーリーテリング通してすべてのWomxn(女性)を結びつけることを目指している。
同社は2020年4月よりベータテストをひっそりと行っていたが、公開に向けてついにその姿を現した。
ドリマル氏がソーシャルストーリーテリングアプリのアイデアを思いついたきっかけは、同氏がSnapchatで「Our Story」製品に取り組んでいた際に感じたストーリーテリングの将来性の高さも一部あるという。
「ストーリーテリングが人々を繋げてくれるのを目の当たりにしました。大晦のイベントやメッカへのハッジ巡礼のようなグローバルな経験を目にし、私たちがいかに人としてつながっているのかを肌で感じることができました。ストーリーテリングのおかげでSnapchatユーザーが世界と結びつきを感じることができ、いかにユーザーが影響されているのかを見てとることができました」と同氏は振り返る。
Snapchatで別のプロジェクトに取り組むため、「Our Story」製品の担当から外された際の同氏の個人的な経験も同アプリ誕生の背景にある。キャリアにおいて困難と孤独を感じていた当時、さまざまな女性に相談を求めた同氏。その多くは自らの経験を共有してくれた年上の女性たちだったのだが、彼女らと話をすると自分は思っていたほど孤独ではないことに気づかされたという。
「彼女たちのストーリーは、私が人生の次のステージへと進むための力を与えてくれました。また24、5歳の私がキャリアの終わりだと悲劇的に感じていたのは間違いで、むしろキャリアの始まりにすぎないと気づかされました。ストーリーテリングが持つ癒しの力だけでなく、他人が心を開いてくれた時のすばらしさに気づくことができました」と同氏はいう。
その後Snapchatにて女性に向けた取り組みを運営した後、ドリマル氏はより構造化されたストーリーテリングサークルに焦点を当てた対面式のコミュニティを開始した。このコミュニティが現在のYoni Circleアプリへと進化を遂げ、ベータ版はSnapchatの元エンジニアのAkiva Bamberger(アキヴァ・バンバーガー)氏によって構築された。バンバーガー氏は現在Yoni Circleのアドバイザーとなっている。
現在、同アプリには2つの主要機能が存在する。参加型の「Storytelling Circles(ストーリーテリング・サークル)」とより受動的な「Yoni Radio(ヨニ・ラジオ)」である。
前者では60分間のガイドつきライブビデオチャットに最大6名のメンバーが参加することができ、互いのストーリーを聴き合うことで繋がりを持つというものだ。セッション中には訓練を受けた「Salonniere(サロニエール)」と呼ばれるガイドがセッションの紹介や呼吸法の指導を行い、その後「感謝にまつわるストーリー」や「驚きについてのストーリー」など、特定のテーマに基づいたストーリーテリングへと誘導する。
Salonniereはボランティアではなく、セッションをリードするためのトレーニングを受けた有給の請負業者である。いずれはメンバーを集めてヨガクラスやブッククラブ、料理教室など、ウェブベースの有料イベントを開催する予定だという。
Storytelling Circlesのセッションには、「ストーリーは持ち帰っても、名前は持ち帰るべからず」という基本ルールがある。つまりメンバーが公に共有することを希望しない限り、セッションで共有されたものは部外秘であるということだ。このルールに違反したメンバーはアプリから追放される。
シンプルに話す、エゴを捨てて互いの個性を尊重するといった姿勢もメンバーに求められる要素だ。事前にトピックが知らされることはないため、自身のスピーチを練習したり「パフォーマンス」したりすることもできない。信頼性と正直な心がセッション参加への第一条件ということだ。
セッション中、各参加者は順に自分の話を共有し、そしてその他のメンバーの話を聞く。「トーキングピース」が回ってきた際にのみ話すことができ、他のメンバーのストーリーにはスナップアイコンをクリックすることにより反応することができる。
グループセラピーのような高揚感を体験することもできるが、これらのセッションは心理的な問題の解決に焦点を当てているわけではない。ドリマル氏によると、メンバーたちはこうしたセッションを「パジャマパーティーとマインドフルネスのクラスをかけ合わせたようなもの」と捉えている。
それでもやはり、メンバーの多くは「参加することがセルフケアになる」とも感じているようだ。
「気持ちが軽くなります。他の人の話を聞いて自分と照らし合わせると、自分の人生の良い時期も悪い時期も、これで普通なんだと感じさせられるからです」とドリマル氏。
メンバーは自分のストーリーを録音し、Yoni Circleのプロフィール上で公開したり非公開に設定したりすることもできる。同社のチームが厳選した公開ストーリーは、アプリのホームでハイライトとして共有され、またこれらの公開ストーリーは「Yoni Radio」でもフィーチャーされる。
同社はこれまで録音されたストーリーを試験的に週毎に放送していたが、今後は「本日のストーリー」としてのトライアルを開始していくという。
Yoni Circleのベータ版アプリは、新型コロナウイルスのパンデミックが米国内で始まったばかりの2020年4月に開始した。人々が友達や家族、社会的な関わりから孤立することを余儀なくされたため、新たな社会的体験への需要が高まった。
しかしYoni Circleは、Clubhouse(クラブハウス)やTwitter Spaces(ツイッタースペース)を筆頭とする最近開発されている新たな対話型のモバイル市場とは一線を画しているように見える。
「市場にすでに存在するものとは別の何かを切り開いたと思っています。心が弱くなっている時にも安心して訪れることができる親密な場所を、私たちは作り出しました。ここで共有するようなことは決してClubhouseでは共有できません。そのため、このコミュニティを拡大していく方法に細心の注意を払っています。もちろん何百万人ものメンバーの獲得を目指していますが、非常に慎重になっているのも確かです」とドリマル氏は語る。
現在Yoni Circleは自身を女性と認識するすべての人々に開かれているが、申請時には自己紹介文とこのアプリでの経験に何を求めているかなどを共有しなければならない。長期的な目標は、同プラットフォームを誰にでも開かれた安全な空間へと進化させることである。
パンデミックによりアプリへの関心が高まったこともあり、現在は80カ国1000都市にメンバーが存在する。しかしポストコロナの市場において、同スタートアップは対面式のイベントを開催してメンバー同士をさらに結びつけていきたいと考えている。
Yoni Circleは現在iOSで無料で利用可能だ。将来的にはCircleのセッションへのアクセスを提供するAudible(オーディブル)のようなクレジットモデルで収益化していく予定だ。
ロサンゼルスとニューヨークを拠点とする7人の同社は、BoxGroup(ボックスグループ)が主導する130万ドル(約1億3700万円)のプレシード資金により支援されている。投資家には、Cassius Family(カシウスファミリー)、Advancit(アドバンシット)の他、Rent the Runway(レントザランウェイ)の共同創業者Jenny Fleiss(ジェニー・フレイス)氏、Mirror(ミラー)の創業者兼CEOのBrynn Putnam(ブリン・パットナム)氏、Beme(ビーム)CTOのMatt Hackett(マット・ハケット)氏、Snap(スナップ)の初期エンジニアDaniel Smith(ダニエル・スミス)氏などのエンジェル投資家が名を連ねている。
同社は今後数週間以内にシードラウンドの調達を計画しているようだ。
カテゴリー:ネットサービス
タグ:Yoni Circle、音声ソーシャルネットワーク、SNS
画像クレジット:Yoni Circle
[原文へ]
(文:Sarah Perez、翻訳:Dragonfly)
- Original:https://jp.techcrunch.com/2021/02/14/2021-01-28-early-snapchat-employee-debuts-yoni-circle-a-social-storytelling-app-for-womxn/
- Source:TechCrunch Japan
- Author:Sarah Perez,Dragonfly
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