米国で会社を辞めたことのある人なら、確定拠出年金の401(k)をそのまま置いてきたかもしれない。
そしてもしあなたが多くの米国人と同じく数年ごとに転職しているなら、複数の401(k)プランが複数の会社に分散してそれぞれ処理されている可能性が高い。
多くの人が分散した口座をまとめる手間をかけようとはしないので、年とともにお金を失っているおそれがある。
そこへ登場したのがCapitalize(キャピタライズ)だ。ニューヨーク拠点のスタートアップは、まさにこの問題を解決するべく、散逸した401(k)口座を見つけ、IRA(個人退職年金)を設定して年金プランをまとめるところまで、本人が手間をかけずにできるプラットフォームを提供する。無料で。
この会社は、プラットフォームを拡大するためにシリーズAラウンドで1250万ドル(約13億1000万円)を調達した。Canapi Venturesがラウンドをリードし、既存出資者のBling Capital、Greycroft、RRE Ventures、およびWalkabout Venturesも参加した。
オーストラリア出身のGaurav Sharma(ガウラヴ・シャルマ)氏は、金融業界で長年仕事をした後に同社を共同設立した。
「私が投資を楽しんでいたとき、いろいろと内面を探るうちに401(k)市場全体にあるさまざまな問題を見つけました」と同氏は振り返った。「その1つは、個人の年金口座が雇用者と紐づけられていることです」。
シャルマ氏によると、転職する人の約3分の1が、401(k)プランを現金清算して付随する違約金を払っているという。
「別の数百万人は、長年放置したままにしています。それはお金の移動手続きが複雑だからです」と彼は言った。
シャルマ氏は、CTOのChris Phillips(クリス・フィリップス)氏と2人で2019年後半にCapitalizeを設立し、2020年3月にはBling Capitalのリードで200万ドル(約2億1000万円)のシードラウンドを完了した。そして2020年9月に正式スタートしたこのロールオーバープラットフォームは、以来1000万ドル(約10億5000万円)近くの資金を扱ってきた。
「2020年夏、パンデミックの影響で多くのレイオフがありました」とシャルマ氏は語った。「だから、ベータテスト中の早期ユーザーの多くは、レイオフにあった人たちでした」。
私はCapitalizeの提供するものが、他のファイナンシャルアドバイザーと何が違うのか、気になって尋ねてみた。シャルマ氏によると、違いはそのプロセスと資格要件にあるという。
「アドバイザーは手続きの一部を助けてくれますが、やり方はまったくの手作業です。その点、私たちは、消費者が退職年金を見つけまとめるのを手伝うオンラインプラットフォームを持っています」とシャルマ氏は語った。「しかも、アドバイザーを頼むためには数十万ドル(数千万円)の資産を持っている必要があります」。
それがシャルマ氏を動かした理由の1つだった。
「たとえ資産が500ドル(約5万2500円)でも50万ドル(約5250万円)でも、私たちはお手伝いします」と彼は言った。
上にも書いたとおり、Capitalizeのサービスは消費者にとって無料だ。サイトへ行けば、彼らが統合プロセスを引き受けてくれる。IRAを開設する必要があれば、それもプラットフォームが助けてくれる。
「IRAについては、フィンテックプロバイダーの商品と有名企業の商品とを比較できるようにしています」とシャルマ氏は説明した。もしCapitalizeが、フィンテックプロバイダーと関係を築いていれば、紹介報酬を受取る。これはNerdWalletやPlicygenius、Credit Karmaなどと同様のビジネスモデルだ。
そして、ユーザーがすでにIRAを持っている場合でも、Capitalizeは年金の統合を手助けする。
またCapitalizeは雇用主向けにも、辞めていく社員を支援するための「オフボーディング」サービスを無料で提供している。「転職のタイミングですばやくロールオーバー(資金移動)するため」だとシャルマ氏は語った。
「これは雇用者にとってもすばらしいことで、管理費用を節約し、受託者リスクを減らすことにもつながります」とつけ加えた。
Canapi VenturesのパートナーであるJeffrey Reitman(ジェフリー・ライトマン)氏は、43の銀行とLP(リクイディティ・プロバイダー)が参加している彼のフィンテックベンチャーファンドが、Capitalizeのチームとプラットフォームにいくつかの点で魅力を感じたと語った。
彼はまずシャルマ氏について、求人、会社構築、意思決定に関して「最高のアーリーステージCEOの1人」と評した。
Canapiでは、自社の副社長らと家族にCapitalizeが早期ベータだったころにサービスを試用させた。
ライトマン氏によると、プラットフォームは「魔法のように働いて手続きのストレスを大いに取り除いてくれた」と言っていたとのこと。
「そんなに良い反応を示す人が近くにいるということは、有望なサービスであることの証拠です。出資を決める後押しになりました」とライトマン氏はいう。
Capitalizeの「ミッション主導」アプローチにも魅せられているライトマン氏は、銀行とLPの約80%がIRAなどの年金商品を扱っていることを指摘した。
「その多くは本質的にデジタルなので、銀行が商品群をさらにデジタル化するために行おうとしていることと、Capitalizeができるだけ多くの人たちの摩擦を減らすためにやろうとしていることとの間には、たくさんのシナジーがあるはずです」。
将来に向けて、Capitalizeは新たな資金を使ってサービスの改善と合理化を行い、テクノロジーへの投資をつづけていくつもりだ。
カテゴリー:フィンテック
タグ:Capitalize、資金調達、401(k)
画像クレジット:lvitma / Shutterstock
[原文へ]
(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Nob Takahashi / facebook )
- Original:https://jp.techcrunch.com/2021/02/15/2021-02-11-2111663/
- Source:TechCrunch Japan
- Author:Mary Ann Azevedo,Nobuo Takahashi
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