世界最大の上場石油製造会社の1社であるRoyal Dutch Shell Group(ロイヤル・ダッチ・シェル・グループ)が、温室効果ガス排出ゼロの気候に配慮した社会の中で同社がいかに生き残って行くかについての計画を発表した。
この計画は、「電気自動車充電ステーションの大規模な展開」「潤滑油、化学品、バイオ燃料の重視」「大幅に拡大した再生可能エネルギー発電ポートフォリオとカーボンオフセット計画の策定」「水素・天然ガス資源の開発を継続し、石油生産を年間1〜2%削減」「二酸化炭素の回収と貯留への多額の投資」という5つの主要な柱に基づいている。
これらは同社の事業全体にわたるもので、大手石油会社による、最も包括的でハイレベルな計画となっている。低排出、そして究極的にはゼロエミッションのエネルギーと電源への移行によって石油業界が次の犠牲者となることを防ぐごうとする内容となっている(石炭産業を指している)。
ロイヤル・ダッチ・シェルのBen van Beurden(ベン・ヴァン・バーデン)最高経営責任者は声明で、「私たちの力強い戦略は、炭素排出量を削減し、株主、顧客、そして社会全体に価値を提供することになるでしょう」と述べた。
同社はまた、株主の離脱を防ぐため、コスト削減を実施し1株当たり年間約4%の配当の増加を約束した。これは高価な石油・ガス探査事業に投資した投資家に資金を還元することを意味する。さらに、同社は負債を返済し、営業キャッシュフローの20〜30%を株主に支払うことも約束した。とても……思いやりがある。
計画
同社の推計によると、シェルは100万社以上の商工業顧客と約3000万人の顧客を擁し、4万6000の小売サービスステーションに顧客が毎日訪れる巨大企業である。同社は成長の機会、エネルギー転換の機会、そしてアップストリームの’掘削作業と石油生成作業が徐々に衰退していく状況について考えを整理した。
成長が見込まれる分野について、シェルは約50億から60億ドル(約5300億から6400億円)の投資を計画している。2025年までに50万カ所の電気自動車充電施設を整備すること(現在の6万カ所からの拡大)およびそれにともなう充電促進の小売・サービス拠点の強化などが計画に盛り込まれている。
同社はまた、バイオ燃料や再生可能エネルギーの生産拡大とカーボンオフセットにも重点的に投資すると述べた。同社は年間560テラワット時を2030年までに発電したいと考えており、これは現在の発電量の倍に相当する。シェルが独立系発電事業者として事業を展開し、1500万の小売および商業顧客に自然エネルギー発電をサービスとして提供することを期待したい。
さらに同社は、水素関連事業も成長可能な分野だと捉えている。
低炭素経済に移行できる資産をすでに保有しているシェルは、そこにさらに力を入れる意向だ。つまりゼロエミッションの天然ガス生産と化学品製造の3倍の削減を目指す(ダウとBASFに着目)。同社は100万トンのプラスチック廃棄物を処理して循環型化学製品を製造する方針を固めており、これはリサイクル率の向上にもつながる。
アップストリームは長年にわたって石油・ガス事業の中心だったが、同社は声明で「量よりも価値に焦点を当てる」と述べている。これが実際に意味するのは、掘削が簡単で低コストの油井を探し求めることであろう(これは石油経済において、当分の間中東が重要であり続けることを示している)。同社は石油生産量を年間約1%から2%削減する予定である。また、カナダのQuest CCS開発、ノルウェーのNorthern Lightsプロジェクト、オランダのPorthosプロジェクトなどを通じて、年間2500万トン相当の二酸化炭素の回収と貯留に投資を行う考えだ。
「私たちは、顧客が求め、必要としている製品とサービス、すなわち環境への影響が最も少ない製品を提供する必要があります」とヴァン・バーデン氏は声明で語っている。「同時に、これまでの強みを活かして競争力のあるポートフォリオを構築し、社会と歩調を合わせたゼロエミッション事業への転換を図っていきます」。
マネートーク
同社は、主要事業からの収益が削減される中で生き残っていくために、営業経費を抑え、もはや意味のない事業の大きな部分を売却しようとしている。
つまり、年間の支出を350億ドル(約3兆7200億円)未満に抑え、年間売上高は約40億ドル(約4250億円)で、投資家への配当と現金の流れを維持していることになる。
「長期的には、資本投資のバランスは成長の柱の事業にシフトし、新たな設備投資の約半分はこれらの分野に行われるようになる」と同社は説明している。「キャッシュフローも同じ傾向をたどり、長期的には石油やガスの価格との関連性が少なくなり、より広範な経済成長との結びつきが強まることが期待される」。
シェルは、全従業員に支払われる給与の一部として炭素集約度の削減目標を設定しており、その目標は目を見張るものがある。2016年を基準とする炭素集約度の削減率を6〜8%(2023年)、20%(2030年)、45%(2035年)、100%(2050年)と想定している。
同社によると、同社の炭素排出量は2018年に年間1.7ギガトンでピークに達し、石油生産量は2019年にピークに達している。
背景
シェルがこうした措置を取っているのは、同社が望んでいるからではなく、そうする必要があるからだ。化石燃料の汚染と気候変動を止めるために何か劇的なことをしない限り、世界は深刻な結果に直面することが予測される。
今週初めに発表された調査で、化石燃料による大気汚染で世界の人口の18%が亡くなっていることが示された。ハーバード大学が率いる研究者らの報告によると、化石燃料を燃やすことはガンと同じくらい致命的だということだ。
化石燃料に直接結びついた人的代償以外にも、気候変動には膨大な損失が見込まれている。米国では、これを逆転させるための措置を取らない限り、2090年までに損失は年間5000億ドル(約53兆円)のに上ると推定されている。
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カテゴリー:EnviroTech
タグ:Shell、電気自動車、二酸化炭素、充電ステーション
画像クレジット:Westend61 / Getty Images
[原文へ]
(文:Jonathan Shieber、翻訳:TechCrunch Japan)
- Original:https://jp.techcrunch.com/2021/02/19/2021-02-11-ev-charging-stations-biofuels-the-hydrogen-transition-and-chemicals-are-pillars-of-shells-climate-plan/
- Source:TechCrunch Japan
- Author:Jonathan Shieber,Dragonfly
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