最近テクノロジー市場ではビッグニュースが続いたが、SPAC(特別買収目的会社)による上場方式は依然注目を集めている。SPACは資金を募って企業を設立、上場した後に未公開企業を買収し、結果的にそのスタートアップの上場を図る手法だ。事業目的を特定しないためSPACは白地小切手会社とも呼ばれる。一部の関係者はこの仕組に懐疑的になり始めているが、いわば「パーティーは始まったばかり」で会場には客が次々に詰めかけておりバンドは大音量で演奏している状態だ。なるほどパーティーはこれからますます盛り上がるのかもしれないが、誰かが部屋の隅でゲロ吐いているのではないか?
SPACがブームなのは確かだ。Facebookの(なにかと物議をかもした)共同ファウンダー、エドゥアルド・サベリン(Eduardo Saverin)氏が共同ファウンダーのベンチャーキャピタル、BCapitalは、SPACのための3億ドル(318億円)のSPACの上場を申請した。
フィンテック起業家のMike CagneyはSoFIのファウンダーで、最近ではホームエクイティとブロックチェーンの両方の分野にまたがるフィンテック企業、Figureを創立しているが、SPACのために2億5000万ドル(265億円)の資金を調達している。 マイケル・デルでさえ家族資産管理会社をつうじてSPACのために5億ドル(532億円)を調達することを発表した。
Renaissance Capitalよれば、最近16のSPAC企業が総額34億ドル(3600億円)を調達したという。上場にはSPACを利用したというパイプラインを通じて厖大ないキャッシュが流れこみ続けており、45のSPACが上場を申請している(従来方式の上場申請は10件だ)。 Yahoo Newsは「一部のSPAC投資家は火傷する可能性がある」という記事を載せていたが、理由があることだ。
INSEADのアシスタント・プロフェッサー、Ivana Naumovska(イバナ・ナウモフスカ)氏は、ハーバードビジネスレビューで「SPACバブルは間もなく崩壊する」と論じている。
Naumovska氏は「ある手法を採用するケースが増えれば増えるほど注目の度合いが高まり、正当化も進む。これによりその手法がますます普及することを示す研究がある」と指摘した。 しかし、一部の人が主張するようにSPACが問題ある手法なら、広く使用されるようになるにつれて外部の懸念と懐疑論も高ままる可能性もある。 つまりYahoo Financeの記事が生まれることになる。
重要だし、また納得できる点は、ネガティブな評価を受けてきた企業についてのSPAC上場の数が増えるにつれ懐疑的記事が増えてきたことだ。メディアがこうした逆買収による上場に注目すると同時に、規制当局も注目し、投資家、規制当局、メディアが互いにシグナルを送り合えばいかに盛大なパーティーでも急停止を余儀なくされる。
統計をとったわけではないが、現在のSPACに関する報道のほとんどは中立的だ。今のところ強く批判すべき状況にはなく、 たとえ記者個人がSPACに懐疑的であっても、電気トラックのスタートアップのNikolaニコラが詐欺で告発されたなどの例外的な場合を除いて、最終的な判断は保留している。
過去6か月間に資金調達を行ったSPACの多くは、特定の目標を発表していないため判断の材料がない(SPACSは、資金を調達してから目標とする買収を実行するまで2年の猶予がある。スタートアップの上場ができなかった場合は調達した資金は投資家に変換される)。
SPACの必要性を主張する議論は、企業評価額が10億ドルを超えるいわゆるユニコーン企業の多くは株式上場に適しているとする。これは非公開企業の市場に巨額の資金が流れこみきわめて肥大化していることを反映している。
一方、 2019年に上場された際、SPACブームの火付け役となった宇宙観光旅行企業、Virgin Galactなどの逆買収による上場は批判者の予想のような結果にはならなかった。
サー・リチャード・ブランソンは、2004年に低軌道を飛行して乗客に宇宙観光を体験させるためのスタートアップを設立し昨年SPAC経由で上場を果たした。しかしロケット動力による成層圏をわずかに超える弾道飛行の実行は、先週も含めて、何度も延期された。しかし1月以降、2倍以上になった同社の株価は、いわば成層圏上部にとどまっている。発表された決算によれば昨年の収入は事実上ゼロだったが時価総額は現在120億ドル(1.27兆円)だ。
もっとも他のSPACはそれほどうまくいっていない。健康保険のClover Healthは著名投資家、Chamath Palihapitiya(チャマス・パリハピティヤ)が組織したSPACを通じて、 Virgin Galactとほぼ同様の仕組みで上場された。しかしForbsの綿密な調査報道によれば「事業の存続を脅かすいくつもの脅威」に直面しているという。
同社に対する調査行っているのは司法省、証券取引委員会(SEC)。また空売りを専門とするHindenburg ResearchはCloverが投資家を誤解させるような発表を行ったとして非難している。これに対してCloverは反論しているもの、Forbesの報道によれば、Cloverは株式公開に先立って司法省の調査を受けていることを公表しなかったとして少なくとも三つの集団訴訟に直面している)。
SPAC懐疑派の Steve Jurvetson(スティーブ・ジャーベットソン)氏は先月、私(この記事の筆者)との会話で「(SPAC狂騒曲は)まったく理解できないね」と言っていた。Jurvetson氏は著名なベテランのベンチャーキャピタリストであり、SpaceXの取締役でもあるが、「SPACで上場した中にも良い会社はある。誤解しないでもらいたいがSPACがすべて詐欺だとは言っていない」とかたった。だがSPACを利用するのはアーリーステージのスタートアップであり、SECが株式上場で要求する安定した事業見通しという要件を満たすことができない。つまりSPACは出資者にとって事業見通しを示さないでスタートアップを上場させる抜け道になっている。「事業目的を示さないSPACならそれができるる…そういう怪しげな仕組みに利用されている」のだJurvetson氏は指摘した。
Jurvetson氏と同じことを考えているベンチャー・キャピタリストもいるだろうが、今のところ公に言うことを躊躇している。一つにはベンチャー・キャピタリストというものはSPAC経由を含め、どんな方法であろうとポートフォリオ企業を上場させたたるものだからだ。今のところ自分でSPACを創立していなくとも、将来そうする考権利は保留したいだろう。
ニューヨークのBoldstart VenturesのEd Sim (エド・シム)氏は、ここ数ヶ月ではっきり意見を言った数少ないVCの一人だ。質問に対してSim氏は「正直言ってSPACには全く興味がありません。2年後に私やlBoldstartがSPACと関わっているのを見た文句言ってください」と笑った。
多くの投資家は、SPACに関し重要なのは「誰が何を上場させようとしているのか」という個別ケースだと強調している。ディズニーの元幹部でTikTokのCEOとして知られているKevin Mayer(ケビン・メイヤー)がそうだ。 昨日の電話で話したが、Mayer氏は「10年前に比べて現在は企業上場ははるかに少ない。だから上場のための別の方法を提供する必要があります」と述べた。
Mayer氏はSPACに強い利害関係を持っている。 最近、ディズニーで元同僚だったTom Staggs(トム・スタッグス)氏とともに、2社目のSPAC利用上場計画を発表した。2月初めに最初のSPACを使用してデジタル・フィットネスに特化したBeachbodyの新規上場を発表している。ただしMayer氏はすべてのSPACを同じ基準で判断すべきでいないとも主張している。
「これはひどい。ネコもシャクシもSPACに殺到している。この分ではすぐに…風がモミガラを吹き飛ばし、それぞれのケースの真価がわかることnなるんではないか?」といいうところだ。
未公開企業を上場させる引き込む永続的な方法になるにはSPACはさまざまなハードルを乗り越える必要があるだろう。
SPACは熱狂的な支持者を獲得しているが、次第に明らかになっきつつある数字は楽観を許さない。
たとえば先週、法律問題の専門メディア、Bloomberg Lawは、2019年1月1日以降のSPACとの合併による企業上場についての分析を発表した(合併1か月の後までのパフォーマンスデータも利用可能だ )。これによれば、24社中14社が合併完了後1か月の時点で企業価値が下落しており、企業の3分の対前年比で価値の下落を見せている。
「スタートアップの合併後にSPACへの投資家が起こした訴訟の数も増加している」とBloomberg Lawは指摘している。
ともあれSPACが現在作り出されている速度は驚くべきものだ。多くの人々が「いつまで続くのだ?」と考え始めたのは自然だろう。
しかしNaumovska氏はすでにはっきりした予測を抱いているようだ
画像:Axelle/Bauer-Griffin/FilmMagic / Getty Images
(原文へ)
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(文:Connie Loizos 翻訳:滑川海彦@Facebook)
- Original:https://jp.techcrunch.com/2021/02/26/2021-02-20-as-the-spac-frenzy-continues-questions-surface-about-how-much-the-market-can-absorb/
- Source:TechCrunch Japan
- Author:Connie Loizos,Umihiko NAMEKAWA
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