Twitch(トゥイッチ)の元社員が創業したスタートアップのNewness(ニューネス)は、ビューティクリエイターとそのファンコミュニティを対象としたライブストリーミングプラットフォームだ。そのNewnessが、Sequoiaの主導するシードラウンドで350万ドル(約3億7000万円)を調達した。Twitch、YouTube(ユーチューブ)、TikTok(ティックトック)、Instagram(インスタグラム)、Facebook(フェイスブック)などをはじめとして、今日のクリエイターにとってライブストリーミングの選択肢がないわけではないが、Newnessは特にビューティーストリーマー市場に適した形で差別化された、ツールや機能の構築に注力している。例えばパブリックストリームとプライベートストリームの2つのオプションの提供、積極的な貢献に報いるエンゲージメントメカニズム、モデレーション機能、コミュニティへの参加によってファンが無料のビューティ製品へのアクセスが可能になる機能などが含まれている。
新しいラウンドでは、Sequoia Capitalを代表してJess Lee(ジェス・リー)氏が投資を行った。他にNewnessへの投資に名を連ねたのは、Cowboy Ventures(Aileen Lee[アイリーン・リー]氏)、Upside Partnership(Kent Goldman[ケント・ゴールドマン]氏)、Dream Machine(元TechCrunch編集者のAlexia Bonatsos[アレクシア・ボナトソス]氏)、Index Ventures(Nina Achadjian[ニナ・アチャディアン]氏)、Twitch共同創業者のKevin Lin(ケビン・リン)氏、元Twitch幹部のJonathan Shipman(ジョナサン・シップマン)氏とJohn Sutton(ジョン・サットン)氏、Eventbrite創業者のKevin Hartz(ケビン・ハーツ)氏とJulia Hartz(ジュリア・ハーツ)氏、Incredible Health共同創業者でCEOのIman Abuzeid(イマン・アブゼイド)氏、その他のTwitchのエンジェル投資家などだ。
Newnessのアイデアは、Twitchの初期の従業員だったCEOのJenny Qian(ジェニー・キアン)氏が思い付いたものだ。彼女は、長年にわたってゲームストリーミングサイトのTwitchで数多くの役職を歴任し、最後はTwitchのビデオプラットフォームのビジネス戦略担当シニアディレクターを務めていた。彼女のチームに加わったのが、TwitchだけでなくBlizzard(ブリザード)やFacebook Gaming(フェイスブック・ゲーミング)にも勤務していたCTOのYouri Park(ユーリ・パーク)氏だ。
自身もずっと熱心なゲーマーだったキアン氏は、30歳を超えてからスキンケアに興味が向くようになったのだという。ほどなく彼女は、ライブストリーミングを使ったビューティスペースの可能性に気付いた。
「Twitchの時代からこのフォーマットには親しんでいました。そして、ある意味では、ライブストリーミングにどっぷりと浸っていたような気もします」と彼女は説明する。ストリーマーたちと交流したり、質問をしたり、彼らから学ぶことができたりすることが、ライブ形式を魅力的なものにしたのだと彼女は考えている。
「そこで私は、はたと考えました。どうしてこのようなものがビューティスペースには存在しなかったのか。ゲーム以上とは言わないにしても、同じくらいの情熱を持ったコミュニティですし【略】コンテンツのカテゴリーとしてはとても人気のあるものなのですから、どうしてライブメディアがないのかなと思ったのです」と彼女はいう。
しかし同時に、キアン氏はその内容でTwitchライブを行うことは気が進まなかったのだという。
「私のゲームプレイで楽しんもらうのはそれはそれで大切なことなのですが、私がメイクを落としてどんな風に見えるかを、他の人に楽しんでもらうのは、また別のことだと思うのですよね。完全に新しいレベルへ切り替わる感じなのです」と彼女はいう。
Newnessでは、ある意味Twitch的ではないものが目指されている。同社はビューティクリエイターとファンたちのための、健全でポジティブなコミュニティを真剣に目指しているが、そこではモデレーションが鍵であり、荒らしではなくきちんとした参加をしてくれるファンには何らかの報酬が与えられる。
クリエイターがライブを行う際には、より快適にコンテンツが流れるように、Newnessはクリエイターと社内のモデレーターにペアを組ませてサポートを行う。彼らがより有名なストリーマーになったときには、Newnessはクリエイターと協力して、将来のストリームを支援してもらうために彼らのファンコミュニティからモデレーターを選出する。
一方ファンは、お気に入りのストリームを視聴したり、チャットに参加したりといった、積極的な参加や良い振る舞いをすることで、クリスタルと呼ばれる仮想アイテムを報酬として獲得することができる。Newnessの中では、すべてのチャットメッセージの横にも小さなハートマークが置かれている。また、より質の高いコメントで多くのハートを獲得して行けば、手に入るクリスタルも増える。
獲得したクリスタルは、Newnessがブランドから入手した、試供品ではないフルサイズのビューティプロダクトと交換することができる。モデレーターはプラットフォーム上でより多くの時間を費やすため、より多くのクリスタルを獲得することができるが、それはプロダクトを手に入れる機会が増えることを意味している。
ベータテストの結果をみる限りは、この報酬システムはうまくいくことがわかった。Newnessの視聴者の平均66%がライブ中にチャットに参加するようになっているからだとキアン氏はいう。
Newnessのもう1つの特徴は、クリエイターがパブリックストリームとプライベートストリームのどちらも提供することができるということだ。このプライベートストリームは、他の会員制ストリーミングサービスであるOnlyFans(オンリーファンズ)のようなものを目指しているわけではなく、クリエイターがより専門的で独占的なライブイベントを開催できるようにすることに焦点が当てられている。プライベートストリームに対してクリエイターは、一般チケットの他に、たとえば美容用品の詰め合わせバッグなどが手に入るVIPチケットを売ることもできる。
Newnessは、イベントの他に、日常のストリーム内でも「ギフティング」という名のアプリ内チップシステムを提供している。
最終的には、Newnessはこうした取引で発生する収益の一部を手数料として受け取ることを計画しているが、まだベータテスト中なのでそれはまだ行われていない。
現在のNewnessのコミュニティは小さい。そして、ライブストリーミングを許されるクリエイターも、まだ会社側が選別している。
「私たちはプラットフォームに迎えるクリエイターを厳選していますし、招待制を貫いています。これは、最も最初期のクリエイターのみなさんに、私たちのコミュニティの雰囲気作りとカルチャーの醸成に貢献していただきたいからなのです」と彼女はいう。スタートアップは、自身の維持に必要なコミュニティメンバー数は確保したいとは思っているものの、規模が大きくなるにつれて有害なものにならないようにしたいと考えている。
「信じられないくらい健全なコミュニティを育てることが、本当に大切なことなのです。なので、私たちにとっては、安全性とモデレーションが本当に重要なのです」とキアン氏はいう。
クリエイターは、より専門的なアドバイスや製品レビューから、カジュアルな「私と一緒にやってみましょう」といった動画やブログまで、さまざまなコンテンツを制作している。
もちろんNewnessは、YouTubeやInstagramのような既存のストリーマー向けの巨大プラットフォームからの険しい競争に直面するだけでなく、Supergreat(スーパーグレート)のような美容動画に焦点を当てた新参者とも競わなけれなならない。
スタートアップは2020年からベータテストを行っており、当面はウェブ上での公開のみとなっている。今回のシードファンディングを使って、Newnessは、クリエイター向けの現在の専用ストリーミングアプリを補完するために、2021年内にiOS向けのコンシューマーアプリを開発する予定だ(クリエイターは、さらにデジタル一眼レフカメラからのストリーミングを選択することもできる)。
また、エンジニアを採用して、現在サンフランシスコ、ニューヨーク(元Glossierの従業員もいる)、ロサンゼルスに分散している14人のチームを強化することも目指している。
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カテゴリー:ネットサービス
タグ:Newness、資金調達、美容
画像クレジット:Newness
[原文へ]
(文:Sarah Perez、翻訳:sako)
- Original:https://jp.techcrunch.com/2021/02/28/2021-02-26-newness-raises-3-5-million-for-its-twitch-for-beauty-streamers/
- Source:TechCrunch Japan
- Author:Sarah Perez,sako
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