Razerが新しいラップトップをつくったと聞いて、どんなものを思い浮かべるでしょう。高性能、かつ洗練されたゲーミングノートを送り出してきたRazerですから、ゲーマー向けの画期的な製品に違いありません。NVIDIAの独立GPUを積んでいて、独自のイルミネーションシステム「Razer Chroma」で筐体が七色に光るかもしれない。
そう思って「Razer Book 13」を手に取ると、銀一色のシンプルな筐体に驚かされることでしょう。Razer Bookは、ゲームではなくビジネスユースを想定して作られた最初のノートブックです。見栄えの良さと高いビルドクオリティーを融合したデザインはRazer製品に共通する魅力ですが、ゲーミングデバイスの枠を超えてその美学を生かすとなれば、これまでにない挑戦がそこに含まれているはずです。
機能美を体現するデザイン
ゲーミングを意識した「Blade Stealth 13」との違いは、随所に感じられます。加工アルミニウムのユニボディーに、角を立たせたクリーンな外観。カラーはMercury Whiteで、天板には鏡面仕上げの三頭蛇が控えめに刻まれています。
ディスプレイは従来の16:9より縦に長い16:10の13.4インチ。スタイリッシュな4辺狭額縁はDellの13型ノート「XPS 13 9310」を想起させますが、画面占有率は91.8%とXPSのそれをわずかに上回っており、フットプリントもその分だけコンパクトになっています。
限りあるスペースを生産性に振るわけですから、独立GPUではなくIntelの統合型グラフィック、120Hzではなく60Hzのディスプレイを搭載し、スピーカーもStealthの4つから計2つに絞られています。それでもハイエンドPCの名は伊達じゃなく、Intelの第11世代Core i5またはi7を採用し、最大16GBのRAM、冷却に特化したベイパーチャンバーとデュアルファンを搭載。優秀なTiger Lakeノートにのみ認定される「EVO」準拠の称号こそ、Razer Book 13が高性能である証です。
さらに特徴的なのは、スクリーンを開くとキーボードがわずかにポップアップするところ。同様の構造はASUSのZenBookシリーズ等にみられますが、Razerデバイスでは初の試みです。傾斜がつくことでタイプしやすくなるのはもちろん、背面からの排熱を促すねらいもあります。 インターフェースは充実していて、Thunderbolt 4(USB-C)が左右に1つずつ、USB3.2 Type-Aが1つ、HDMI 2.0、3.5mmオーディオジャックに、microSDカードスロットを備えます。 指紋認証はありませんが、Windows Helloによる顔認証に対応。キーボードはChroma RGB対応で、1,680万色に光るほか、キーごとに配色の設定も可能です。アプリやシーンごとに色を変更できるので、普段の仕事ではバックライトを白一色またはオフにして、ゲーミング時はカスタムRGBで雰囲気を演出する、といった使い分けができます。内蔵GPUのTiger Lakeノートで最高級の性能
スペックを深堀りします。重量は約1.4kgで、XPS 13よりやや重く、MacBook Proと同程度。ベースモデルはCore i5+8GB RAM、タッチ非対応FHD+ディスプレイ、256GB SSDで168,799円、Core i7は共通の16GB RAMに、FHD+・256GB SSDと4Kタッチ・512GB SSDのモデルがあり、それぞれ209,800円、259,800円(いずれも税込、公式サイト、執筆時点)からとなっています。
テスト機は最上位モデルですが、選ぶなら21万円のミッドモデルを強く勧めるところです。その根拠に、13インチという画面サイズにおいて4Kのアドバンテージが活きづらいこと、フルサイズのM.2 SSDを採用しており換装が容易なことが挙げられるでしょう。8GBのメモリはやや心許なく、クリエイティブな作業を求めるなら最上位モデルも選択肢に入ってきます。
グラフィックは最新のIntel Iris Xeを搭載。冷却構造については、「Blade 15」「Blade Pro 17」などGeForce RTX搭載モデルと同じベイパーチャンバーを採用し、上位機種の「Stealth 13」より豪華な仕様になっています。その効果は大きく、PCMARK 10の総合スコア3065、CINEBENCH R23スコア4490(マルチ)・1454(シングル)と、XPSに勝る高い性能を示しました。タスクや動画編集については、13型ノートで最高クラスの性能を引き出せるはずです。一方でゲームになると、グラフィックの弱さが足を引っ張りました。「マインクラフト」(初期設定)や「Dungeon Defenders Ⅱ」のような比較的軽いゲームは滑らかに動きます。「APEX Legends」「Forza Horizon 4」等は、最低画質であれば一応動いたものの、フレームレートが安定せず、完全に静止してしまう場面も多々。タスクとゲームの両どりを期待するなら、StealthかBladeを選ぶのが賢明と言えそうです。
その他EVOの認証基準でみると、スタンバイ状態からの復帰が一瞬で、30分の充電で最大4時間利用可能な急速充電に対応しています。55Whの内蔵バッテリーは連続駆動時間が最大14時間(公称値)とあるものの、実際の使用では8時間30分〜10時間程度。M1 MacBookほか、いわゆる「ロングライフバッテリー」のPCには劣るものの、普段使いに支障のないレベルです。
一般向けPCである意味
全体を俯瞰してみると、13インチラップトップにおいてRazerが用意した回答は、薄型ゲーミングノートのStealth 13に対して、クリエイティブな作業にウェイトを置いたBook 13という二つの並立軸であることがわかります。そしてなにより考慮すべきは、従来ゲーマーのみに開かれていたRazerのデザイン・エコシステムの恩恵を、一般ユーザーが享受できるメリットでしょう。
購入の上では価格がネックになるものの、冷却システムやChromaキーボードなど付加価値も多く、プライベートやビジネスユースに広く勧められる一台です。
(文・九条ハル)
- Original:https://techable.jp/archives/153075
- Source:Techable(テッカブル) -海外・国内のネットベンチャー系ニュースサイト
- Author:九条ハル
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