コスパで勝負するクラウドストレージの中堅WasabiがシリーズCで約122億円調達

クラウドストレージでAmazon S3と戦うのは無謀な挑戦のようにも思えるが、Wasabiはストレージの安価な構築方法を見つけて、節約効果を顧客と共有している。米国時間4月29日、ボストン生まれの同社は7億ドル(約761億7000万円)の評価額で1億1200万ドル(約121億9000万円)のシリーズCを発表した。

Fidelity Management & Research Companyがこのラウンドをリードし、これまでの投資家たちも参加した。同社のこれまでの調達総額は2億1900万ドル(約238億3000万円)になる。この他に多少の負債金融もある。ストレージの構築というビジネスは金食い虫だ。

CEOのDavid Friend(デビッド・フレンド)氏によると、投資は、業績が好調なのでそれを維持するためにお金が必要、ということを意味している。「事業は爆発的に成長している。このラウンドでは7億ドルの評価額を達成したため、好調であるとご想像いただけるでしょう。過去3年間では、各年に3倍増を達成し、2021年は計画値を超えそうです」とフレンド氏はいう。

フレンド氏によると需要はずっと堅調で、さまざまな国からリクエストがあるという。今回の増資も、それが1番の理由だ。データの属国性を求める一連の法律が、財務やヘルスケア関連の機密データを国内で保存することを要請しているため、企業は容量を増やす必要があるとのことだ。

企業はストレージを分散ではなく、いくつかのコロケーション施設内に固定するようになったとフレンド氏はいう。パンデミックの間に、彼らは業者を雇いハードウェアをオンサイトにまとめ、効率を上げているとのこと。彼らはまた、マネージドサービスプロバイダー(MSP)や付加価値リセラー(VARs)などのチャネルパートナーたちに、顧客にWasabiを販売するよう奨励している。

Wasabiのストレージは1テラバイトあたり月額5.99ドル(約651.7円)からとなっており、Amazon S3よりずっと安い。S3は、最初の50テラバイトまでが1Gバイトあたり0.023ドル(約2.5円)であるためら、1テラバイトあたり23ドル(約2502.5円)になる。Wasabiより相当高い。

しかしフレンド氏は、Wasabiは今でもスタートアップであるため向かい風がきついという。どれだけ安くても企業は自分のデータがいつまでもそこにあることを求めるため、信頼性のイメージで負けることもある。今回のラウンドで名門のFidelityが幹事会社になってくれたことは、ベンチャーキャピタル企業からの業務改善要求が特になくても、大企業の顧客が同社の信頼性イメージを高めることに貢献するだろう。

「私にとってFidelityは理想的な投資家です。彼らは取締役の席を欲しがらない。会社の経営について、あれこれ言わない。彼らがIPOなどを求めていることは当然ですが、彼らの関心はこのビジネスに投資することにあります。なぜならクラウドストレージは事実上、無限大の市場機会だからです」とフレンド氏はいう。

彼によると、同社は典型的なマーケット刺激剤だという。同社は同業他社から見れば業界の外れ者であり、超巨大のストレージ企業から見れば箸にもかからぬ小物だとフレンド氏はいう。IPOは遠い未来かもしれないが、機関投資家がこんなに早く関心を示したのは、いずれIPOがあると信じているからだ。

フレンド氏は次のように述べている。「私たちが今いるマーケットは、大きなマーケットです。そこに、正しい技術で正しいタイミングで入れたことは、ラッキーなことです。今後のWasabiが、クラウドインフラストラチャーという業種で、かなり注目される上場企業になることは間違いないでしょう。それは私たちにぴったり合ったニッチであり、そんな私たちが今後成長できない理由はどこにもありません」。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Wasabi資金調達クラウドストレージ

画像クレジット:Maxiphoto / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Hiroshi Iwatani)


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