イタリア生まれの個性派!ベネリ「TNT249S」はマルチに使えるスポーツネイキッド

JAIA(日本自動車輸入組合)が世界の注目モデルを一堂に集めて開催する“JAIA輸入二輪車試乗会”。先頃開かれた同イベントで「コレは思わぬ掘り出しモノでは!?」とジンワリうれしくなったのが、ベネリの「TNT249S」。

2021年、再び日本の地を踏んだ注目ブランドの魅力と、最新ネイキッドバイクの実力をチェックします。

■ベネリは1911年創業のイタリアンメーカー

余裕ある大柄なボディに、回すと素直にパワーを吐き出すクォーターのパラレルツイン。ほどほどにスポーティで、目いっぱい気張らずとも楽しめるハンドリング。個性派ぞろいの出展車の中にあって、TNT249Sは一見、地味だけれど、ジワジワと“良さ”がにじみ出てくるモデルでした。とはいえ、いきなりそんな好印象を聞かされても、「そもそもベネリって、何?」という方も多いと思います。

ベネリは、1911年にイタリア中部のペーザロで創業された老舗の2輪メーカー。夫を失ったテレサ・ベネリと6人の息子たちが修理工場から始め、自転車に自社開発の2ストロークエンジンを積み、次いで自らのモーターサイクルを作り上げ、第二次世界大戦の苦難を乗り越えて、戦後は小排気量モデルを中心に市場で成功。1960年代まではレースフィールドでも活躍! そんな、いかにもイタリアンなストーリーを持つブランドです。

ただ、ベネリも欧米バイクメーカーの例にもれず、次第に台頭する日本製バイクに押され、一時はモトグッツィとともにデ・トマソ傘下に収まり、ついにはブランド消滅の憂き目に遭いました。その後、紆余曲折を経て、2005年に中国の銭江グループがブランドを取得しています。

ご存知のように、中国とインドは世界の2輪市場の両横綱。いずれも1000万台級のマーケットですから、年間30万台強の日本とは文字通りケタが…2ケタも違う! 商品が大量に売れれば、グングン品質も上がるのが世の常。今や中国製も“中華バイク”と侮れない存在感を示しています。

加えて、キュージアン(Q.J.)と呼ばれる銭江グループは、吉利(ジーリー)ホールディングスの一員。ボルボやロータスを獲得し、ブランドを毀損することなく上手に育てている吉利ですから、Q.J.の手腕も注目されます。新生ベネリの場合、デザインはイタリア、生産は中国、というアプローチが採られています。

■“オフセットレイダウンサスペンション”が目を惹く

前フリが長くなりました。2021年から、2輪/4輪のカスタムパーツや電動バイクなどを扱うプロトがインポーターとなって日本での販売が開始されたベネリ。まずはそのモデルラインナップを紹介しましょう。

まずは、可愛らしいファンバイクの「TNT125」(32万8900円)。125ccのシングルシリンダー(11馬力)を使い、2人乗り可能なコンパクトボディを走らせます。ホンダ「グロム」(38万5000円)やカワサキ「Z125PRO」(35万2000円)がライバルですね!

TNT125

欧州向けベネリには500ccや750ccも用意されますが、日本市場の扉は手頃な排気量で開けようと目論んでいるらしく、主力は3種類のクォーターマシンです。手頃なアドベンチャーツアラーの「TRK251」とショートテールの個性的なデザインが印象的な「レオンチーノ250」は、いずれも、249cc単気筒エンジン(25馬力)を搭載し、前後17インチのホイール&タイヤサイズを履きます。さらに価格も、2台とも同じ54万8900円です。ツーリング好きはTRK、街乗りメインならレオンチーノといったところでしょうか。

TRK251

レオンチーノ250

そして、今回の主役であるモダンネイキッドたるTNT249Sは、上記2台と同じ排気量249ccながら、こちらは並列2気筒エンジン(31馬力)を用い、63万6900円のプライスタグを掲げます。

鋼管を三角に組んだトレリスボディ、倒立フロントフォーク、それに、スプリングを巻いたダンパーを寝かした、いわゆる“オフセットレイダウンサスペンション”が目を惹きます。

コンパクトに車体底部にまとめた排気系も“今っぽい“。LEDのヘッド及びテールランプ、液晶メーターも備え、ブレーキはもちろんABS付きです。

■高回転域で本領発揮。日常使いにも無理なく対応

TNT249Sのシート高は795mmとやや高めですが、車体がスリムなので足つきは悪くない。いざ走り始めると、安定感の高い大きめボディと、相対的にコンパクトなハンドル幅が穏やかにスポーティ。ネイキッドらしいリラックスしたポジションをとれます。

ツインカム4バルブユニットは、最高出力31馬力/1万1000回転、最大トルク2.1kgf-m/9000回転を発生。実用的で使いやすいエンジンですが、意識的に回してやると、6000回転を超える辺りから本領発揮。8000回転前後でTNT249Sを駆ると、スポーツネイキッドらしい気分を味わえます。足回りは比較的ソフトでまったりしたフィールなので、日常使いで無理なく楽しめそう。

ベネリTNT249Sの立ち位置を考えると、ちょっと前のスズキ「GSR250」に近いといえましょうか。多方面に気楽に使いたいけれど「あまり他人のバイクとカブるのはなぁ」という方。輸入が始まったばかりのベネリをチェックしてみてはいかがでしょう?

<SPECIFICATIONS>
☆TNT249S
ボディサイズ:L2130×W800×H1120mm
車両重量:204kg
エンジン:249cc 並列2気筒 DOHC
トランスミッション:6速MT
最高出力:31馬力/1万1000回転
最大トルク:2.1kgf-m/9000回転
価格:63万6900円(特別色のグリーンは64万7900円)

>>ベネリ「TNT249S」

文&写真/ダン・アオキ

ダン・アオキ|15年ほど出版社に勤務し、クルマ専門誌、カメラムックなどの編集に携わった後に独立。フリーランスの“カメライター”になる。現在は、2輪・4輪のコンテンツ制作を担当するほか、女性を被写体とした人物撮影も行っている。

 

 

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