ドコモは、21年の夏商戦に向けた新モデルを計11機種発表した。スマホは、ソニーやシャープ、サムスン電子などが発表、発売しているフラッグシップモデルに加え、昨年から強化しているミドルレンジモデルを拡充。ソニーの「Xperia Ace II」や、FCNTの「arrows Be4 Plus」など、2万円台で販売する4Gモデルも用意し、フィーチャーフォン(ガラケー)からの移行を進めていく構えだ。
そんな同社が、新たなカテゴリーとして強化したのが、「家」の通信。家の中に設置するWi-Fiルーターの「home 5G」を8月下旬に発売する。モバイルWi-Fiルーターとは異なるいわゆるホームルーターで、端末はバッテリーではなく、コンセントからの給電によって駆動するタイプのもの。4G、5Gとモバイル回線に対応しているが、その役割は光回線やケーブルテレビといった固定回線の通信に近い。
端末の位置づけが特殊なため、料金体系も従来のスマホやタブレット、Wi-Fiルーターなどと異なる。専用の料金プランは月額4950円で、光回線などの固定通信と同様、データ通信の容量は無制限。さらに、スマホ用の「ギガプラン」と組み合わせると、ギガプラン側に1100円の割引を受けられる(ギガライトの場合、1GB以下は割引なし、1GB超3GB未満は550円)。割引は、ドコモ光を契約した場合と同様、ファミリー割引を組む家族全員に適用されるため、5人家族以上なら、実質的に追加の負担がなく、家の中に1回線追加できる。メリットは、手軽さだ。光回線などの固定通信は、速度が安定して速い半面、物理的にケーブルを引かなければならず、工事に時間がかかる。引っ越しの際の手間も増えるため、特に単身で住むユーザーには敬遠されがちだ。これに対し、home 5Gならルーターを購入して電源を入れるだけだ。速度的には光回線に劣ることもあるが、家の中の機器をまとめてネットにつなげられる恩恵は受けられる。コロナ禍で急増した家庭内の通信環境を整えたいというニーズにもこたえられる。
その速度についても、5Gの登場で、以前より差が埋まりつつある。固定回線の場合、古いマンションでメタル線を使ったVDSL方式で各戸に回線を分配していると、100Mbpsから200Mbps程度が上限になるケースもある。対するホームルーターの最高速度は、5Gでキャリアアグリゲーションすると、下り最大4.2Gbps。4Gでも1.7Gbpsまで出せるため、家庭に引いた回線の状況によっては、home 5Gの方が高速になる可能性もある。一方で、さまざまな機器がつながる前提のhome 5Gは、単体で通信することが前提のスマホやタブレット以上に、ユーザーのデータ使用量が大きくなる可能性がある。先に述べたように、データ容量は無制限のため、ユーザーの金銭的な負担が増える心配はないが、ネットワークのキャパシティへの影響はドコモにとっての懸念事項だ。ドコモによると、home 5Gは従来のスマホより、きめ細やかな帯域制御を行っていくという。同じ基地局につながる周囲のスマホに与える影響を最小限に抑えるよう、スマホとhome 5Gは分けてコントロールするようだ。
これまでのドコモは、固定回線の代替としてのモバイルを提供しておらず、ユーザーのニーズを満たしきれていなかった。対するKDDIは、傘下のUQコミュニケーションズがホームルーターを提供。KDDI自身も同一の端末を販売していた。ソフトバンクは、SoftBank Airと呼ばれるホームルーターを提供したことで、SoftBank光とともに固定回線の数を伸ばしている。ドコモも、この分野に参入した格好だ。
KDDIやソフトバンクのホームルーターは、回線のキャパシティを考え、特定の周波数帯や通信方式に通信が制限されているケースが多い。KDDIが17日に発表した5G対応のホームルーター用プラン「ホームルータープラン 5G」は、月額5458円で割引適用後に4721円になるが、無制限で利用できるのはUQコミュニケーションズのWiMAX 2+エリアや一部の5Gと4Gのみ。au回線をフルで使う場合は「プラスエリアモード」が必要になり、料金は1100円高くなる。ソフトバンクのSoftBank Airも、スマホに比べると利用できる周波数帯が少ない。 これに対し、ドコモのhome 5Gは、料金を2社以下に抑えつつ、4G、5Gをすべて利用できるようにしたのが強みだ。ただ、4Gしかつながらず、帯域幅の狭い地域では、光回線に匹敵する速度が出ないおそれがあり、キャパシティに与える影響も大きい。home 5Gの提供に合わせ、5Gエリアをさらに拡大していく必要がありそうだ。(文・石野純也)
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- Author:Techable編集部
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