キヤノンITソリューションズ株式会社(キヤノンITS)は、2015年より農業分野においてカメラとAIを活用したスマート農業技術の研究開発に取り組んできました。その中で、イチゴ栽培における花や実の数、葉の大きさ、葉の色などの生育情報を、ICT技術を用いて数値化するAIを開発しています。
そして、農林水産省が推進する「令和元年度スマート農業技術の開発・実証プロジェクト」に採択され、令和元年度から2年度にかけて「阿蘇イチゴスマート農業実証コンソーシアム」実証グループに参画。このたび、同コンソーシアムでの検証結果を発表しています。
「阿蘇イチゴスマート農業実証コンソーシアム」が実証したのは、大きく分けて2つ。そのひとつが、中・大規模栽培圃場における品質向上と安定生産などを目的とした生産技術の構築であり、キヤノンITSはこの分野での参画となりました。ちなみに、もうひとつの実証は、共同選果施設における調製作業の省力化です。
検証結果
キヤノンITSは、スマートフォンで撮影した九州沖縄農業研究センター内のイチゴ品種「恋みのり」「さがほのか」の生育状況を、遠隔地からでもインタラクティブな映像コミュニケーションが可能なサービス「VisualBrain」に送信。その画像を映像情報からイチゴの生育状況を数値化して生育特徴量や未来の収穫量を予測する「イチゴ生育画像解析システム」で解析・蓄積し、遠隔から現地の映像や解析結果を閲覧できる環境を構築しました。
「VisualBrain」に送られたデータから、イチゴの花数、果実熟度、葉面積の生育状況の指標を定量化する生育特徴量計測技術を検証したところ、2品種ともに、生育特徴量の自動計測精度は90%以上を達成。つまり、スマートフォンのカメラ機能を使い、初期費用を抑えた生育解析ができることと、スマートフォンは高精細画像により高精度な生育解析ができるということがわかったということです。
なお、キヤノンITSは「令和3年度スマート農業技術の開発・実証プロジェクト」にも採択され、次回のプロジェクト「阿蘇イチゴ輸出スマート農業実証コンソーシアム」に参画予定。今回の経験を活かし、生育計測から収量予測、農業熟練者による映像共有を活用した遠隔指導や農作物のリモート審査の実証実験を開始するようです。
もうひとつの実証
ひとつの実証である、共同選果施設における調製作業の省力化は、自動選別・パック詰めロボットを活用して実施されました。
同ロボットの異なるハンドリング機構を活用し、やわらかいフィルム素材で流通時の果実損傷を大幅に軽減できる新型イチゴ容器「ゆりかーご」への自動選別・パック詰めを行っています。また、パック詰めの他、質量別に分けるだけのオプション機能で粗選別作業も行ったようです。
(文・Higuchi)
- Original:https://techable.jp/archives/155338
- Source:Techable(テッカブル) -海外・国内のネットベンチャー系ニュースサイト
- Author:樋口
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