実は絶滅危惧種!? 空冷エンジンを搭載したネオクラシックなバイク5選

発売と同時に大きな人気を集めているホンダ「GB350」。空冷エンジンに丸目ライト、ティアドロップ型のタンクと、“これぞバイク”というオーソドックスなスタイルがバイクファン以外にも受け入れられているのが人気の理由です。

しかし実は、空冷エンジンを搭載したネオクラシックスタイルのバイクは今や絶滅危惧種と言っていいほど新車ではラインナップが少ない。本当に、“乗るなら今のうち”かもしれません。

 

■空冷エンジンは風前の灯火!?

子どもの頃に描いたバイクの絵をそのまま実車にしたようなアイコニックなルックスの「GB350」ですが、そのスタイルに重要な役割を果たしているのが空冷単気筒エンジンです。幾重にも刻まれた空冷フィンと、ラジエーターなどを持たないシンプルな造形が魅力ですが、近年厳しくなる一方の排気ガス規制に対応するには実は不利な形式なのです。

排気ガスをクリーンにするためには、単純に言うとガソリンを薄くすることが有効なのですが、そうするとエンジンは高温になりやすく、空冷エンジンでは冷却が厳しくなってしまいます。

▲ヤマハ「SR400 ファイナルエディション」

2020年には、ヤマハの空冷単気筒エンジンを搭載した「SR400」が「ファイナルエディション」をもって生産終了となりましたが、これも設計の旧い空冷エンジンでは排気ガス規制に対応するのが難しくなってきたというのが理由のひとつです。

金属は熱くなると膨張します。そのため、空冷のエンジンはピストンが膨張するのに備えてシリンダーとの隙間(クリアランス)を大きめにとっておく必要があります。しかしそれが混合気の吹き抜けにつながり、余計に排気ガスのクリーン化に不利になってしまうのです。

そんな理由もあり、新車でのラインナップが激減している空冷エンジン搭載マシン。なかでもクラシックなスタイルを現代の技術で作った“ネオクラシック”と呼ばれるモデルを集めてみました。排気ガス規制は今後も厳しくなっていくので、乗るなら今かもしれません。
 

1. ホンダ「GB350」

シリンダーを直立させ、タンクやフェンダー、サイドカバーまでスチール製とするなど、クラシックな造形にこだわっている「GB350」ですが、中身は最新の電子制御を搭載しています。ABSはもちろん、トラクションコントロール機能まで備えているので滑りやすい路面でも安心。

冷却問題についてはピストン裏にオイルを噴射するピストンジェットを採用しているほか、特に温度が上昇しやすい燃焼室周辺には冷却用のオイル通路を設けて対応しています。空冷フィンも、温度の上がりやすさに応じて形状やサイズを最適化しているとのこと。それが造形美につながっているところも空冷エンジンの面白さですね。

<SPECIFICATIONS>
ボディサイズ:L2180×W800×H1105mm
車両重量:180kg
エンジン:348cc 空冷単気筒 OHC
トランスミッション:5速MT
最高出力:20馬力/5500回転
最大トルク:3.9kgf-m/3000回転
価格:55万円

 

2.カワサキ「W800」

空冷エンジンのネオクラシックバイクとして外せないのが「W800」。設計段階から造形の美しさにこだわったというバーチカルツインエンジンと、水平に伸びる2本出しマフラーがスタイリッシュです。特にエンジンの右側にあるカムシャフトを駆動させるためのベベルギアの造形がクラシカルな雰囲気を際立たせています。

▲「MEGURO K3」

このマシンも、一度ならず排気ガス規制の問題で生産終了がアナウンスされ、そのたびに蘇ってきたもの。「W800 STREET」「W800 CAFE」といったバリエーションモデルのほか、今年の2月には車体設計が共通の「MEGURO K3」も発売されて話題となりました。

▲「W800 CAFE」

<SPECIFICATIONS>
ボディサイズ:L2190×W790×H1075mm
車両重量:226kg
エンジン:773cc 空冷並列2気筒SOHC 4バルブ
トランスミッション:5速MT
最高出力:52馬力/6500回転
最大トルク:6.3kgf-m/4800回転
価格:110万円

 

3. ロイヤルエンフィールド「Bullet 500」

1901年にイギリスでバイク生産を始めたロイヤルエンフィールドは世界最古に数えられるメーカーのひとつ。1970年に倒産の憂き目に遭いますが、インドの工場で作り続けられ、ブランドとして継続してきました。

「Bullet(バレット)500」は、1932年に初代モデルが作られた同ブランド最古のモデル。それでいて、改良が重ねられ現行の排気ガス規制にも対応しています(なんとABSも装備!)。タンクのピンストライプは手描きで、手作業のぬくもりが感じられる数少ないマシンです。現在、店頭在庫のみとなっているとのことなので、欲しい人は急いだほうがいいかも。

<SPECIFICATIONS>
ボディサイズ:L2140×W800×H1080mm
車両重量:190kg
エンジン:499cc 空冷単気筒DOHC
トランスミッション:5速MT
最高出力:27.2馬力/5250回転
最大トルク:41.3Nm/4000回転
価格:71万3000円

 

4. ロイヤルエンフィールド「INT 650」

同じくロイヤルエンフィールドのマシンですが、こちらは空冷の並列2気筒エンジンを搭載。丸みを帯びたシルエットのエンジンはクラシカルですが、実は新設計のもの。水平基調な車体デザインとティアドロップ型のタンク、フラットなシートは懐かしさを感じさせるルックスです。隙間の多いエンジンまわりの造形もレトロな雰囲気。ライディングポジションもオーソドックスなものながら、パワーユニットが新設計なので動力性能はなかなかのものです。

<SPECIFICATIONS>
ボディサイズ:L2122×W789×H1165mm
車両重量:202kg
エンジン:648cc 空冷並列2気筒SOHC4バルブ
トランスミッション:6速MT
最高出力:47馬力/7150回転
最大トルク:52Nm/5250回転
価格:77万6000円〜

 

5. GPX「Legend 150 FI」

シンプルな構成ゆえにコストが抑えられることも空冷エンジンのメリットですが、こちらはその魅力にフォーカスしたようなマシン。

GPXはタイで生まれたブランドで、現地ではホンダ、ヤマハに続く支持を集めているとのことです。「Legend(レジェンド)150 FI」は、元々キャブレターモデルとして販売されていたものを、FI(フューエルインジェクション)化したもの。同時にフロントフォークを倒立化するなど各部をブラッシュアップしています。ホイールは前後17インチでタイヤの選択肢も豊富と、価格の割に遊べるモデルといえそうです。

<SPECIFICATIONS>
ボディサイズ:L2025×W785×H1100mm
車両重量:143kg
エンジン:149cc 空冷単気筒OHC
トランスミッション:6速MT
最高出力:10.5 kw/8000回転
最大トルク:13.5Nm/6500回転
価格:34万9800円

 

<文/増谷茂樹

増谷茂樹|編集プロダクションやモノ系雑誌の編集部などを経て、フリーランスのライターに。クルマ、バイク、自転車など、タイヤの付いている乗り物が好物。専門的な情報をできるだけ分かりやすく書くことを信条に、さまざまな雑誌やWebメディアに寄稿している。

 

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