ファイアースターター付き!サバイバル系レザーマン「SIGNAL COYOTE」

【男前マルチツールの世界】

マルチツール。それは、手に収まるほどのコンパクトなボディにさまざまな道具を詰め込んだ“ハンドツール”。とかく専用ツールに比べ「間に合わせ」と思われがちですが、そこにはマルチツールだからこそ味わえる奥深い世界が存在します。

そんなマルチツールの男前な魅力を紹介する連載第9回は、LEATERMAN(レザーマン)「SIGNAL COYOTE(シグナル コヨーテ)」(2万4750円)。フルサイズのプライヤーを装備したサバイバルモデルです。単なるアウトドアツールとしてだけでなく、過酷なサバイバルシーンを想定しており、コヨーテカラーのハンドルや黒染めされたツールなどミリタリーテイスト満載の男前なルックスが魅力の一本です。

*  *  *

▲全長11.4cm(プライヤー収納時)/約18.5cm(ブレード展開時)、重さ212.2g

69mmのブレードは他のツール同様、黒い陽極処理が施されています。両刃の直刀と波刃のコンビネーション。どちらも切ることを目的としますが、波刃はロープなどを切るのに適したもので、直刃はそれ以外の切ること全般に使用する、マルチな使い方を想定したナイフです。

最大の特徴は、片手での運用が比較的容易であること。もちろんナイフも右手であれば片手で開閉が可能です。すべてのツールを片手で使えるわけではありませんが、随所に片手での運用が可能な工夫が施されています。

例えばプライヤー。これの展開も片手で可能です。カラビナクリップ付近にスライド式ロックがあり、これを押し出すとロックが外れます。その状態でハンドルの片側を持って軽く振ると、自重でハンドルが開きプライヤーを展開できます。一部のモデルを除き多くのプライヤー付きモデルは、両手でなければ展開は難しい。つまり、怪我などをして片手が使いにくい状況、ないしはそういう危機的な状況に陥った時に活躍が期待できる機能なのです。
 

■ファイアースターターで火起こししてみた!

SIGNALが装備するツールの中でも他のモデルにない特徴的なもの、それがファイアースターターです。鉄やセリウム、マグネシウム等のフェロセリウム合金が施された着脱式のファイアースターターにノコギリの背を当てて素早く擦ると火花が散ります。ブレードの背でもできるのですが、ノコギリの背の方がやりやすかったですね。

ポイントは、ファイアースターターをしっかり固定して行うこと。火打石のように打つのではなく、素早くノコギリの背で擦ると派手な火花が飛び散ります。ライターやマッチが無くても、風雨にさらされた場所や酸素が薄い高地でも、火種を作るのに欠かさせない火起こしが簡単にできます。

ちなみにこのファイアースターター、ホイッスルの機能も付いています。吹くのにちょっとコツがあり、吸った息を素早く勢いよく吹き出すと「ピィーーーッ」とかなり甲高い音を発します。人の耳に届きやすい周波数らしく、遠くからでも自身の居場所を人に知らせられます。

ではそれ以外のツール類も詳しく見ていきましょう。

 

▼ダイヤモンドシャープナー

意外なことに「SIGNAL」のみに装備されたアイテム。ボディから分離して使えます。切れ味の落ちたナイフをタッチアップすれば、一時的にですが切れ味を回復させられます。切れ味が落ちる心配をせずに、躊躇なくナイフを使用できますね。

シャープナーはハンドル外側にあり、シャープナー下方にあるロックを押しながら下にスライドさせると外せます。これも片手で操作可能です。

 

▼ノコギリ

フルサイズのレザーマンに装備されている一般的なサイズです。枝を切ったりするには充分。太い材木を切るような作業には向きませんが、ソロキャンプで焚火の薪を作るぐらいであればにはなんとかなります。

 

▼取替可能な154cmワイヤーカッターと細身のプライヤー

近年のフルサイズモデルに標準装備され始めた、取り替え可能なワイヤーカッター。そもそもワイヤーカッターは、性質上かなり酷使される部分です。これは専用工具でないにも関わらず、切れ味も耐久性もかなりあります。ただ、長年使い続けると痛んでしまうものなので、交換可能なことは精神衛生上非常にありがたい。

そしてニードルプライヤー。レザーマンを代表する「チャージ」や「ウェーブ」と同様に先端が細め。少し入り組んだ場所に手を入れる時や細かな作業にも適しており、機械を修理する際など、エマージェンシーな状況を想定した際の配慮が感じられます。

 

▼ハンマー

ミルスペックモデルの「MUT」にのみに付いていた機能がこの「SIGNAL」にも装備されています。ペグを打ったり木ネジや釘打ち込む際、素手や足よりも効率的に使えるハンマーはサバイバルシーンにおいては重要なツールのひとつです。見た目以上に丈夫です。

もちろん、フック部は栓抜きにもなります。USブランドのマルチツールに必須なツールのひとつですね。ベルトループやランヤードにも引っ掛けやすく、携帯にも便利です。

 

▼錐(キリ)

キャンパス地やレザーを縫えるレザーマンの錐。木材に穴を開けることもできます。思いのほか深く開けられました。日本で一般的に想像される錐とは違いますが、汎用性の高いツールのひとつです。

 

▼缶切り

プルトップが付いていない缶詰を開けるのに必要な缶切り。内側のツールを使う際は、ハンドルを開きます。構造上、缶切りとドライバーはハンドルを開いた状態で使わなければなりません。特に不便は感じませんが、使用時はハンドルを閉じて使えないことを覚えておく必要があります。

 

▼ボックスレンチ

ハンマー部に六角レンチソケットがあります。サイズは片側が6mm、反対側が5mm。気が付きづらいですが、割とポピュラーなサイズなので使えるシーンはあるかもしれません。

 

▼ラージビットドライバー

上位機種のみに装備されている汎用性の高い大きめのビットドライバー。デフォルトではプラスドライバーですが、抜いてひっくり返すとマイナスドライバーとして使えます。このビットの規格は、レザーマンが別売するビットキットと同じなので、ビットキットがあれば他のサイズのビットも使用可能です。

エマージェンシーな状況が常にあるわけではありません。日常のちょっとした作業でも使えることは、ツールを使い慣れるためにも必要なことです。

 

■過不足ないツールと状況に応じた使いやすさが魅力

レザーマンの汎用フルサイズモデルや、ガチのミリタリー系モデルに比べ搭載ツールは意外と多くありません。しかしその分、細身で軽量です。余計なものがなく、エマージェンシーな状況を脱するのに必要なツールのみを搭載しています。ツールが軽量であることはとても重要です。重くて嵩張るツールは、持ち出すのも億劫になりますし、状況によっては使いづらいものになってしまいます。搭載ツールの数が多いことがスゴイわけではなく、想定する状況でユーザーがいかに使いやすいモノであるかが重要なのです。

「切る」仕事はハンドルの外側にあり、片手で簡単に開閉が可能です。「留める/繕う」仕事はハンドルの内側にあります。大雑把な仕事の分担を覚えておくだけで、明るくない場所でも慌てることなく正解のツールを素早く展開できます。この単純にして明快なツールの配置こそが、このモデルの核心と言えます。ファイアースターターを装備している点ばかりが注目されがちな「SIGNAL」ですが、ぜひ手にとってこの使いやすさを実感してほしいモデルです。

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>> [連載]男前マルチツールの世界

<取材・文/GOL>

GOL|歯科技工士、ECディレクター、webライターまで幅広く活動しております。指先に伝わるハンドツールの質感や重さ、音などアナログな部分に惹かれて今に至ります。一番好きなのは懐中電灯。

 

 

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