近年、欧州メーカーを中心に、ラインナップが拡大しているのが“スクランブラー”と呼ばれるジャンルです。レトロな丸目ライトにアップタイプのハンドルというのが基本スタイルですが、いわゆるネイキッドとも異なる雰囲気が特徴。街乗りもツーリングも快適にこなせそうな“スクランブラー”のルーツを探るとともに、注目モデルをピックアップしてみました。
■そもそも“スクランブラー”の定義とは!?
“スクランブラー”とは、オンロードとオフロードのカテゴリーが未分化だった時代に、オンロードバイクをベースにオフロードも走れるようにしたモデルのこと。1960年代ごろまでは、このスタイルのバイクがオフロードを駆け回っていました。
▲ドリーム CL72 スクランブラー
国内モデルでいうと、1962年に登場したホンダの「ドリーム CL72 スクランブラー」が有名です。ロードスポーツとして名を馳せた「ドリーム CB72」をベースに、アップタイプのマフラーと幅広のハンドルを装備し、オフロード走行に対応していました。アメリカの販売店が、このマシンを使って砂漠や岩場が延々と続くバハ・カリフォルニア半島を縦断し、それが現在も続く1000マイルのオフロードを一気に走り切るレース「BAJA(バハ)1000」のルーツとなったのは有名な逸話です。
この「CL72」もそうですが、当時のスクランブラーは基本設計はロードマシンのままでマフラーやハンドル、タイヤなどをオフロード向けにしたものでした。
その後、サスペンションストロークを伸ばしたオフロード専用モデルが登場し、 その中でもエンデューロモデルやツーリング向けなどカテゴリが細分化していきます。そのため、メーカー製スクランブラーは姿を消し、カフェレーサースタイルなどと同じくカスタムの1ジャンルという扱いとなっていました。
しかし、近年はメーカー自らがスクランブラーを名乗るシリーズを現代の技術で復刻する流れが活発になっています。トライアンフやドゥカティ、BMWなど欧州の名門メーカーが次々にリリースしたスクランブラータイプのマシンは、アップライトなハンドルと、カチ上げられたマフラーが特徴で、このスタイルが街中などで乗りやすく、クラシカルなルックスに仕上がっているのが人気の理由です。
現代の技術で作られているのでブレーキや足回りなどの安心感が高いのもポイント。本格的なオフロード走行が可能なモデルもありますが、どちらかというとストリートを主眼に開発されているものが中心です。アップライトなライディングポジションと、ハイパワー過ぎないエンジンの組み合わせはリターンライダーにもおすすめできるもの。
残念ながら、国産モデルにはスクランブラーらしい現行車はありませんが、ホンダの新しい「GB350」などは、これをベースとしたスクランブラーがあったら…と期待せずにはいられません。
1. トライアンフ「STREET SCRAMBLER」「SCRAMBLER 1200」
スクランブラーモデルが充実している名門メーカー、トライアンフ。900ccの「STREET SCRAMBLER」と1200ccの「SCRAMBLER 1200」をラインナップしています。どちらもエンジンは水冷の直列2気筒ですが、空冷エンジンのようなフィンが刻まれ、往年のバーチカルツインのような雰囲気。「STREET SCRAMBLER」はその名の通りストリート向けの足回りですが、「SCRAMBLER 1200」にはオフロードマシン並のストロークを持つ倒立サスペンションを装備し、よりハードなオフロード走行にも対応した「XE」というグレードも用意されています。
「STREET SCRAMBLER」
ボディサイズ:W835×H1180mm
車両重量:223kg
エンジン:900cc 水冷2気筒 SOHC8バルブ
トランスミッション:6速MT
最高出力:65馬力/7250回転
最大トルク:80Nm/3250回転
価格:131万円
「SCRAMBLER 1200XC/XE」
ボディサイズ:W840×H1200mm/W900×H1250mm
車両重量:231kg
エンジン:1200cc 水冷2気筒 SOHC8バルブ
トランスミッション:5速MT
最高出力:90馬力/7250回転
最大トルク:110Nm/4500回転
価格:192万1900円/205万6400円
2. ドゥカティ「Scrambler NIGHT SHIFT」「Scrambler Desert Sled」
2015年に発売した「Scrambler ICON」を皮切りに、現行では9モデルの「Scramblerシリーズ」をラインナップしているドゥカティ。1960〜70年代に製造していた同名のシリーズを復活させたかたちです。エンジンはドゥカティの代名詞的な存在であるL型で、排気量は1079ccの「1100PRO」グレードから、普通二輪免許でも乗れる399ccの「Sixty2」まで幅広く揃っていますが、中核となるのは空冷の803cc。最新モデルの「NIGHT SHIFT」は幅広のフラットバーにスポークホイール、ダート走行も視野に入れたタイヤを装備しています。また、本格的なオフロード走行をイメージさせる「Desert Sled」というモデルもラインナップされています。
「Scrambler NIGHT SHIFT」
ボディサイズ:L2100-2165×W865×H1060mm
車両重量:196kg
エンジン:803cc 空冷L型2気筒
トランスミッション:6速MT
最高出力:73馬力/8250回転
最大トルク:66.2Nm/5750回転
価格:134万9000円
「Scrambler Desert Sled」
ボディサイズ:L2100-2165×W940×H1213mm
車両重量:209kg
エンジン:803cc 空冷L型2気筒
トランスミッション:6速MT
最高出力:73馬力/8250回転
最大トルク:66.2Nm/5750回転
価格:147万9000円
3. BMW「R nineT Scrambler」
BMWのアイコンである空冷の水平対向エンジンを搭載し人気の高い「R nineT」シリーズにも、スクランブラーの名を冠したモデルがラインナップされています。2本出しのマフラーに幅広のハンドルというスクランブラーの文脈を押さえたスタイルだけでなく、走行モードも滑りやすい路面に対応した「ダートモード」を備えるなど、オフロード走行にも対応しています。
「Scrambler Desert Sled」
ボディサイズ:L2110-2175×W870×H1120-1175mm
車両重量:224kg
エンジン:1169cc 空冷水平対向2気筒
トランスミッション:6速MT
最高出力:109馬力/7250回転
最大トルク:116Nm/6000回転
価格:202万7000円
4. ファンティック「CABALLERO Scrambler」
イタリアの老舗メーカー・ファンティックがリリースするスクランブラーがこちら。水冷単気筒のエンジンは125ccと250cc、500ccと3種類が選べますが、車体設計は基本的に共通です。クラシカルな雰囲気のデザインですが、足回りは倒立のフロントフォークにモノショックと現代的なもの。ただ、ホイール径は前19インチ、後17インチで荒れた路面や未舗装路でも高い走破性を発揮します。
「CABALLERO Scrambler 125/250/500」
ボディサイズ:L2166×W820×H1135mm
車両重量:130kg/140kg/150kg
エンジン:124.45cc/249.6cc/449cc 水冷単気筒SOHC
トランスミッション:6速MT
最高出力:-/25馬力/40馬力
最大トルク:-/22Nm/43Nm
価格:85万8000円/91万円/116万6000円
5. ハスクバーナ「Svartpilen125/250/401」
スクランブラーを名乗ってはいませんが、その流れに属するのがハスクバーナの「Svartpilen(スヴァルトピレン)」シリーズ。マフラーこそダウンタイプですが、アップライトなハンドルにダート走行も視野に入れたタイヤを履いた車体構成は、スクランブラーの名にふさわしいものです。排気量は125ccと250cc、373ccの3種類。倒立式のフロントフォークを装備した足回りと、トレリスフレームの組み合わせで、キビキビしたハンドリングが味わえます。
「Svartpilen125/250/401」
ボディサイズ:L-×W-×H-mm
車両重量:146kg/153kg/152kg
エンジン:125cc/248.8cc/373cc 水冷単気筒SOHC
トランスミッション:6速MT
最高出力:11kW/23kW/32kW
最大トルク:-
価格:56万9000円/64万9000円/75万9000円
6. SWM「OUTLAW 125」
原付二種ながら、2本出しのアップマフラーとブロックタイヤを装備し、本格的なスクランブラースタイルを実現しているのがSWMの「OUTLAW 125」。聞き慣れないブランド名ですが、1971年にイタリアで創業し、オフロードレースで活躍してきたメーカーです。そのノウハウを活かした車体は、長めのホイールベースでダートでも安定した走破性を実現。購入しやすい価格も魅力のひとつでしょう。
「OUTLAW 125」
ボディサイズ:L2040×W865×H1330mm
車両重量:130kg
エンジン:124.7cc 水冷単気筒DOHC
トランスミッション:6速MT
最高出力:11kW/10500回転
最大トルク:11Nm/7000回転
価格:55万円
<文/増谷茂樹>
増谷茂樹|編集プロダクションやモノ系雑誌の編集部などを経て、フリーランスのライターに。クルマ、バイク、自転車など、タイヤの付いている乗り物が好物。専門的な情報をできるだけ分かりやすく書くことを信条に、さまざまな雑誌やWebメディアに寄稿している。
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- Original:https://www.goodspress.jp/features/380535/
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