暗号資産で国境を越える面倒な「クロスボーダー決済」を簡単、迅速にできるようにするMercuryo

国境をまたぐ決済のネットワークを作ったMercuryoが、シリーズAのラウンドで750万ドル(約8億3000万円)を調達した。

ロンドン生まれの同社は、「デジタル資産の決済ゲートウェイ」によってブロックチェーンをビジネスにとって便利なものにすることを目的とする「暗号資産のインフラストラクチャ企業」と自らを説明している。具体的には同社は、さまざまな決済ソリューションを集積して、法定通貨と暗号資産による決済や支払を提供する。

もっと簡単にいうと、Mercuryoの狙いは、次世代の国境を越えた送金を暗号資産をツールとして使って推進することだ。同社はそれを「どんな企業でも金融業務の面倒な知識や経験なしでフィンテック企業になれる」と説明する。

Mercuryoの共同創業者でCEOのPetr Kozyakov(ペトル・コジヤコフ)氏は「迅速で効率的な国際決済を、特に企業はこれまで以上に必要としている」と語る。多国間決済サービスを提供している企業はすでにたくさんあるが、暗号資産をその軸に据えることが、同社の差別化要因だ。

コジヤコフ氏は「私たちのチームには、低料金の簡単な手続きで暗号資産を至るところで使えるようにする、という明確なプランがあります。そうなれば、暗号資産という資産を使って、グローバルな送金や大量一括支払などさまざまなサービスを得られるようになります」という。

左からAlexander Vasiliev(アレクサンドル・ワシリエフ)氏、Greg Waisman(グレッグ・ワイズマン)氏、ペトル・コジヤコフ氏(画像クレジット:MercuryO)

Mercuryoが営業を始めたのは2019年の初頭だが、それ以降大きく成長して、4月には年間経常収益が5000万ドル(約55億4000万円)を超えた。顧客ベースは100万に近く、また同社は、暗号資産の大手であるBinanceやBitfinex、Trezor、Trust Wallet、Bithumb、そしてBybitなどとパートナーしている。2020年に同社は売上が50倍に増加し、2021年4月には年商が25億ドル(約2770億円)を超えたという。

この勢いに乗じてMercuryoは、米国などに向けて新市場の開拓を開始し、特に米国では2021年初めにすべての州で、B2Bの顧客のための暗号資産による決済サービスをローンチした。今後は、アフリカや南米、東南アジアなどへの「漸進的」拡張を計画している。

Target GlobalがMercuryoのシリーズAをリードし、またエンジェル投資家たちのグループが投資に参加して、2018年の創業以来の総調達額は1000万ドル(約11億円)を超えた。

同社が今度の資金の用途として考えているのは、暗号資産のデビットカードを立ち上げることと、ラテンアメリカやアジア太平洋地区への市場拡大の継続だ。暗号資産のデビットカードがあれば、世界中どこでも自分のウォレットの暗号資産残高から直接、支出できる。

Mercuryoの多様なプロダクトの中には、複数通貨のウォレットがあり、それには暗号資産の取引機能が内蔵されている。他にもデジタル資産の購入機能やウィジェット、暗号資産の大量取得機能、そしてOTCサービスなどのプロダクトがある。

コジヤコフ氏によると、同社は複数通貨間の換金手数料を取らず、その他の「隠れ料金」もないという。

「パートナーにも、またその顧客にも、瞬間的で容易な、国境をまたぐ送金処理を提供できる。送金サービスには中間搾取者がおらず、取引終了までに余計な手続きがない。私たちが提供するサービスは、わずか2種類に絞られます。1つは送金時の法定通貨から暗号資産への交換であり、もう1つは資金を受け取る際の暗号資産から法定通貨へという変換です」とコジヤコフ氏はいう。

Mercuryoには、暗号資産のためのSaaSプロダクトもあり、そこでは顧客が自分の法定通貨の口座から暗号資産を手に入れ、そのデジタル資産の管理を同社に委託する。

コジヤコフ氏によると「それがバーチャルアカウントであっても、あるいは顧客のサードパーティのウォレットであっても、私たちが扱うのは銀行のための暗号資産関連処理のほとんどすべてであり、顧客は自分たちの本来の仕事に集中できます」という。

Target Globalの共同創業者であるMike Lobanov(マイク・ロバノフ)氏によると、彼の会社はBitcoinを購入する場合の各社のソリューションを実験的に試してみた。ロバノフ氏は「投資家のデューデリジェンスとして我々が計測したのは、暗号資産への変換に要する時間、すなわちApp Storeへ行ってアプリをダウンロードするところから、ウォレットにデジタル資産が収まるまでの時間を計測した」という。

トップはMercuryoの6分間だった。KYCに始まり、送金から暗号資産が得られるまでの時間だ、とロバノフ氏はいう。「2位は20分でしたが、我々のトランザクションを処理するのに時間が無限にかかっているアプリもあった。Mercuryoはこの分野のゲームチェンジャーです。私たちが初期から同社を支援してきたことは、本当に喜ばしいことです」。

同社が次のリリースとして予定しているプロダクトは、大量の複数の顧客とかギグワーカーなどに同時に一瞬にして大量決済ができるサービスだ。受取人は、地球上のどこにいてもよい。

関連記事
クロスボーダー送金のWiseがロンドン証券取引所に直接上場へ
中国のフィンテックWalletsClubは世界で使える「eウォレットのためのVisa」を目指す
送金アプリpringの法人送金サービスを日清製粉グループ本社が採用、内定者の交通費清算をキャッシュレス化

カテゴリー:フィンテック
タグ:Mercuryo資金調達暗号資産送金クロスボーダー決済

画像クレジット:Liyao Xie/Getty Images

原文へ

(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Hiroshi Iwatani)


Amazonベストセラー

返信を残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA