BMW i Venturesが持続可能な技術への投資を目的とした約336億円の新ファンドを発表

BMWグループのベンチャーキャピタル部門であるBMW i Venturesは、輸送、製造、サプライチェーンをより持続可能にする技術への投資を促進するため、新たに3億ドル(約336億円)のファンドを設立するとを発表した。

このファンドは、従来のコーポレートベンチャーキャピタルとしては運営されておらず、ドイツの自動車メーカーであるBMWの全面的な支援を受けながら、BMWから独立して活動している。2016年のシリコンバレー移転時に発表した1つ前の5億ユーロ(約660億円)のファンドは、新規投資の期間が終了した。今後、新規投資はファンドIIから行われる。

ファンドIでは、自律走行車やデジタル車両技術、カスタマーエクスペリエンス、先進的な生産に重点を置いていた。例えば、先週、BMW i Venturesからの投資を発表した自律走行トラックのKodiak Robotics(コディアック・ロボティクス)は、このファンドの投資先だった。ファンドIIでは、自動車のコア技術に特化して投資するのではなく、自動車の設計、製造、製造に至るすべての分野で、持続可能性とゼロエミッションをさらに重視していく。

「持続可能なサプライチェーンは、我々が今、本当に関心を寄せていることの1つです」と、BMW i VenturesのマネージングパートナーであるMarcus Behrendt(マーカス・ベーレント)氏はTechCrunchに話した。「BMWは二酸化炭素排出量を大幅に削減したいと発表しました。そのため、自動車からの排出だけでなく、自動車の製造や開発の際に発生する排出も含めて、あらゆる形態の二酸化炭素排出を視野に検討しています」。

BMW i Venturesは、2019年末にこうした持続可能な投資に足を踏み入れ始め、スマートな電気モーターシステムを開発しているTurntide Technologies、固体電池技術のSolid Power、金属産業の脱炭素化を目指すBoston Metalに投資した。ベーレント氏によれば、最近の投資はファンドIIがもたらすものを示唆している。新ファンドの最初の投資先は、英国の中古車販売会社であるMotorwayだ。

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「我々には今、2つの目標があります。第1は財務的な目標で、これは我々の最も重要な原動力です」と、BMW i VenturesのマネージングパートナーであるKasper Sage(カスパー・セイジ)氏はTechCrunchに語った。「世の中のコーポレートベンチャーキャピタルには、投資収益率を気にせず、投資にともなう事業上の取引から利益を得ようとするところもありますが、それは実際には投資先のビジネスを傷つける可能性があります。我々の目標は、その会社をできる限り成功させることです」。

第2の目標は「母艦」であるミュンヘンのBMWグループに戦略的価値を提供することだ。主にアーリーステージの企業に投資することで、早期に市場のシグナルをつかみ、それをBMWに伝えることができる。

「場合によっては、こういう新しい技術が存在し、あなたにも関係のあることかもしれないということを認識してもらうだけです」とセイジ氏はいう。「例えば、当社はLimeに投資しましたが、これはマイクロモビリティであり、自動車との接点はありません。しかし、これは人々がAからBへ移動する方法に関する未来の一部であることを理解することが重要です」。

ベーレント氏とセージ氏はいずれも、BMW i Venturesは投資先を買収する意図はなく、将来的にBMWや他の業界と協力できる可能性の高い企業を見つけるために最前線に立っていたいと話した。

セイジ氏によると、同社はこれまでに12社のイグジットを行い、加えて現時点で6社の上場企業と、最近S-1を申請し、間もなく上場する予定の1社に投資しているという。

「投資をするのに会社の賛同は必要ありません」とベーレント氏はいう。「デューデリジェンスのためにエンジニアに相談したり、他のスタートアップとつながりを持ったりしています。我々は両方の良いところを組み合わせようとしています。つまり、当社はファイナンシャルVCのように行動し、取締役会に席を確保し、ラウンドをリードし、迅速な決断を下すことができます。また、当社は組織内のあらゆるコネクションを企業に提供しています」。

BMW i Venturesが投資するスタートアップ企業は、BMWのエンジニアや社員とのネットワークを築くことができ、また、自動車のエコシステムがどのように機能するかをレガシー企業から学ぶことができるというメリットがある。ベーレント氏によると、Solid Powerのように技術の確立がさらに4、5年先になる企業の場合、BMWの事業部門との間に、そうした企業の成長を支援する強い協力関係があるという。

「これはWin-Winの状況です」とベーレント氏は話す。「当社は彼らを紹介し、会社に連れて行きます。彼らは適切なエンジニアと話をすることになります。契約を獲得できるという保証はありませんが、一緒に仕事をして、模索して、サポートを得て、もしかしたらすばやい解決策で助けてくれるかもしれません」。

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カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:BMW持続可能性二酸化炭素排出量二酸化炭素投資ファンド

画像クレジット:MW i Ventures

原文へ

(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi


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