意外と名車揃い!? 誰もがお世話になった教習バイクを振り返る

バイクの免許を持っている人なら、誰もが乗った経験があるのがいわゆる教習仕様のバイク。色々な表示ランプが取り付けられたシルエットは、あまりカッコいいイメージではありませんが、実は扱いやすい特性の“名車”と呼べるモデルが揃っています。

 

■定番モデルは名車の呼び声高い「CB400 SUPER FOUR」

教習仕様のバイクとして思い起こす人が多いのがホンダの「CB400 SUPER FOUR」でしょう。現在でも多くの教習所で採用されている定番モデルです。

一般の市販車と大きく異なるのは、転倒時にエンジンはマフラーなどを保護するガードが取り付けられていることと、使用しているギアや前後のブレーキ、速度などが教官から視認できるように表示ランプが装備されていることです。そのほかにも、シート高が少し下げられていたり、出力特性が教習所内で扱いやすいものとされているなど、実は細かい部分も異なります。

フロントブレーキのキャリパーは、対向4ポッドから片押し2ポッドとなっていて、これは教習所内では40km/h以上のスピードを出す機会がほとんどないことが理由と思われます。タイヤも市販車はラジアルですが、教習仕様はバイアス。温度依存性が低いという効果もありそうですが、コストを抑えるのがメインの理由でしょうね。

「CB400 SUPER FOUR」といえば気筒あたりの作動バルブ数を低回転では2バルブ、高回転では4バルブとする「HYPER VTEC Revo」(通称・VTEC)が特徴ですが、過去の教習仕様ではこの機能がキャンセルされていました。2017年以降は教習仕様でも、VTECが作動するようになっていますが、教習所内で4バルブに切り替わる機会はほとんどないと思われます。カラーバリエーションも3色が揃っているのもうれしいところですね。

教習所でこのマシンに乗ったことで扱いやすさに魅力を感じ、免許取得後も「CB400 SUPER FOUR」を選ぶ人が少なくないと言われる名車です。公道に出ればVTECが高回転側に切り替わる瞬間の気持ち良さと、排気音の変化を味わえますしね。

 

■過去には「VFR400」が使われていたことも

さらに遡ると「VFR400」の教習仕様も存在しました。筆者が免許(当時は「中免」と呼ばれていた)を取ったときも、教習車は「VFR400」でした。90度V型の4気筒エンジンはカムシャフトをチェーンではなくギア(歯車)で駆動するカム・ギヤトレーン方式を採用していて、ヒュンヒュンという独特な回転音が記憶に残っています。この方式は高回転での伝達効率が高く、当時のレースでも活躍した名車でした。

 

■大型バイクも隠れた名車揃い!?

大型自動二輪免許の教習で、使用されているのが「NC750L」というモデル。市販車「NC750S」の教習仕様ですね。シリンダーを前傾させた745ccの並列2気筒エンジンを搭載し、低重心と力強いトルク特性による扱いやすさが特徴です。市販車としてはやや地味な印象のモデルですが、乗ってみると扱いやすいだけでなく、2気筒エンジンのトルク感が気持ち良く、ずっと乗っていたくなるような特性。長距離ツーリングも快適にこなせる“隠れた名車”と呼ばるモデルです。

筆者が大型免許を取得する際に乗ったのは、空冷4気筒エンジンを搭載した「CB750」でした。ホンダの歴史ある空冷4気筒エンジンは低回転でも気持ち良く、回転上昇もスムーズだった記憶があります。今や貴重な存在である大排気量の空冷エンジンを教習で味わえたのは、今となってみれば得難い経験でした。

 

■小型免許やAT限定免許用のバイクも

近年、取得者が増えているのが、排気量125cc以下のバイクを運転できる「小型限定普通二輪免許」。最短6日間で取得でき、50cc未満の原付一種と違い30km/hの速度上限や二段階右折が必要なくなることで人気の原付二種に乗れることから、需要が高まっているようです。

このクラスの教習車として採用されているのが「CB125F」の教習車仕様。ベース車の「CB125F」は欧州で販売されているもので、国内のラインナップにはないので馴染みが薄いですが、空冷単気筒のエンジンは低速時での粘り強い出力特性が特徴。5速ミッションとの組み合わせで乗りやすいマシンです。

125cc以下のスクーターに乗れるAT小型限定普通二輪免許は、さらに短い最短2日間で取得できるのが魅力。余談ですがこの免許、実はクラッチのない「スーパーカブ110」や「ハンターカブ125」にも乗れるので、かなりコスパの高い免許です。その教習に使われているのはホンダ「スペイシー125」の教習車仕様。前後輪連動のコンビブレーキを装備し、扱いやすさには定評があります。

そして、AT限定の普通二輪免許の教習には「シルバーウイング<400>」の教習車仕様が用いられています。どちらも現行のラインナップにはなくなってしまいましたが、シンプルなデザインと機能、そして扱いやすさには定評があるモデルでした。

*  *  *

多くのライダーが初めてのバイクとして触れる教習車は、ベーシックで扱いやすいモデルが採用されていることが多いので、見た目としては地味でもライディングの基本に触れられる性能を持ったバイク揃い。改めて乗ってみると、名車と感じられるものが多いはずです。

 

<文/増谷茂樹

増谷茂樹|編集プロダクションやモノ系雑誌の編集部などを経て、フリーランスのライターに。クルマ、バイク、自転車など、タイヤの付いている乗り物が好物。専門的な情報をできるだけ分かりやすく書くことを信条に、さまざまな雑誌やWebメディアに寄稿している。

 

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