70年代から現代まで!誰もがお世話になった教習車の変遷を振り返る

自分が教習所に通っていた頃の教習車、覚えていますか?

教習車といえば運転席だけでなく助手席にも教官用のブレーキペダル、ドアミラー上(古くはフェンダーミラー上)に教官用のミラーが取り付けられているのはご存じの通り。

これ以外にも教習車(技能試験に使用するクルマ)には、乗車定員5人以上の普通自動車で、全長4.4m以上、全幅1.69m以上、軸距(ホイールベース)2.5m以上、輪距(トレッド)1.3m以上というレギュレーションがあります。つまり軽自動車などは教習車として採用できないのです。

逆に言えば、このレギュレーションさえ満たせばどんな車種でも教習車として使うことが可能。中にはかなり変わり種の教習車で免許を取ったという人もいるはずです。

そこで、過去にどんなクルマが教習車として使われていたのか、そして最新教習車についてまで、さらには教習所が「お客様」を呼ぶための変わり種教習車まで、さまざまな教習車を振り返ってみましょう。

 

■王道教習車にはどのようなものがあったのか

▲マツダ ルーチェ

古くから教習車に本気で取り組んでいるメーカーがマツダです。「多くの人にとって、人生で初めて運転するクルマが教習車。だからこそ安心できるクルマに乗ってもらい、走る歓びを感じて欲しい」という思いから教習車に力を入れていているのです。

▲マツダ カペラ

1970年代はルーチェ、80年代〜90年代はカペラの教習車が多くの教習所に導入されました。

▲マツダ アクセラ

2000年代になるとアクセラが教習車の役割を担います。2004年の導入以来、アクセラ教習車はヒットモデルとなり、全国約440か所の教習所で導入され、2014年6月には累計生産1万台を達成しました。

▲クラウンコンフォート

マツダと並び、教習車に力を入れているのがトヨタです。トヨタは長くクラウンの教習車を教習所に納入していて、90年代に入るとタクシー用のクラウンコンフォートを教習車に使いました。

ほかにもマークII・クレスタ・チェイサーの3兄弟、カリーナやコロナなども教習車として採用されました。

▲日産 セドリック

▲日産 ローレル

日産は1970年代からセドリック/グロリアを教習車として使っていました。また、ローレルの教習車で免許を取ったという人もいるはずです。

▲日産 ブルーバード

1980年代からはブルーバードの教習車が主流に。この流れでブルーバードシルフィにも教習車が設定されます。

▲日産 ティーダラティオ

2000年代になるとティーダのセダン版であるティーダラティオに教習車が設定されました。

他のメーカーではホンダアコードやシビックフェリオ、三菱ランサーやギャランなどが教習車として採用されました。

教習車にはサイズ上の規定はありますが、ボディタイプに関する規定はありません。それでもほとんどの教習車はセダンタイプ(しかも90年代以降は比較的小型なセダン)が用いられました。

これは、教習時に後部座席にも学生を乗せるケースがあること、見切りの良さが運転技術を教えるのに適しているなどの理由から選ばれていたのだと思われます。縦列駐車の教習の際「3番目の柱がCピラーのところに来たらハンドルを切れ」などと教わりましたよね。

 

■現行型には日本未発売モデルをベースにした教習車も!

▼トヨタ教習車

トヨタが現在製造している教習車のネーミングは、そのものズバリ「教習車」。2018年2月に発売がスタートしたモデルで、カローラアクシオをベースに開発されました。

インパネ中央に教習生の位置感覚の目安となるセンターマークが配置され、教官の確認用に、センタークラスターにスピードメーター、ブレーキランプやウインカー点灯状態を表示するインジケーター、ホーンボタンが設置されています。

 

▼マツダ教習車

マツダが2019年4月に発表した新型の教習車は、トヨタ同様「マツダ教習車」というストレートなネーミングです。マツダの魂動デザインを採用したモデルですが、何をベースに教習車仕様にしているかわかりますか?

実はこれ、日本では発売されていないMazda2(デミオ)のセダンを教習車に仕立てたもの。Mazda2セダンはタイで生産されており、マツダは教習車のためにわざわざタイからこのクルマを輸入しています。このことからもいかにマツダが教習車に力を入れているかがわかるはず。

マツダ教習車は当然スカイアクティブ技術がフルに盛り込まれていて、アクセルペダルは運転のしやすさ、自然なドライビングポジションをとれることで定評があるオルガンペダルに。そしてコーナリング時にステアリングを切り始めた瞬間からエンジンの駆動トルクを制御し、自然で安定したコーナリングを実現するG-ベクタリングコントロールを搭載。

このクルマで練習して免許を取得した後に普通のクルマに乗ると、クルマの挙動が全然違って慌ててしまうのではないかと心配になるのは筆者だけでしょうか…。

 

▼スバル インプレッサG4

マツダ同様、スバルも教習車に力を入れているメーカーです。2018年1月にはインプレッサG4の特装車として新しい教習車を発売しました。インプレッサG4はFFのほか、4WDもラインナップされるので、雪国の教習所では重宝される存在です。

自然で滑らかな車両挙動に定評があるスバルグローバルプラットフォームを採用し、0次安全にこだわったG4での教習は、教習生もリラックスしてステアリングを握れるかもしれません。

ちなみにホンダは2015年7月、グレイスに教習車を設定しました。ただ、グレイスは2020年7月に生産終了に。現在、教習車として販売されているのはトヨタ教習車、マツダ教習車、スバルインプレッサG4のみになります。

 

■こんな変わり種教習車もありました

教習所によっては、多くの教習生を獲得するために他では導入していない車両を教習車に採用するケースもあります。とくに日本の景気がよかった80年代〜90年代には珍しい教習車が結構ありました。

 

▼トヨタソアラ

静岡県にある教習所が、過去に導入した教習車として2代目ソアラを紹介していました。20系ソアラは当時の若者の憧れの存在。免許取得前にこのクルマに乗れるというのは、教習生にとって最高の贅沢だったに違いありません。

教習所のパンフレットにはソアラと一緒に女性モデルが写っています。教習生はいろいろなことを想像したでしょうね。

 

▼メルセデス・ベンツ190クラス

W201系190クラスの教習車は、80年代に結構話題になったのを覚えている人もいるでしょう。実はこれ、教習所が教習車として改造したものではなく、ヤナセが正規に販売した教習車だったようです。ネット上には当時のパンフレットもありました。ただこの教習車を導入したのは東京・八王子にある教習所など、いくつかに限られていました。

190がデビューした時は“小ベンツ”などと揶揄されたりもしましたが、コンパクトボディの中に贅を尽くした装備が惜しみなく盛り込まれており、今なお名車として語り継がれるモデルです。これで高速教習を受けたら最高の気分でしょうね。

 

▼アウディA3セダン

東京と神奈川で数カ所の教習所を展開する大手教習所では、ドイツのプレミアムブランドのモデルを教習車に採用することで話題に上がることがあります。

A3セダンのほか、BMW X1、BMW 3シリーズを教習車に選んだことでも有名。ドイツ車で教習を受けて、免許を取ったらしばらく親のドイツ車を借りて、その後自分もドイツのプレミアムモデルを選ぶという人もいるのでしょうね。

 

▼日産リーフ

初代と2代目リーフを教習車に採用する教習所は結構あります。多くの場合は一般の教習は普通の教習車で行い、リーフは高速教習で使うようです。

免許を取得する前に電気自動車のステアリングを握る機会があるというのは、これからの時代ではいいことなのかもしれないですね。

 

<文/高橋 満(ブリッジマン)

高橋 満|求人誌、中古車雑誌の編集部を経て、1999年からフリーの編集者/ライターとして活動。自動車、音楽、アウトドアなどジャンルを問わず執筆。人物インタビューも得意としている。コンテンツ制作会社「ブリッジマン」の代表として、さまざまな企業のPRも担当。

 

 

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