昔も今もボルボはロングドライブがラク!「XC90」で300km走って分かったその理由

先日、ボルボで最も大きなSUVである「XC90」で、長野から東京都心まで300km超のロングドライブを楽しんだ。

そこで改めて実感したのは、ボルボは長距離を走っても疲労感が驚くほど少ないということ。目的地へ着いても、そのまま青森まで向かえるのではないか? と本気で思ったほどだった。

XC90、そしてボルボは、なぜロングドライブでも疲れにくいのか? 今回はその理由について検証する。

■古いボルボはハンドリングとシートが絶品

世の中のクルマは、おおむね2種類に大別できる。ひとつはロングドライブで疲れやすいクルマ。そしてもうひとつはロングドライブで疲れにくいクルマだ。

ボルボの各モデルは間違いなく後者に属す。筆者の知る限り、日本でワゴンブームを起こした「850」の時代から、すでにボルボの各モデルは長時間ドライブしても疲れ知らずだった。しかし今回、XC90でのロングドライブを通じて感じたのは、疲れにくさを生む要因が、最新のボルボとかつてのボルボとではかなり異なっているということだ。

かつてのボルボがロングドライブでも疲れにくかった要因、それはハンドリングフィールとシートに尽きる。

ハンドリングは走行時の挙動が穏やかで、高速巡行時においては直進安定性が高く、ハンドル修正の必要性が少ない分、長時間ドライブでも疲れにくかった。一方、「850R」などのスポーティモデルを除けば俊敏性に乏しく、峠道などはかなり苦手。ドライビングプレジャーとは無縁といっても過言ではなかった。一方シートは、乗員のカラダ全身を包み込み、座り疲れしない仕立てだった。

このふたつの特徴は、古き良き時代のアメ車のように映るかもしれない。実はボルボが本拠を置くスウェーデンはヨーロッパの国としては国土が広く、かつてはアメリカ車のような巡行性能が求められていたという話がある。また同社にとって、アメリカが重要なマーケットだったことも、こうした特徴と無関係ではないだろう。北欧生まれながらどこかアメ車的な乗り味を感じられたのは、そういう理由があったのだ。

しかし、それも今や過去の話。2000年代に入って「V50」や初代「V60」が登場すると、ボルボのクルマづくりは大きく変化する。特にハンドリング性能は、新時代の到来を感じさせるものへと激変した。

あくまで推測に過ぎないが、当時ボルボはフォードグループの傘下に収まっていたこともあり、一部車種のプラットフォームなどをグループ他社と共用していた。筆者はそのことが、クルマづくりの変化につながったのではないかと見る。

その後、フォードグループから離脱したボルボは、2015年に独自開発モデルとなる現行XC90を発表。以降、彼らのクルマづくりはさらなる進化を遂げる。乗り味もシートも、かつてのボルボとはガラリと変わったのである。

■ドライバーの操作にリニアに反応するパワーユニット

クルマづくりがガラリと変わったにも関わらず、最新のボルボはなぜ、ロングドライブでも疲れにくいという美点を継承できているのか?

その理由のひとつは、落ち着いた操縦性にある。かつてのアメ車ライクのハンドリングとは異なり、イマドキのボルボは峠道でも思い通りにスイスイ走ってくれる。大型SUVのXC90であっても、昔のボルボとは違って“曲がるのが苦手”といった挙動は一切見せない。

それでいて、高速走行時の安定感や直進性に関しては、かつてのボルボ車と変わらない落ち着きがある。走行中のハンドル修正が少ないからドライバーの負担は少なく、それが長時間ドライブ時の疲れにくさにつながっている。

付け加えると、静粛性の高さも疲れにくさの要因のひとつだ。XC90は1000万円級のプレミアムカーだから当然といえば当然だが、車内の静粛性が素晴らしい。実は騒音というのは、想像以上に疲れにつながるもの。XC90の静粛性の高さも、疲れにくさの要因につながっている。

さらに、完成度の高いパワートレーンも疲れにくさの要因だ。今回、ロングドライブに連れ出したモデルは「XC90 B6 AWD インスプリクション」というグレードで、“B6”とは2リッターガソリンエンジンにふたつの過給機とモーターを組み合わせたマイルドハイブリッド仕様を指す。車重が2.1トンを超える重量級なので、2リッターエンジンでは力不足じゃないかと危惧する人もいるかもしれないが、ターボ&電動スーパーチャージャーというふたつの過給器がそれを解消。エンジンのみで最高出力300馬力、最大トルク42.8kgf-mを発生するから、力強さは十分だ。

中でも高速走行時に「いいな!」と感じたのは、モーターを使って多くの空気をエンジン内に送り込むことで、トルクアップとアクセルレスポンスを良化させる電動スーパーチャージャーの効果だ。アクセル操作に対するエンジンの反応、いわゆる“ツキ”が素晴らしく、例えば、ちょっとだけスピードアップしようとほんのわずかだけアクセルペダルを踏み込んだ際にもトルクが素早く立ち上がり、ドライバーの意図を汲んだかのようにリニアに反応してくれる。

ドライバーの操作に対するクルマの動きにズレがないからストレスフルで、結果的に疲労感の軽減へとつながるのである。

■制御系に一日の長があるボルボの先進安全装備

またXC90は、シートの出来栄えもいい。かつてのボルボのようにクッションがぶ厚く、ドライバーをやさしく包み込んでくれるような感覚は、今のボルボのシートにはない。しかし、カラダにフィットして体重をしっかり支えてくれるから、カラダの一部分だけに負担が掛かることはなく、何より長時間座り続けていても姿勢がずっと一定だから、お尻の位置がズレて座り直すなんてことがないのが素晴らしい。これはリアシートも同様。シートづくりの方法は変わっても、座り疲れしないという伝統は守られているのだ。

そしてもうひとつ、かつてのボルボになくて今のボルボにはあるのが、先進技術を使った運転アシスト技術だ。

ボルボは他メーカーに先立ち、高速走行時にドライバーがアクセルを操作しなくても前走車に合わせて車速を自動調整してくれるアダプティブ・クルーズ・コントロールや、車線の中央を走るようハンドルをアシストしてくれる機能などを積極採用してきた。それらは今でこそ珍しい機能ではないが、一日の長があるボルボのそれは、制御技術でライバルをリードしている。実際に使ってみても正確で安心感が高く、ロングドライブ時の疲労感を軽減してくれる。

筆者は仕事柄、いろんなクルマを試す機会に恵まれているが、ロングドライブ時のボルボの疲れにくさはやはり別格だ。要因こそ変化してはいるものの、長時間運転しても疲れにくいという美点は、最新のボルボにもしっかり受け継がれている。

<SPECIFICATIONS>
☆B6 AWD インスプリクション
ボディサイズ:L4950×W1960×H1775mm
車重:2130kg
駆動方式:4WD
エンジン:1968cc 直列4気筒 DOHC ターボ+スーパーチャージャー+モーター
エンジン最高出力:300馬力/5400回転
エンジン最大トルク:42.8kgf-m/2100~4800回転
モーター最高出力:13.6馬力/3000回転
モーター最大トルク:4.1kgf-m/2250回転
価格:1004万円

>>ボルボ「XC90」

文/工藤貴宏

工藤貴宏|自動車専門誌の編集部員として活動後、フリーランスの自動車ライターとして独立。使い勝手やバイヤーズガイドを軸とする新車の紹介・解説を得意とし、『&GP』を始め、幅広いWebメディアや雑誌に寄稿している。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

 

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