ウェザーニューズが周囲50キロを30秒で3次元観測する新型レーダーの実証実験、ゲリラ豪雨や線状降水帯の予測精度向上へ

ウェザーニューズが周囲50㎞を30秒で3次元観測する新型レーダーの実証実験、ゲリラ豪雨や線状降水帯の予測精度向上へ

ウェザーニューズは10月14日、高頻度観測小型気象レーダー「EAGLEレーダー」を千葉県内に設置し、レーダーの有効性を確認する実証実験を開始したと発表した。2022年6月にかけてレーダーの精度評価と最終調整などを行う。

EAGLEレーダーは、周囲360度を高速スキャンし雲の立体構造を高頻度で観測するというもの。半径50km以内の積乱雲の発達状況をほぼリアルタイムに捉えられるため、ゲリラ豪雨や線状降水帯・大雪・突風・ヒョウなど、突発的かつ局地的に発生する気象現象をより正確に把握できるとしている。

道路の管理事業者における除雪作業判断の支援など新サービスも開発するほか、2年以内に日本を含むアジアの計50カ所への設置を計画。グローバルにおける気象現象の監視体制を強化する。

高頻度観測小型気象レーダー「EAGLEレーダー」

ウェザーニューズは、2009年に小型気象レーダー「WITHレーダー」を開発し、全国80カ所に設置・運用してきた。10年以上にわたり、ゲリラ豪雨や突風などの観測実験を行った結果、小型気象レーダーの有効性を確認できたという。しかし、従来のWITHレーダーでは、全方位を3次元で観測するには5分程度かかるため、雲が急激に発達する過程やその変化を詳細に捉えることは困難だった。

そこで、より高頻度な観測を可能にするため、WITHレーダーの後継機としてEAGLEレーダーを開発。同レーダーは、360度全方位を高速スキャンすることで、雨粒の大きさや雲の移動方向を立体的にほぼリアルタイムで観測できる独自の気象レーダーという。最短で5秒ごとに1回転し、半径50kmの詳細な3次元観測データを30秒で取得できる。これにより、ゲリラ豪雨や線状降水帯、大雪、突風、あられ、ひょうなど、局地的に発生する気象現象の把握が可能としている。

ウェザーニューズが周囲50㎞を30秒で3次元観測する新型レーダーの実証実験、ゲリラ豪雨や線状降水帯の予測精度向上へ

千葉県内八街市に設置し実証実験を開始

同社は、同レーダーを千葉県八街市に設置し、実証実験を開始した。2022年6月にかけて、レーダーの精度評価と感度の最終調整などを行う。

レーダーの活用方法として、まずはウェザーニューズの予報センターでレーダーを監視し、観測データを数時間先の予報精度向上に活用する。また、従来のWITHレーダーと同様に雲の様子を3次元的に把握するだけでなく、実証実験と並行して、道路の管理事業者における除雪作業の判断支援や迂回ルートの推薦など、企業向けのサービスを開発する。

また同レーダーの展開を進めるため、総務省(情報通信審議会 情報通信技術分科会 陸上無線通信委員会 気象レーダー作業班)と無線免許の新制度策定について検討しているという。新制度が実現すると、同レーダーの設置が加速するとともに、観測データの販売も可能となる見込みとしている。気象データを扱う企業・研究機関などに活用してもらうことで、サービスへの利用や技術の発展に寄与できるとしている。ウェザーニューズが周囲50㎞を30秒で3次元観測する新型レーダーの実証実験、ゲリラ豪雨や線状降水帯の予測精度向上へ

2023年までに50台設置、日本・アジアの気象現象の監視体制を強化

同社は、2014年よりオクラホマ大学と共同でEAGLEレーダーの開発を進めてきたという。2017年6月には、航空宇宙向けの電子機器やシステムを設計・製造しているカナダNANOWAVE Technologiesとレーダーの量産に関する覚書を締結した。

気象レーダーの仕様変更や生産ラインの変更のほか、世界的な半導体不足による影響を受けて当初の計画からは遅れが生じたものの、現在の計画では、今後2年以内に日本を含むアジアの計50カ所にレーダーを設置する予定。引続きレーダーの設置を進め、観測データが十分ではないアジア地域における気象現象の監視体制を強化するという。


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