“クルマの味”が濃密!フィアット「500」のキュートなルックスと活発な走りは不滅です

日本上陸から13年以上が経過したフィアットのロングセラー「500(チンクエチェント)」が、先頃マイナーチェンジ。かわいらしいルックスや元気のいい走りはそのままに、各部をさらに磨き込んできました。

今回は、そんな定番モデルのエントリーグレードをドライブ。日本でも多くの人に愛され続ける500の魅力を再検証します。

■500は日本で最も成功を収めたイタリア車

2008年春に日本の地を踏んだフィアット500。それから13年以上が経過したロングセラーモデルであるにもかかわらず、日本でのセールスは依然として好調です。

すでに5万台以上の500が日本へと上陸。日本でのセールスでは苦戦を強いられがちなイタリア車ながら、500をベースとしたアバルトブランドの「595」シリーズとともに根強い人気をキープし続けています。

本国ではすでに、新型の「500e」が登場していますが、こちらは電気自動車専用モデルということもあり、エンジン車である従来モデルも併売中。将来的にどのようなモデル構成となるのかまだ不明ですが、エンジン車もまだまだ現役として活躍しそうです。

そんな“日本で最も成功を収めたイタリア車”ともいうべき500が、先頃マイナーチェンジ。グレードの名称や体系を変更するとともに、各種装備の充実が図られ、シート生地の刷新や新しいボディカラーの追加なども行われました。

新しいラインナップは、エントリーグレードの「カルト(Cult)」と、上級版である「ドルチェヴィータ(Dolcevita)」の2種類。前者には8バルブの1.2リッター4気筒SOHCエンジンと、“ツインエア”と呼ばれる875ccの2気筒エンジンが、後者にはツインエアのみが用意されます。ちなみにオープン仕様の「500C」には、カルトに1.2リッター4気筒を、ドルチェヴィータにツインエアが搭載されています。

装備の変更に目を向けると、カルトは前身である「ポップ(POP)」グレードに対し、クルーズコントロールやパドルシフト、スピードリミッターなどが標準装備され、高速移動時の快適性や操る楽しさがアップ。一方のドルチェヴィータも、前身の「ラウンジ(Lounge)」グレードに対してクルーズコントロールが標準装備となり、フロントフェンダーに “Dolcevita”のエンブレムが追加されています。

加えて、カルト、ドルチェヴィータともにシート生地が変更されました。カルトはシートおよびドアトリムの色が濃いブルーへと変更され、よりモダンな雰囲気に。ドルチェヴィータはブラックとアイスのツートーンカラーとなり、上質な雰囲気が強まっています。

ボディカラーは、シチリアオレンジとポンペイグレーというふたつの新色が加わり、ボサノバホワイト、パソドブレレッドと合わせ全4色に。ちなみに新色のシチリアオレンジはカルト専用のカラーなので、この色を目当てにあえてエントリーグレードを選ぶという人も多そうです。

■シチリアオレンジの500はまるでビタミン剤のよう

今回の試乗車は、1.2リッターの4気筒SOHCエンジンを搭載する、シリーズで最もベーシックな「500 1.2 カルト」です。

ボディカラーは新色のシチリアオレンジで、室内に目を向けると、インパネにもボディ同色のデコレーションパネルがあしらわれています。500の丸みを帯びたかわいらしいルックスと上質なインテリアは、鮮やかなシチリアオレンジとも好相性。見る者、乗る者を自然と元気にさせてくれる、まるでビタミン剤のような仕様です。

カルトのシート生地として新たに設定された濃いブルーのファブリックは、表面に“FIAT”のロゴがあしらわれた凝ったデザイン。ロゴのデザインが秀逸なのか、色づかいが絶妙なのか理由は分かりませんが、多数のロゴを散りばめたにも関わらず悪趣味な印象はなく、有名ブランドのスポーツウエアに通じるセンスの良さが感じられます。

運転席に腰を下ろすと、キャビンの居心地が良くなったことに気づきます。従来モデルはシート座面のクッションが厚かったため、座高の高い筆者には座面の位置が高すぎて、頭上空間が窮屈に感じられました。座面の角度を調整できるレバーも付いていましたが、窮屈さの解消には至りませんでした。

ところが新型のフロントシートは、座面のクッションが適切な厚さに変更されたのかヒップポジションが低くなっているようで、座ってみても頭上の窮屈感がありません。座面の角度調整レバーがなくなったのは少々残念ですが、それでも、より快適なドライビングポジションをとれるようになりました。もちろん、座り心地は良好。今回のマイナーチェンジにおいてシートに関する公式発表はありませんが、密かに改良の手が加えられているようです。

カルトはベーシックなグレードだけあって、装備は必要十分といったところ。とはいえ、マニュアルエアコンや“Apple CarPlay”&“Android Auto”対応のインフォテインメントシステム、クルーズコントロールといった快適装備は完備されています。

そのため、普段使いする限りは不満を覚えることはないでしょう。

■スペックからは想像もつかない元気のいい加速

1.2 カルトに搭載されるエンジンは、自然吸気の1.2リッター直列4気筒SOHCエンジン。最高出力は69馬力、最大トルクは10.4kgf-mと、昨今の高出力ユニットを見慣れた目には非力に映りますが、アンダー1トンという軽量ボディの恩恵もあって、想像以上に元気良く走ってくれます。

“デュアロジック”と呼ばれる、クラッチ操作を自動化した5速のセミオートマチックトランスミッションは、変速操作を自動で行ってくれるオートモードが備わってはいるものの、やはり本領を発揮するのはMTモードで走る時。ドライバーの意思で積極的に高回転域までエンジンを回してやると、スペックからは想像もつかない元気のいい加速を披露してくれます。

しかも、先のマイナーチェンジでハンドルの裏にパトルシフトが装着されたこともあり、より積極的に走りを楽しめるようになったのもポイント。「−」側のパドルを左手で操作すれば、シフトダウンして駆動力を増すことができたり、エンジンブレーキを効かせたりすることができるので、コーナーの入口や下り坂、坂道を上る際なども痛痒を感じることなく走れます。また、パドルシフトはハンドルから手を離さず変速操作を行えるので、リズムよく安全に走れるのも魅力といえるでしょう。

マイナーチェンジを受けても、5ナンバーサイズに余裕で収まる500のコンパクトなボディは不変。狭い路地でもスイスイ走ってくれます。それでいて、高速クルージング時の安定性は上々。軽自動車と同等のコンパクトさながら、長距離ドライブも余裕でこなしてくれます。加えて、今や小径の14インチのホイールと175/65R14というタイヤにより、乗り心地は結構ソフト。おだやかな500のキャラにマッチした乗り味といえそうです。

2008年春に上陸したロングセラーモデルだけあって、先進安全装備などはイマドキのクルマと比べると確かに見劣りしますが、そんなアナログ感こそが何物にも代えがたい500の魅力なのも事実です。ハイテク満載の最新車種では希薄な“クルマらしさ”を、まだまだ現役の500は濃密に味わわせてくれます。

<SPECIFICATIONS>
☆1.2 カルト
ボディサイズ:L3570×W1625×H1515mm
車重:990kg
駆動方式:FWD
エンジン:1240cc 直列4気筒 SOHC
トランスミッション:5速AT(シングルクラッチ式)
最高出力:69馬力/5500回転
最大トルク:10.4kgf-m/3000回転
価格:221万円

>>フィアット「500」

文/上村浩紀

上村浩紀|『&GP』『GoodsPress』の元編集長。雑誌やWebメディアのプロデュース、各種コンテンツの編集・執筆を担当。注目するテーマは、クルマやデジタルギアといったモノから、スポーツや教育現場の話題まで多岐に渡る。コンテンツ制作会社「アップ・ヴィレッジ」代表。

 

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