AI、宇宙開発、量子コンピューター……。2022年も目が離せない、世界のテックニュース4選を振り返り

2021年も、ワクワクするようなテクノロジーの進展がたくさん見られました。10年前には、仮想現実環境で仕事する、車が空を飛ぶ……といった話は完全にSFでしたが、いよいよそれが現実のものになりつつあります。

メタバースやモビリティもいいですが、本記事ではSDGs、宇宙開発、量子コンピューター、AIに関する4つのニュースをピックアップしてみました!

フードロス削減を目指す屋内菜園システム

Credit: Natufia

8月にはIPCC(気候変動に関する政府間パネル)による第6次報告書が公表され、気候変動の抑制と悪影響軽減をテクノロジーで……との機運がますます高まっています。

太陽光発電をはじめとする再エネ活用の道をコンピュータモデルで探ったり、蓄電を効率化したりといった取り組みが盛んに行われているほか、AIやセンシングを活用して個人の炭素排出枠を設けるといった話も浮上してきています。また、温室効果ガスを地中貯蔵するコストと時間を省くためにディープラーニングを活用しようとの取り組みも……。

今回紹介するのは、すでに実用化されている屋内菜園システム「Natufia Smart Garden」です。キッチンに設置できるこのシステムでは、水耕栽培を自動化・最適化し、1日2回の収穫が可能に。気候や季節に関係なく野菜や果物が育てられ、食品廃棄は最小限です。

キング・アブドゥッラー科学技術大学(KAUST)は、Natufiaをサウジアラビアに誘致。食品サプライチェーンへの依存リスクを軽減しようとしています。

Natufiaは、NASAが主催する宇宙での食品生産テクノロジーに焦点を当てたコンペ「Deep Space Food Challenge」の勝者にも選ばれていて、将来的には宇宙でも新鮮な野菜が食べられるようになるかもしれません。

Natufia

小惑星衝突に備えた演習

Image: AdobeStock

前澤友作さんが国際宇宙ステーションからYouTube配信を行い、私たちにとってもかなり身近になった宇宙。

ほかにも、9月にはSpace Xにより全民間人宇宙飛行が実現するなど、宇宙開発テクノロジーの進歩が目に見えて加速しています。2020年に遂行された、Space Xによる初の有人飛行ミッション「Demo-2」がはるか昔のことのよう。ちなみにSpace Xは、2021年中に31回のFalcon 9打ち上げを成功させていて、これは中国による長征5号の37回に続く快挙となっています。

一方で、ロケット打ち上げのような派手さはないかもしれませんが、地球防衛の準備が着々と進められています。4月に開催された惑星防衛会議(Planetary Defense Conference)では、地球に衝突する可能性のある小惑星が発見されたと仮定して演習が実施されました。未知の小惑星が地球へ衝突するシナリオは実際にあり得るもので、対策が求められているのです。

宇宙船を衝突させて小惑星の軌道を変える技術の開発も進められていて、11月にはNASAが計画するテストミッション、DART(Double Asteroid Redirection Test)用の宇宙船が打ち上げられています。

ESA

市販の量子プロセッサー

Image: AdobeStock

Googleが51量子ビットの量子プロセッサ「Sycamore」で量子超越性を達成したのは2019年。2021年11月にはIBMが127量子ビットの量子プロセッサ「Eagle」を発表するなど、それ以降も量子コンピューター技術のブレークスルーが続いています。

今回取り上げるQUANTWAREは、デルフト工科大学からスピンアウトした量子コンピューター系スタートアップです。同社の発表した量子プロセッサ「SOPRANO」は5量子ビットとなっていますが、市販品の超伝導方式量子プロセッサーである点で革新的です。

実用的な量子コンピューターには少なくとも数千量子ビットを要するといわれていますが、量子ビットを増やすに連れてこれを制御するための配線が膨大になるなど、ハードウェアのスケーラビリティに課題を抱えています。同社は12月に、デジタル量子コンピューティングプラットフォームを開発するSEEQCとの提携を発表していて、スケーラブルな量子コンピューティングプラットフォームを実現しようとしています。

QUANTWARE

文章生成AI、GPT-3の一般公開

Image: AdobeStock

現在のAIブームは、2012年に猫の画像認識精度でGoogleのAIが人間を超えたことに端を発していますが、約10年経った現在、自然言語処理の分野でもAIが人間を超えつつあります。

この現象をけん引するのが、Open AIによる言語モデルGPT-3です。人間に近い文章を生成する同言語モデルは2020年6月に商用APIが公開され、それ以来、ヘルプデスクのチケットを集約して要約したり、映像作品の台詞を生成したり……といった方法で活用されてきました。

また、自然言語で指示するとコードを生成してくれるCodexなども登場していて、一部の分野においてはすでに人間から置き換え可能なほど高い専門能力を発揮している状況です。

そんなGPT-3ですが、今年8月に安全性が整ったことを理由にAPIを一般公開。ユースケースが爆発的に増えると予想されます。

ちなみに次世代のGPT-4ですが、AI/認知科学系のライターAlberto Romero氏がTowards Data Scienceの記事上で、“パラメータ数がGPT-3の約500倍、100兆個にもなる”といったCerebrasの最高経営責任者(CEO)、Andrew Feldman氏の発言内容を紹介。質的な飛躍を伴う可能性を示しています。

OpenAI

(文・山田洋路)


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