筑波大学は1月18日、熱帯から中緯度へと大規模な水蒸気が川のように流れ込む現象「大気の川」(atmospheric river)と東アジアでの豪雨との関係を、気象庁気象研究所との共同研究で明らかにした(筑波大学生命環境系 釜江陽一助教、気象庁気象研究所 川瀬宏明主任研究官)。気温が4度上昇すると、大気の川によって生じる「経験したことのない大雨」は、春には約3倍に増えるという。
北米西岸や欧州では、大気の川が豪雨を引き起こすことはわかっていたが、それ以外の地域で大気の川が生じるメカニズムや、地球温暖化が進行したときの活動の変化に関する理解は進んでいなかった。これまでに研究グループは、東アジアにおける過去60年間の日々の大気の川の振る舞いを調査し、降雨強度のデータとの比較を行い、その発生頻度と強度を明らかにした。また、大気大循環モデルを用いた大規模アンサンブル実験で、地球温暖化が進行すると、大気の川がより頻繁に東アジアを通過するようになることも突き止めていた。
これらの成果を踏まえ、研究グループは、東アジアを対象とした高解像度(水平解像度20km)の地域気候モデルを用いた解析により、大気の川たもたらす豪雨の特性が、地球温暖化によってどう変化するかを調査した。その結果、現在よりも気温が摂氏4度上昇すると、豪雨の発生頻度が、春には約3.1倍、夏には約2.4倍に増えることがわかった。
大気の川は、標高の高い山地の南西斜面にぶつかり強い雨を降らせる。その際の降雨強度を検証すると、気温が4度上昇した地球温暖化時に発生する豪雨のうち、春は77%、夏は46%が大気の川によって生じるものであることもわかった。北アルプスの上空を通過する水蒸気の流れは、地球温暖化時には「経験したことのない大雨」を振らせるが、その大部分が大気の川の通過によるものとなる。特に台風の接近が少ない春においては、「経験したことのない大雨」のうち大気の川によるものの割合は89%にのぼるという。
この研究により、地球温暖化にともない「経験したことのない大雨」が増えることが予測され、そこに大気の川が重要な役割を果たすことが、世界で初めて解明された。大気の川がもたらす降水特性について、また台風や線状降水帯との相互作用について解明を進めることで、豪雨災害の予測の精度を向上させ、対策に役立てることができるということだ。
画像クレジット:Clay LeConey on Unsplash
- Original:https://jp.techcrunch.com/2022/01/21/atmospheric-river/
- Source:TechCrunch Japan
- Author:tetsuokanai
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