家賃支払いなどでクレジットスコアを構築し「人種間の貧富の差を埋める」フィンテックEsusuが150億円調達しユニコーンに

1億人超の米国人が、毎月の家計で最も大きな支出である家賃に月平均1100ドル(約13万円)、合計で年1兆4000億ドル(約161兆円)以上を費やしている。しかし、報告によると、そのうちの9割の人は家賃を期限どおりに支払ってもクレジット(信用)を得られていない。

さらに踏み込んで見ると、消費者金融保護局の2020年のレポートによると、米国では4500万人超がクレジットスコアを持っていない。この層の多くは、経歴や人種によって経済的に疎外されている。

移民やマイノリティにクレジット構築のための家賃支払い報告やデータソリューションを提供するフィンテックのEsusu(エスス)は米国時間1月27日、シリーズBラウンドで1億3000万ドル(約150億円)を調達したと発表した。

このラウンドで創業4年のEsusuの評価額は10億ドル(約1150億円)に達し、米国で、そして世界的にも数少ない黒人経営ユニコーンの1社になった。ソフトバンク・ビジョン・ファンド2が同ラウンドをリードし、Jones Feliciano Family Office、Lauder Zinterhofer Family Office、シュスターマン財団、ソフトバンク・オポチュニティ・ファンド、Related Companies、Wilshire Lane Capitalが参加した。

移民やアフリカ系米国人は、他の人に比べてクレジットスコアが低いか、そもそもクレジットスコアを持っていない。また、彼らは高利貸しに直面する機会が多く、これにより経済的不安の連鎖に陥っていることが多い。そのため、富を築くのに強力なクレジットスコアを必要としながらも、クレジットを築くための足がかりを持っていない。

Esusuの共同創業者で共同CEOであるナイジェリア生まれの米国人Abbey Wemimo(アビー・ウェミモ)氏とインド系米国人のSamir Goel(サミール・ゴエル)氏は移民家庭で育ち、この金融的排除を身をもって体験した。2人はこの疎外されたグループのクレジットスコアを構築し、家賃支払いを通じて「データ活用による人種間の貧富の差を埋める」ために2018年にEsusuを立ち上げた。

ニューヨークに本社を置く同社は、不動産オーナーや住宅プロバイダーと提携し、全米集合住宅協会(NHMC)のリストにある大手家主の35%と連携している。パートナーには、Goldman Sachs、Related Companies、Starwood Capital Group、Winn Residentialなどがいる。

Esusuは賃借人のクレジットスコアを強化するために、プラットフォームに登録した賃借人の期日までの支払データを取得し、3大信用情報機関(Equifax、TransUnion、Experian)に報告する。これにより、賃借人は時間をかけてクレジットスコアを向上させることができ、不動産オーナーは退去勧告を軽減できる。

Esusuは、不動産管理者とオーナーに3500ドル(約40万円)のセットアップ料と1住居あたり毎月2ドル(約230円)を請求する。一方、賃借人は、年間契約料として50ドル(約5760円)を支払い、家賃支払いデータを信用情報機関に報告する。

Esusuは前年比600%で成長していると創業者2人はTechCrunchに語った。現在、250万戸超の住宅が同社のサービスを利用していて、総リース量(GLV)は米全体で30億ドル(約3460億円)以上だ。同社が半年前に報告した200万戸、総リース量24億ドル(約2765億円)超から増加している。

Esusuが2020年4月に自社プラットフォームで調査を実施したところ、パンデミックの影響により62%のユーザーが家賃を期限内に支払えないことが判明し、同社は家賃救済ファンドを立ち上げた。クラウドファンディングや非営利のインパクト投資ファンドを通じて50万ドル(約5800万円)近くを調達した。

それから2年経った現在もこのプログラムは続いていて、Esusuはその規模を拡大し、何千人もの賃借人を自宅にとどめている。このプログラムには、貸借対照表に17億ドル以上(約1960億円)を計上するほどのパートナーが集まっていると創業者らは語った。

ウェミモ氏とゴエル氏は声明で「私たちは、データを使って人種間の貧富の差を埋め、この国の低・中所得世帯により公平な金融機会を創出するというビジョンを持ってEsusuを設立しました」と述べた。「クレジットスコアを取得し向上させることで、個人、家族、コミュニティが長期的な経済的目標を達成できるようにしつつ、経済的アイデンティティを強化しています」。

Esusuは、チームの拡大(正確には従業員を3倍に増やす)「製品イノベーションによる成長の加速、市場で最も包括的な金融ヘルスプラットフォームの構築」のために調達した資金を使用する計画だ。

2021年7月の1000万ドル(約11億円)のシリーズAラウンドのリードインベスターであるMotley Fool Venturesは今回の新ラウンドで再投資した。その他の既存投資家であるConcrete Rose Capital、The Equity Alliance、Impact America Fund、Next Play Ventures、Serena Ventures、Sinai Ventures、TypeOne Venturesも参加した。Esusuの累計調達額は1億4400万ドル(約165億円)超となった。

今回の資金調達でEsusuは、ユニコーンのステータスを獲得している世界900社超の中で、黒人が主導・所有するスタートアップという切望されている小さなグループに加わる。このグループには、評価額30億ドル(約3460億円)の米国のスケジュールアプリCalendly、英国拠点のフィンテックで50億ドル(約5760億円)と評価されたZepz、評価額12億ドル(約1380億円)のデジタル保険スタートアップMarshmallow、そしてアフリカのフィンテックFlutterwave(評価額10億ドル、1150億円)、Chipper Cash(同20億ドル、2300億円)、Interswitch(同10億ドル)などが含まれる。

原文へ

(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Nariko Mizoguchi


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