Polygon(ポリゴン)が、新たなベンチャー資金調達ラウンドで4億5000万ドル(約520億円)を調達した。評価額は130億ドル(約1兆5000億円)。Ethereum(イーサリウム)スケーリングソリューションのポートフォリオを積極的に拡大する同社は、より大きな開発者エコシステムの獲得に努める。
Polygon初の大規模な資金調達ラウンドは、Sequoia Capital India(セコイア・キャピタル・インディア)が主導。Tiger Global(タイガー・グローバル)、SoftBank(ソフトバンク)のほか、Galaxy Digital(ギャラクシー・デジタル)、Republic Capital(リパブリック・キャピタル)、Makers Fund(メーカーズ・ファンド)、Alameda Research(アラメダ・リサーチ)、Alan Howard(アラン・ハワード)氏、Dune Ventures(デューン・ベンチャーズ)、Alexis Ohanian(アレクシス・オハニアン)氏のSeven Seven Six(セブン・セブン・シックス)、Steadview Capital(ステッドビュー・キャピタル)、Unacademy(アナカデミー)、Elevation Capital(エレベーション・キャピタル)、Animoca Brands(アニモカ・ブランズ)、Spartan Fund(スパルタン・ファンド)、Dragonfly Capital(ドラゴンフライ・キャピタル)、Variant Fund(ヴァリアント・ファンド)、Sino Global Capital(シノ・グローバル・キャピタル)、Kevin O’Leary(ケヴィン・オレアリー)氏も、今回のプライベートトークンセールに参加した。
暗号資産領域へのベンチャー投資を追跡するウェブサイト、Web3 Signals(ウェブ3シグナルズ)を見ると、これらの投資家の多くが、Ethereumのスケーリングソリューション、あるいはこのブロックチェーンインフラストラクチャの取り組みに賭けるのは初めてのことだ。
米国時間2月8日の発表は、12月初旬にTechCrunchが報じたこの投資に関する初期段階の情報を裏付けるものとなった。
Ethereumは、あらゆるブロックチェーンの中で最大の開発者エコシステムを集めているものの、速度の遅さと高い取引手数料(「ガス代」として知られている)に悩まされている。
Polygonは、いわゆるレイヤー2またはサイドチェーンと呼ばれる企業の1つで、幅広い取引情報をブロックチェーン外に移動させる技術を採用することで、Ethereumのネットワークが成長痛を解決するのを助けようとするものだ。
Ethereumのブロックチェーンから多くの情報を移動させることによって、PolygonはEthereumのブロックにより多くの取引情報を詰め込むことができ、処理できる取引数を大幅に増やすことができる。
Polygonは最初の数年間、Ethereumのブロックチェーンから情報を移動させるPlasma(プラズマ)という技術に注力していたが、近年はこの課題に取り組むために、ZK rollups(ゼロナレッジ・ロールアップ)、Optimistic rollups(オプティミスティック・ロールアップ)、Validium(バリディアム)など複数の技術に焦点を拡大している。
Polygonはここ数四半期の間に10億ドル(1156億円)近くを投じて数社の企業を買収し、提供するサービスの幅を広げてきたと、同社の共同創業者であるSandeep Nailwal(サンディープ・ネイルワル)氏は、TechCrunchによるインタビューで語っている。
「以前、MATIC Network(マティック・ネットワーク、Polygonの旧社名)では、Plasmaのソリューションを構築していました」と、同氏は語る。「10~15のチームがPlasmaを宣伝して資金を調達したものの、Plasmaの機能を備えた適切な製品を出荷したのは我々のチームだけでした」。
「その後、コミュニティ全体が、このアプローチには確かに限界があるというコンセンサスに達しました。そこで彼らはOptimistic rollupsに移行しました。それからZK rollupsに移行し、そしてValidium。私たちは、このようなハイプサイクルを繰り返したくないとわかっています。今後何十年にもわたって存在し続けるプラットフォームを、私たちは構築したいのです」。
この2年間、レイヤー1やEthereumのスケーリングソリューションが出現し、ベンチャー投資家やヘッジファンドが、今後主流になると思われるブロックチェーンやその仲間に対して、早い段階で大胆な投資を行うというゴールドラッシュが続いている。
ネイルワル氏はこの競争を、10年以上前に見られたデスクトップOS戦争になぞらえた。「私たちは、アプローチに特化したり、テクノロジーに特化したりはしたくありません。私たちの目標は、ブロックチェーンが提供している分散コンピューティングに、インターネットレベルのスケールを提供することです」と、同氏は語った。
筆者はネイルワル氏に、Polygonがゼロナレッジ・スケーリングというアプローチにどのような自信を持っているのかと尋ねてみた。Polygonは過去2四半期に、2つのZK rollupsのスタートアップを買収している。ネイルワル氏は、ゼロナレッジがブロックチェーンスケーリングの最終ゲームになると信じていると語った。なお、Ethereumの共同創業者であるVitalik Buterin(ヴィタリック・ブテリン)氏は、Polygonに対する自身の考えを語っている。
Mark Cuban(マーク・キューバン)氏を多くの支援者の中に持つPolygonは、Ethereumの拡張を目指すレイヤー2やサイドチェーン・プロジェクトの中でも、明らかにリーダー的存在として浮上してきている。1月20日の時点で、Polygonは2300万ブロック、13億件以上のトランザクションを処理してきた。この人気の高まりは、過去1年間で急速に採用が増えたためだ。DeFi(分散型金融)プラットフォームのAave(アーベ)、Curve(カーブ)、Sushiswap(スシスワップ)、Pool(プール)、Uniswap(ユニスワップ)、巨大なNFT(非代替性トークン)マーケットプレイスのOpenSea(オープンシー)、メタバースプロジェクトのDecentraland(ディセントラランド)やSandbox(サンドボックス)など、今や7000を超える分散型アプリケーションがPolygonに展開されている。
筆者がネイルワル氏に、Polygon上で展開するアプリはさらに増えると予想しているかと尋ねたところ、同氏は「すべてのアプリがレイヤー2チェーンに移行すると予想しています」と答えた。Polygonがどれほど普及しているか、ほとんどの人は認識していないと、同氏は語っている。
「今、ブロックチェーン上で構築するためのプラットフォームとして選ばれているのは、Polygonです。様々なアプリケーションの何千人もの開発者が、PolygonとそのEthereumエコシステムのためのスケーリングソリューション一式を選択しています」と、Sequoia Indiaのマネージング・ディレクターであるShailesh Lakhani(シャイレシュ・ラカニ)氏は声明で述べている。
「野心的でアグレッシブなチームであり、その中核にイノベーションを重んじるチームです。Sequoia Capital Indiaは、この重要な資金調達ラウンドを主導できることに興奮しています」。
今回の多額の資金調達は、初期の頃、VCの誘致に苦労していたPolygonにとって転機となる話だ。Web3分野の創業者の多くは、Polygonがその技術力と実行速度にもかかわらず、チームの大部分がインドに拠点を置いていたために、初期には他社から軽視されていたと思うと述べている。
「私たちは新参者ではありません。2017年から一生懸命働いています。昨年までは見放されていました」と、今回のラウンド前にはわずか75万ドル(約8700万円)のVC資金を調達しただけだったPolygonの共同創業者、Jaynti Kanani(ジャインティ・カナニ)氏は語る。同氏は、このスタートアップが3000万ドル(約35億円)未満の評価額で資金調達に苦労していたときの会話を思い出していた。
「茶色い顔が金色の顔になった」と、ネイルワル氏は笑いながら冗談を言った。
「昨年になってようやく、我々が多くのアプリケーションを取り込み、その多くがバイラルになったことで、コミュニティが我々に注目し始めたのです。シリコンバレーのプロジェクトとは違って、私たちはインド式のボトムアップグラインドをしなければなりませんでした。これは長期的に見て持続可能だとも思います」と、同氏は付け加えた。
機関投資家の参加は、Polygonのブランド構築やパートナーシップの獲得に役立つと、ネイルワル氏は述べている。
「私たちは、市場で非常に流動性の高いトークンと、かなりの資金を持っています。資金調達のために市場に出向く必要はありませんでした。世界の市場が暗号資産の世界に目を向けるようになると、デイリーアクティブユーザー数や取引量などのオーガニックな指標では、当社はSolana(ソラナ)の5~10倍、Avalanche(アヴァランチ)の20倍も大きいにもかかわらず、必要な認知度を得ていないことに私たちは気づきました。前述したこれらのプロジェクトは、機関主導のマーケティングを多く行うことができているのです」。
今回調達した資金は、Polygonがいくつかの市場でより大きな開発者のエコシステムを構築するためにも役立つと、ネイルワル氏は語る。
「私たちは、彼らのために少なくとも3年から5年の十分に余裕のあるランウェイを確保したかったのです」。Polygonは1億ドル(約115億5000万円)のエコシステム資金を用意しているが、新たに調達した資金を使って、より多くのアクセラレータ、ハッカソン、助成金などの活動を支援・拡大していく予定だと、同氏は述べている。
近い将来にPolygonが計画しているもう1つの賭けは、アイデンティティの領域であるとネイルワル氏は言う。「Polygonの目標は、Web3のAWSになることです。 Web3のAWSには、アイデンティティの部分が必要です。ですから、この分野にも力を入れていきます」と、同氏は語った。
機関投資家を得たことで、Polygonは大物を雇うこともできるようになると、カナニ氏は述べ、最近ではYouTube Gaming(ユーチューブ・ゲーミング)を率いていたRyan Wyatt(ライアン・ワイアット)氏を雇用したことを例として挙げた。
画像クレジット:Getty Images
[原文へ]
(文:Manish Singh、翻訳:Hirokazu Kusakabe)
- Original:https://jp.techcrunch.com/2022/02/09/2022-02-07-polygon-raises-450m-from-sequoia-capital-india-softbank-and-tiger-global/
- Source:TechCrunch Japan
- Author:Manish Singh,Hirokazu Kusakabe
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