ウエザリングとダメージ表現で重機らしさを再現!【達人のプラモ術<D9R装甲ブルドーザー>】

【達人のプラモ術】
モンモデル
1/35 イスラエル陸軍 D9R装甲ブルドーザー
05/06

戦闘機やバイク、ロボット、スポーツカーなど、さまざまなプラモデルの作り方・楽しみ方を紹介する、プロモデラー長谷川迷人さんによる【達人のプラモ術】。

イスラエルに魔改造されたブルドーザー「D9R」のキット製作もついに5回目。前回は組み上げた車体に錆止め色となるオキサイトレッドのサーフェイサーで下地塗装を施しました。今回はいよいよ本塗装を行います。

*  *  *

■IDFグレーでの塗装

キットの塗装は2種類のIDF仕様に加えてアメリカ海兵隊仕様が選べますが、作例では“IDFコンバットエンジニアスクール”仕様を選んでいます。IDF(イスラエル・ディフェンス・フォース=イスラエル国防軍)の軍用車両は、シナイグレーといわれる淡い褐色で迷彩塗装されています。難しい色ではありますが、幸いMr.カラーから528、529、530番と3つの色調が異なるシナイグレーがリリースされているので、今回はその中から530番「IDFグレー3(現用)」をチョイスしています。

▲「IDFグレー3(現用)」イスラエル国防軍戦車色。今回はこちらを選択

▲「IDFグレー1(ー1981シナイ半島)」イスラエル国防軍戦車色。やや黄色みが強いサンドイエローに近い色

▲「IDFグレー2(ー1981ゴラン高原)」イスラエル国防軍戦車色。IDFグレー3に比べ、やや暗い茶褐色。IDFの戦車の塗装では欠かせないカラー

 

長谷川迷人|東京都出身。モーターサイクル専門誌や一般趣味雑誌、模型誌の編集者を経て、模型製作のプロフェッショナルへ。プラモデル製作講座の講師を務めるほか、雑誌やメディア向けの作例製作や原稿執筆を手がける。趣味はバイクとプラモデル作りという根っからの模型人。YouTubeでは「プラモ作りは見てナンボです!「@Modelart_MOVIE」も配信中。

 

■陰影を意識したムラ塗装?車体の塗装は「IDFグレー3(現用)」の単色なので、エアブラシを使います。ただし、ドーザーブレードの下側などは下地のオキサイトレッドを部分的に残すなど、ウエザリング塗装への布石として意識的に塗装ムラができるように塗装していきます。

また複雑な形状をしていることもあり、車体を組み上げると奥まった部分が塗りにくくなるので、車体下部、キャビン部分、左右の転輪ユニット、ドーザーブレード、履帯といった具合で、ブロックごとに塗装していきます。

▲車体とリッパーは複雑な形をしているので、エアブラシで丁重に陰影を意識しながら「IDFグレー2(ー1981ゴラン高原)」を塗装していく

▲「IDFグレー3(現用)」で塗装したドーザーブレード。下側は意識的にオキサイトレッドの下地を残している

▲運転席ブロックもしっかりと塗装。窓のマスキングは、ウエザリングが終わるまで剥がさないこと

▲車体の基本色「IDFグレー3(現用)」の塗装が終わった車体やドーザーブレード、足まわりなどの各パーツ

▲履帯も車体と同色で塗装

▲実車の写真を参考に、車体下まわりと足まわりはレッドブラウン+フラットブラック+シルバーで調色した錆色を塗装しておく

▲インスト(説明書)の指示に沿って、車体各部の手すり類を艶消しの赤で塗装

 

■金属履帯がカッコ良し!

戦車だと無塗装の履帯が一般的ですが、D9Rでは車体色に塗装され、その後、瞬間接着剤で車体に組み付けます。ちなみに、前回苦労して組んだ金属製履帯ですが、車体に取り付けると上側が自重で自然と垂れた感じとなり、スプロケットホイールとかみ合う部分もプレートが組み合わさった履帯のごつい感じが出て、リアル感マシマシになりました。いゃあ! カッコいいじゃないか! と悦に入っております(笑)。

▲塗装して組み上げたフリウルの金属履帯。ゴツゴツした重量感を再現できた

▲キットはプラ製の組み履帯で、良くはできているが無骨な質感という点では金属履帯に軍配が上がる

 

■ちょっと壊して(ダメージ表現して)みた

D9Rの実車の写真を見てみると、ドーザーブレード上部に取り付けられているスリット部分が破損、あるいは折れ曲がっていることが多いようなので、作例では“戦場のブルドーザーらしいダメージ表現”を意識して、ニッパーでスリットの一部を切り取り、折り曲げることでダメージを再現してみました。

▲ドーザーブレード上のスリット部分ががれき処理で破損した状態を再現してみた。ドーザーブレード前面のウエザリングはまだ試行錯誤中

 

■デカールを貼る

ウエザリング塗装をする前に、デカールを貼り込みます。数は少ないですが、車体側面に記された車体番号と、ヘブライ語の赤い注意書き? が良いワンポイントになります。

▲作例の塗装とマーキングは、工兵部隊を養成する“IDFコンバット・エンジニアスクール”仕様とした

 

■ウエザリング塗装

IDFグレーでの車体の塗装が終わったら、いよいよウエザリング(汚し)塗装を入れていきます。がれき処理などをする重機なので、使い込まれて塗装が退色したり、剥げて金属がむき出しなったり、錆びているドーザーブレードや履帯の一部に土くれが固着していたりするなど、戦車とはまた一味違った汚れ方をしています。そこで、次回は塗装とウエザリング用テクスチャー素材で、乾いた土汚れと塗装が剥げたことでむき出しになった金属や錆といった重機の汚れを再現していきます。

▲履帯をはじめドーザーブレードなどを取り付けた車体にウエザリングを施していく

▲ドーザーブレードの下側は「AK ウェザリングペンシル」のシルバーでヘアライン状のチッピングを入れている。実物のブレードは激しく塗装が剥離しているので、もう少し手を入れたいところ

次回は完成に向けて、使い込まれた重機による戦場の再現を目指し、さらにリアルなウエザリングを入れてきます。乞うご期待!

 

■今回使用したアイテム

タミヤ
「スミ入れ塗料(ブラック)」(396円)
「スミ入れ塗料(ブラウン)」(396円)

本来は、飛行機モデルやカーモデルのパネルライン(凹モールド)に流し込むことで立体感を強調する、スミ入れ用のエナメル塗料です。エナメル塗料はラッカーの塗膜を侵しません。今回は、Mr.カラー(ラッカー系塗料)のIDFグレーで塗装した車体へブラックとブラウンのスミ入れ塗料を車体各部に塗布、乾燥後に綿棒を使いエナメル溶剤で拭きとるウォッシング(※薄めのエナメル塗料を模型全体に塗って、拭き取ることで汚れを再現する技法)を施しています。

 

AKインタラクティブ
「AK10047 ウェザリングペンシル・デラックスボックス」(7920円)

ウエザリングペンシルは、汚れやチッピング塗装(※塗装がはがれて下地や金属地肌が出た状態を再現する塗装方法)で使用する模型用の水彩色鉛筆です。

そのまま塗装面に描きこめばスクラッチ状の傷や塗装が剥げたエッジ部分の質感を、筆でぼかせば乾いたホコリを表現できます。

また水性顔料なので、濡れた筆で伸ばすとサビやオイルの滲み、雨だれなど様々な汚れの質感を再現します。使用したのは全色セットですが、用途に応じた5本セット、また1本単位での購入も可能です。

 

■次回登場アイテム

タミヤ
「情景テクスチャーペイント(土 ダークアース)」(880円)
「情景テクスチャーペイント(砂 ライトサンド)」(880円)

情景作品のベースを製作時に使用する、セラミック粒子が配合されたペースト状の水性塗料です。土や泥、アスファルト、雪や草などが再現可能です。粘度があるので、厚く盛りつけたり、薄くのばしたりできます。次回はダークアースとライトサンドを使用して、ドーザーブレードの履帯にこびりついた土塊などを再現します。

>> [連載]達人のプラモ術

<製作・写真・文/長谷川迷人>

 

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