2021年9月に米国で正式提供されたのに続き、米国時間2月22日、Facebook Reels(フェイスブック・リール)が世界150カ国以上で公開された。これはMeta(メタ)のTikTok(ティックトック)の脅威に対抗する主要部分をなす機能であり、クリエイターは短編動画コンテンツをFacebookでシェアしたり、Instagram(インスタグラム)のリールをクロスポストすることで、幅広い視聴者に届けることができる。この日の世界展開に合わせて、Facebookは新たなクリエイティブツールやクリエイターが広告やStars(スター)を通じてリールで収益をあげる新しい方法を導入した。
リールは当初、TikTokに直接対抗するためにInstagramアプリ内の一機能として登場したが、Metaはすぐに、Facebookを巻き込むことでより強力な反撃手段になることに気づいた。その結果同社は、2021年第4四半期の決算報告で、リールは「他を引き離して急成長しているコンテンツ」であると喧伝した。さらに、リールはInstagramの成長の最大の立役者であり、Facebookでも「非常に成長著しい」と同社は語った。
しかし、現在リールの収益化状況は、Instagramのフィードやストーリーなどのコンテンツ・フォーマットと比べて低い。それでもMetaは、時間とともに変わっていくと信じている。
それに関連して、同社はこの日、Facebook Reels Overlay Ads(フェイスブック・リール・オーバーレイ広告)のテストを米国、カナダ、およびメキシコの全リール・クリエイターへと拡大する。3月中旬までには、ストリーム内広告が利用可能な50か国以上のほぼ全域にテストを拡大する、とMetaはTechCrunchに語った。
ちなみに、ストリーム内ビデオ広告は現在Facebookビデオでのみ利用可能でリールでは使えない。これは、新しいオーバーレイ広告がリールに広告収益を直接もたらすFacebook初の試みであることを意味している。
ストリーム内広告のテストに参加しているクリエイターは、2種類の広告フォーマットを試すことができる。バナーとスタンプ(stickers)だ。これらは非妨害的広告であり、ビデオを止めて広告を表示する代わりに、再生中のコンテンツに半透明に重ね合わせられる。バナー広告はリールの下部に半透明のオーバーレイとして表示され、スタンプは固定画像をリール画面内のどこにでも、ふつうのスタンプと同様に配置できる。Facebookは、視聴者に最も合うフレームに表示する広告を選択する。
テスト期間中、Metaは現在ストリーム内広告プログラムで実施しているのと同じ方式でクリエイターと収益分配するという。クリエイターが55%、Facebookが45%だ。しかし、これはテストの進行にあわせて変わる可能性がある。
すでにストリーム内広告プログラムに参加しているクリエイターは、デフォルトで自動的に新しいオーバーレイ広告テストにオプトインされる(過去数カ月間のオーバーレイ広告テストにはごくわずかな人数だけが招待された)。それ以外のクリエイターは資格を確認の上ここで参加できる。
さらにFacebookは、リール間の全画面広告と没入型広告を全世界で数カ月以内に開始する。これらのフォーマットは2021年10月からテストされていた。
ただしすべてのリールに広告が入るわけではない。Metaの説明によると、リールに広告が入るかどうかは、広告主のターゲット設定から視聴者にとっての広告の価値までさまざまな要素によって決まる。クリエーターは、個別のリールにバナー広告が入らないようにCreator Studio(クリエイター・スタジオ)で指定することもできる。
一方広告主も、Publiser Lists(パブリッシャー・リスト)、Blocklists(ブロックリスト)、Inventory Filters(インベント・フィルター)、Delivery Reports(デリバリー・レポート)などのブランド適合ツールを使ってバナーやスタンプ広告を選ぶことができる。
広告に加えて、クリエイターは近々Starsによるリールの収益化が可能になる。StarsはFacebook Live(ライブ)ですでに提供されているバーチャル投げ銭システムだ。さらに、成功しているクリエイターは直接的支払いも受けている。Metaの10億ドル(約1150億円)クリエイター・ファンドの一環であるボーナスプログラムのReels Play(リールズ・プレイ)は、巨額のボーナスを生むことがあり、毎月最大3万5000ドル(約402万円)受け取っているクリエイターもいる、と会社は言っている。しかし、クリエイター・ファンドの長期的な有効性についてはまだ議論の余地がある。
ファンドが発表された2021年6月以来、リール・クリエイターに支払った金額について、Metaは公表を拒んでいる。
収益化機構以外にもFacebookは、2021年発表したクリエイティブツールRemix(リミックス)、60-second Reels(シックスティ・セカンド・リール)、Draft(ドラフト)、およびVideo Clipping(ビデオ・クリッピング)を公開する。
リミックスはInstagramですでに提供中のツールで、TikTokのDuets(デュエット)に似ている。クリエイターは、Facebookで公開されている別のリール(あるいはその一部)と並べて自分のリールを作ることができる。今回この機能をFacebookのクリエイターも使えるようになった。
リールは、TikTokが動画の長さを最長60秒から3分に拡大して以来、遅れを取り戻そうと躍起になっている。Instagram Reels(インスタグラム・リール)は2021年、動画の最長時間を30秒から60秒に拡大しており、今回Facebookのリールも同じことをする。
DraftとVideo Clippingも近々追加される。Draftでは、クリエイターが作業中のコンテンツを保存して後に公開することができる。Video Clipping機能は数カ月後に公開予定で、通常ライブや長時間コンテンツを扱っているビデオ・クリエイターもリールを試しやすくなる。
Facebook Reelsへの大がかりな投資の一環として、同社はショートビデオをFacebook体験全体におけるより重要な位置づけにしようとしている。米国だけでなく、対象地域のクリエイターは、Instagram ReelsをFacebook上でおすすめとしてシェアできるようになる。
今から数週間のうちに、FacebookはユーザーがリールをStories(ストーリー)でシェアできるようにし、FacebookのWatch(ウォッチ)タブでリールを見られるようにする他、リールとクリエイション・ツールをユーザーのニュースフィード(同社は最近の変更でニュースフィードを単に「フィード」と呼ぶようになった)上部に目立った位置に置く。一部の国では、フィードをスクロールしている途中で、ユーザーが気にいるかも知れないリールをおすすめすることもある。
リールはMetaにとって最大級の製品投資であり、同社はTikTokがもたらす脅威について公開の場で発言してる。MetaのCEO Mark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏はTikTokについて「非常に大きなユーザー基盤を生かしてかなりの速さで」成長している強大なライバルであると評している。
しかし、Metaの課題はTikTokばかりではない。Facebookは史上初のデイリーアクティブユーザー数の減少を第4四半期に発表した。これは人々が以前ほどFacebookを使っていないことを示すわかりやすい指標だ。それと同時に、Appleのプライバシー方針変更によって広告ビジネスが制約を受け、2022年のMetaの売上は100億ドル(約1兆1500億円)減少する見込みだ。Metaは、Facebookが成功を続けるためにはクリエイターを巻き込んで、ユーザーにソーシャル・ネットワーキング以外の行動を促す必要があることを認識している。それは動画を見たり、音楽を聴いたり、ショッピングをしたりすることであり、いずれもここ数年投資している領域だ。
画像クレジット:Meta
[原文へ]
(文:Sarah Perez、翻訳:Nob Takahashi / facebook )
- Original:https://jp.techcrunch.com/2022/02/23/2022-02-22-facebook-reels-rolls-out-worldwide-along-with-new-ads-and-creative-tools/
- Source:TechCrunch Japan
- Author:Sarah Perez,Nobuo Takahashi
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